マーケティング組織を立ち上げるなら最初に何をすべきか?
松本:これまで、デマンドセンターの必要性、海外とのギャップ等について伺ってきました。では、これから半年かけてマーケティング組織を立ち上げるとしたら、庭山さんはまず何から着手すべきだと思われますか?

庭山:2つのことを並行して進めるべきです。1つは「組織作りとナレッジ」。日本企業は外部から人材を引っ張ってきても上手くいかない場合が多いので、社内公募でチームを組成し、言葉の定義を揃える研修を受けるべきでしょう。
ただし、「もし、20人でスタートするなら半分以上は営業職から異動させてください」と注文します。加えて、「売れていない営業」を集めるのは避けるべきです。社内の人間は「あいつは売れなかった」と覚えているため、そういうメンバーが作った案件を営業が真面目に追わないからです。
営業経験者は「どんな案件が来たら楽に受注できるか」を知っています。「課題を抱えて困っている人間(ターゲット)」を探す術を知っており、マーケティングのテクノロジーと結びつけることで、効率的なリード獲得に貢献できるのです。そうした意味では、マーケターが営業現場を経験していることは、顧客理解と営業との連携を深める上で非常に重要です。採用したマーケターを1〜2年、営業現場に出すのも良いかもしれません。
もう1つは「データ」。横串を通して全社のデータをすべて集め、企業・個人情報の名寄せから属性付与まで整備します。前株か後株か、日本電気かNECか、日本語はとにかく「表記揺れ」が多いでしょう。ちゃんと整理しないと使えるデータにならないのです。
デマンドセンターの構築は、組織を横断する取り組みです。日本の縦割り型組織では、上層部が方針を明確化し、各事業部が協力する姿勢が不可欠です。「今はいいが、余力のあるうちにやっておかないと売上は伸びない」という危機感を共有し、各階層への理解を深めることが重要でしょう。
AI時代に生き残れるBtoBマーケターの特徴とは?
松本:現在(2026年)をAI時代とすると、私たちマーケターはAIを上手く使いこなしつつ、組織の立ち上げに成功することが求められています。AI時代における、BtoBマーケターに求められるスキルや能力とは何でしょうか。
庭山:AIは記憶、リサーチ、レポーティングといった分野では、人間を凌駕します。これらでAIと競うべきではありません。AI時代に生き残れるマーケターに必要な能力は3つです。
1つ目は、圧倒的なコミュニケーション能力。営業とマーケティング、社内の他部署、経営層への説得など、場を読み、相手に応じて表現を変える能力はAIには苦手です。社内コミュニケーションは今後ますます重要になります。2つ目は、イマジネーション。データがない中で、物事をつなぎ合わせる想像力は、人間の領域としてしばらく残るでしょう。
そして3つ目が誠実さ。人間はAIに誠実さを求めませんが、人間同士の関係においては、嘘をつかず、知ったかぶりせず、マウントを取らない「誠実な人」が信頼されます。対顧客折衝で最も求められるのは、この誠実さです。
松本:よくわかりました。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
