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マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月でやること

「デマンドセンター」なきマーケ組織に意味はない。庭山氏に聞く、日本のBtoBが「片肺飛行」になる理由

 「マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月にやること」をテーマに、松本健太郎氏がBtoBマーケティングの識者にインタビューする連載がスタート。現在、BtoB領域におけるマーケティング組織の必要性は浸透しており、大企業からベンチャー企業まで「組織の立ち上げ」も増えている。しかし、「箱は作ったが実態は営業の下請け」や「MAを導入したもののメール配信機で終わっている」といった課題の声も多く挙がる。それは正しい在り方なのか? そもそも組織は必要なのか? 組織の立ち上げ時は何を目指すべきなのか? 日本のBtoBマーケティングの第一人者、シンフォニーマーケティングの庭山一郎氏に聞いた。

BtoB企業におけるマーケティング組織の役割

松本:BtoB企業におけるマーケティング組織の役割とは何でしょうか。というのも、「マーケティングって何?」と思われている経営層や事業部長は、いまだ大勢おられます。よくわかっていないので、とりあえず箱(部署)だけ作りました、結局今まで通り営業から頼まれた仕事をやってます、といった「仏作って魂入れず」みたいな話もよく聞きます。こうした現状を、トップランナーである庭山さんはどう思っておられるか伺いたいです。

画像を説明するテキストなくても可
株式会社EVERRISE 執行役員CMO 松本 健太郎氏

庭山:私はよくインタビューや講演で、「日本のBtoBマーケティングは先進国から10~15年遅れている」と話します。荒っぽい表現に聞こえるかもしれませんが、そもそも「マーケティング」の定義が人によって違いますよね。マーケティングって具体的に何をすれば良いのかと聞いても、十人十色の答えが返ってくる。そんな曖昧なままで組織を語っても、意味がないと私は思っています。

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シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役 庭山 一郎氏
1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。36年間で約600社の企業に対しBtoBマーケティングのコンサルティングを手がける。各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティング&セールスの戦略立案、組織再編、人材育成などのサービスを提供。海外のBtoBマーケティング関係者との交流も深く、世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。中央大学大学院ビジネススクール客員教授・早稲田大学WASEDA NEO講師・「日経クロストレンド BtoBマーケティング大賞2024・2025・2026」審査委員長。
法人営業は新規を追うな ─重要顧客と最高の関係を築くABM─』、『儲けの科学 ─The B2B Marketing─』など著書多数。

庭山:BtoB企業がやるべきマーケティングについて、私なりの考えをお話しします。大きく分けて「リサーチ」「ブランディング」「デマンドジェネレーション」の3つです。大半の日本企業は「リサーチ」「ブランディング」には注力できているのですが、「デマンドジェネレーション」の部分が世界から完全に遅れています

 だから私はこの10年ほど、「マーケティング組織」という言葉は避け「デマンドセンターを作りましょう」と提唱しています。「デマンドセンター」は、営業や販売代理店に有望な案件を安定供給する基盤であり、インフラです。「デマンドセンター」がないから売上は営業に依存し、「片肺飛行」に陥ってしまうのです。具体的に言えば、引き合い中心で新規開拓ができておらず、既存顧客にも限られたものしか買ってもらえない状況です。

 「デマンドジェネレーション」に取り組んでいない企業では、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)は到底無理です。それくらい、前提となるインフラなのです。

「デマンドジェネレーション」と「ABM」は何が違うのか

松本:ここで質問させてください。「デマンドジェネレーション」と「ABM」について、私自身、この違いを今ひとつ理解しきれていないのですが、その意味合いをもう少し詳しく教えていただけますか?

庭山:まず、デマンドジェネレーションを担うデマンドセンターの役割は、大きく分けて「データマネジメント」と「コンテンツマネジメント」です。要は、データを整理整頓して、的確なコンテンツを的確なターゲットに当てる。

 ABMは、この2つの役割をさらに専門性を高く、具体的に特定します。たとえば、一般的なデマンドジェネレーションが「自動車製造業の皆さん」という語りかけだとすれば、ABMは「デンソーの〇〇事業所でEV電池の使用量改善に奮闘している皆さん」までターゲットを絞り込み、コンテンツを提供するのです。

松本:近著『法人営業は新規を追うな 重要顧客と最高の関係を築くABM』(日経BP刊)では、ABMの定義として「特定の重要顧客と最良の関係を築くことで、強い顧客基盤を構築し、収益を最大化することを目的にした全社的なマーケティング戦略」と記載しています。ABMは、単なるビジネス関係を超えて、お互いが頼り合えるような関係性を築くことだと感じました。

庭山:ABMは顧客の「LTV(ライフタイムバリュー)」を追求するための手法です。LTVを高めるためには、もっと広範囲にいろんな製品・サービスを選んでほしいですよね。もっと言うと、うちの会社は何を導入するべきか、と上流工程から相談を請けたい。

 しかし、どんなに付き合いが濃かろうが、顧客は「買っている物」でその会社を認知するのです。ネジを買っていれば「ネジ屋さん」と認識される。実際にはネジ以外にも多様な製品やサービスを提供し、さらには金属加工のカスタマイズや研究開発もできるスキルがあったとしても、です。したがって「ネジ屋さん」という顧客の自社に対する認識を変えなければならない

松本:庭山さんの言葉を借りれば、単なる「売り手」「買い手」の関係性を脱却して、ネジ以外も、カスタマイズも、上流工程から相談できる最良の関係を築くべき、ということですね?

庭山:そうです。BtoCとBtoBの大きな違いの1つは、「売り手」と「買い手」の知識差です。BtoCでは「売り手」の知識量が圧倒的に多い。しかしBtoBでは逆なのです。「買い手」の知識量が圧倒的に多い。工作機械を売っている営業と、その工作機械で毎日物を作っているエンジニアなら、後者の知識量と専門性が圧倒的です。

 一方、「売り手」は「他の会社がどう使っているか」「他の会社はどう評価しているか」という自社しか知り得ない情報を持っています。この情報を提供することで、買い手にとっての「相談相手」というポジションを確立できるでしょう。

次のページ
ABMに取り組まなくてもいい企業とは?

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この記事の著者

松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)

株式会社EVERRISE 執行役員CMO
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを“学び直し”。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまな分析を担当する。noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/03 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50303

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