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MarkeZine Day 2026 Spring

マーケティング組織を立ち上げて最初の6ヵ月でやること

「デマンドセンター」なきマーケ組織に意味はない。庭山氏に聞く、日本のBtoBが「片肺飛行」になる理由

ABMに取り組まなくてもいい企業とは?

松本:今までの話を伺っていると、ABMは労力がかなりかかるようにも思えます。リソースを多く抱える大企業だから行える施策であって、ベンチャー企業には難しいように思えます。

庭山:いえいえ、そんなことはありません。ABMは基本的には自社のサイズは問いません。ただし、受注を狙う企業規模が中小・零細であれば、ABMは必要ありません。たとえば、従業員50人で社長がすべてを決めるような会社であれば、営業がキーマンである社長をグリップしていれば良いのです。

 ABMが必要なシチュエーションは、相対する企業が複数の事業部や事業所を持ち、キーパーソンが多数いる場合です。日本企業は、顧客との接点は「営業」だけの場合が多いんです。どんなに優秀な営業でも、時間と肉体の制約から逃れられません。そこで、戦略的にデジタルの力を活用するのです。

 デジタルは、情報を一斉に提供し、情報を受け取った人間の行動を捉える機能に圧倒的に優れていますから、組み合わせることで営業の手が回らない顧客にも情報を届け、反応を見て効率的にアプローチできます。もちろん、ラストワンマイルにおいては圧倒的に人間が能力を発揮します。しかし、デジタルを活用すれば、少ない営業リソースでも広範囲をカバーし、効率的に動けます。むしろリソースが足りない会社ほど、デジタルな取り組みに挑戦してほしいです。

 また、自社がクロスセル・アップセルできる多様な商材を持っていることも条件です。たとえば、会計ソフトしか扱っていない会社にはABMは不要ですが、会計、決算、人事、タレントマネジメント、在庫管理など多様なアプリケーションを持っている会社であれば、それぞれの部署を説得する必要があるため、ABMが有効になります。

「今は売上に困っていない」が最大の落とし穴

松本:私自身、BtoBマーケティングに5年以上従事しているので、「デマンドジェネレーション」が遅れているという指摘は耳が痛いです。一方で、片肺飛行であろうと売上は作れているので「マーケティング組織がなくても困らない」と考えている経営層や事業部長が多いとも感じています。

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庭山:まさに、その通りです。日本の大手企業は業績が良いから、マーケティング組織がなくても今はまったく困っていません。そんな状況で、マーケティング組織を新設するのは非常に困難です。前々期も前期も今期も達成していて、来期も数字が見えているのに、なぜマーケティングなの? なんで俺の名刺をMAに入れなきゃいけないの? と現場は思うでしょう。 

 しかし、賢明な企業は、業績悪化後に慌てて組織を作るのではなく、余力のあるうちに投資し、人材を育成すべきだと気づいています。……まあ、そんな教科書通りにはいかなくて、皆さん社内ですごい苦労されています。

松本:そのような状況で、庭山さんはどのような取り組みをされておられるのでしょうか?

庭山:たとえば、役員主催の勉強会や社長面談で「これからはマーケティングが必要ですよ」と言い続けています。役職や階層が上がるほど、ビジネスパーソンの目線は遠くを捉えるようになります。だから、トップマネジメントを説得するしかありません。

 ちなみに、当社の顧客の70%以上は日本の大手製造業です。なぜなら、グローバルで戦うためにはマーケティングが不可欠だからです。日本の製造業は海外売上比率が高いのですが、海外では、営業と製品だけでは通用しません。海外で勝っているグローバル企業と日本の製造業を比較すると、差は「マーケティング組織と運営に紐づくナレッジ」なのです。そのことに気づいた企業が、当社へご連絡をいただいているのでしょう。

MAツール導入に90%の企業が失敗している

松本:海外と日本の“差”という観点で、「テクノロジー」と「マーケティング」の親和性についても伺いたいです。近年、マーケティング部門内でMAツールやデータ管理を担う「MOps(マーケティングオペレーション)」、さらに各部門横断で収益を最適化する「RevOps(レベニューオペレーション)」の重要性が世界的に高まっています。庭山さんは日本の現状をどのように見ておられますか?

庭山:RevOpsはアメリカで、マーケティング・営業・カスタマーサクセスの各部門がサイロ化した結果として生まれた概念です。日本はそもそも統合すべきオペレーション機能自体が育っていないケースがほとんどで、アメリカの文脈をそのまま持ち込んでも機能しません。

 その証拠に、基本的なMAツールの段階でも既につまずいています。日本では外資・国産合わせて20ブランドほどあり、2万社以上が一度は導入しているのですが、MAを使いこなせているかという点で見ると90%以上は失敗しています。なぜなら、メール配信しかしていないからです。

 MAツールは本来、「デマンドセンター」のプラットフォームとして、営業に案件を安定供給し、マーケティング由来の売上を明確にするためのものです。「デマンド」部門が使っているコストはROI観点で妥当なのか、までレビューできないと、本当は成功とは言えないのです。ですが、そこまで実現している会社は、ほとんどいないんですよ。

 会社には経営戦略があり、特に上場企業であれば中期経営計画を立案します。3年後にこれくらい伸ばすといった目標数字が書かれています。それを実現するためのサブ戦略として、人事戦略、財務戦略、DX戦略、事業戦略が描かれます。ところが、マーケティング戦略がない会社が多いんです。戦略がないまま組織を作り、流行っているからMAツールを導入したけど、何をどこまでしていいかわからず、結局メール配信止まりになってしまう。それでは経営層にレビューもできないでしょう。

 今、マーテックの世界トップは、6sense、ZoomInfo、Alpha IQが頭に浮かびますが、彼らは日本市場に興味がないのです。海外のトップ層から、「テクノロジーを理解して使いこなせるマーケティングチームが稼働している会社は日本に何社ぐらいありますか?」という質問をよく受けます。「外資系を除けばほとんどないね」と答えると、「だよね」って返ってきます。

 海外からは、経済大国である日本が、なぜこれほどまでにマーケティングテクノロジーを使いこなせていないのか、不思議に思われています。

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マーケティング組織を立ち上げるなら最初に何をすべきか?

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この記事の著者

松本 健太郎(マツモト ケンタロウ)

株式会社EVERRISE 執行役員CMO
龍谷大学法学部卒業後、データサイエンスの重要性を痛感し、多摩大学大学院で統計学・データサイエンスを“学び直し”。デジタルマーケティングや消費者インサイトの分析業務を中心に、さまざまな分析を担当する。noteで活躍しているオピニオンリーダーの知見をシェアする「日経COMEMO」メン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/03 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50303

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