接点は増やすが、押しつけない。顧客起点のOMO
柴田(TimeTechnologies):資生堂様のID連携率の高さは、OMOの推進にもつながっていますよね。店舗でのコミュニケーションとLINEを連携させることに苦労されている企業様は多いものですが、連携のポイントはありますか?
山本(資生堂):基本的にチャネル間の強制的な誘導はしていません。購買の選択はお客様に委ねながら、クロスセルや継続利用の気持ちのトリガーをいかに押すかにフォーカスしています。
たとえばサンプル提供では、Webから送付するケースと店舗で受け取るケースの両方があり、タッチポイントに合わせた引き上げコミュニケーションを取っています。たとえば店舗でサンプルを受け取ったお客様に対しては、「肌測定でご自身の変化を数値で確認できます」「プロのアドバイザーに相談できます」と再来店を案内するなど、徹底的に顧客起点で設計しています。
「サンプルはいかがでしたか」と後日フォローするだけでも、購入への転換率は大きく上がります。2024〜25年にかけてベースメイクで出会った新規顧客をスキンケアへクロスセルするこの手法で、実際にクロスセル転換率が数ポイント上昇しました。母数が大きいベースメイク購入者の数ポイントは、スキンケアユーザー数として換算すると相当な規模になります。
──LINEを活用したCRMで成果を出せる企業の共通点はどこにありますか?
大沢(TimeTechnologies):LINEを「広告媒体」ではなく「ユーザーとのコミュニケーション基盤」として活用しているかどうかが分かれ目です。データを定量化してLINEに活かし、PDCAを素早く回す。この2点ができている企業様ほど確実に成長につながっています。
廣田(資生堂):セグメントごとに「この情報は本当にこのお客様に合っているか」を常に問い直す姿勢を持ち続けることが、最も難しく最も重要だと実感しています。
山本(資生堂):「どう顧客と向き合うのか」を社内全体で共有できているかどうかが大きな差になります。店頭スタッフも含め各タッチポイントが同じ方向を向いているからこそ、データが循環しコミュニケーションが深化する。やるべきことが決まったら、組織一丸でやり抜くことがポイントです。
AIがもたらす「未来の接客」と、揺るがないブランドの信念
──最後に、今後の展望をお聞かせください。
廣田(資生堂):パーソナライズ化をさらに追求していく上で、今後目指したいのが「潜在ニーズの把握」です。お客様自身もまだ気づいていないような潜在的な肌悩みや関心までを、汲み取ったコミュニケーションを実現したいです。
山本(資生堂):時代が変わっても、ファンを増やし関係を深めるCRMの本質は不変だと信じています。一方で、AIの普及により既存の手法が通用しなくなる可能性もあるため、常にアンテナを張り、変化へ柔軟に適応し続けていきたいです。
柴田(TimeTechnologies):AIエージェントにより、「今何を案内すべきか」という高度な判断が可能になるでしょう。さらにLINEならではの双方向性も進化し、会話・アンケート・診断・チャットといった取り組みが発展することで、定性的な情報も含めたより豊かなコミュニケーションが可能になっていくと考えています。
大沢(TimeTechnologies):CRMの多様化が進む中で、企業様が活用したいデータも増えています。そうした状況に寄り添いながら、「実施したい施策」「活用したいデータ」「実現したい未来」をしっかり汲み取り、LINEでどう実現できるかをバックアップできるよう、TimeTechnologiesとしてツールの運用体制を継続してレベルアップしていきたいです。

