メソドロジー3
3つ目のメソドロジーでは、Q社のブランドマネージャーが積極的にコラボしたいと思えるデータを見つけていく。対象となるのは、グローバルのトレンドレポートやWeb検索データ、小売のデータ、そしてソーシャルデータの情報だ。

Web検索データや小売データは顕在化している情報を含んでいるのに対し、グローバルトレンドやソーシャルデータからは「これまで捉えきれていなかった情報が見つかる可能性がある」と近藤氏。たとえば「海外ではフルーツ炭酸がSNSで話題を呼び、インフルエンサーを中心に関心が高まっている」といった兆しを捉えた場合、新たな市場の可能性と判断することもできるだろう。
メソドロジー4
4つ目に、Q社がコラボしたいと感じる材料として、ブランドAの過去のパフォーマンスを示すための分析を行う。過去にブランドAとQ社はコラボしたことがあるという想定で、Q社がこれまでコラボしてきた他社の実績と比較する。SNSの投稿数やセンチメントの高さを示すことができれば、コラボレーションの後押しになるためだ。
メソドロジー5
5つ目は、Q社のブランドマネージャーが抱えている「カテゴリー間の客層ギャップ」の懸念を払しょくする分析だ。ここでは「炭酸飲料ユーザーも紅茶を飲んでいる」ことを示せるかが鍵となる。そのため、炭酸飲料に言及しているソーシャルユーザーのうち、どの程度が紅茶にも言及しているかを分析していく。
近藤氏はコーヒーを比較対象に置き「紅茶に言及するユーザーの割合が大きければ客層ギャップの懸念を払しょくできるのではないか」と想定。次のような図でデータを分析する。

メソドロジー6
最後は、カテゴリー間の客層にギャップがないことをさらに強く証明するための分析だ。ブランドAとQ社に言及しているSNS投稿から、対象者をランダムに抽出。普段どのような食事関連のワードを投稿しているのかを分析する。
ネスレ日本では、同社独自のフィルターで喫食に関する投稿を抽出し、分析を行っているという。絞り込んだ投稿から、頻出の単語を洗い出し、比較する流れだ。その結果、Q社のユーザーは非常にジャンキーな食事を好んでいることが判明。一方で、ブランドAのユーザーはQ社のユーザーよりも様々なものをまんべんなく喫食しており、炭酸飲料を含むジャンキーな食べ物も適度に喫食していることがわかった。
ソーシャルデータ分析は「安くて早い意思決定のための手段」
明確化すべき8つの論点(仮説)を設定し、6種類の分析を実施した結果、ブランドAとQ社は商品の特徴の違いから相互に補完し、新たな客層を取り込める可能性を示すことができた。この結果は、コラボレーション成立のためのストーリーの裏付けとなるだろう。一連の調査設計・仮説検証を支えたのは、Meltwaterが提供する「広範なデータソース」「即時性」「分析の柔軟性」だ。
田中氏が「ネスレ日本にとってSNSデータの価値とは」と尋ねると、近藤氏は次のように答える。
「一言で表すと『安くて早い意思決定のための手段』です。商談が控えている重要な場面では、定量調査を行って市場の代表性を確認するプロセスが理想的だと考えます。しかし、消費者の関心の変化は早く、どの企業にも限られたコストでスピード感のある意思決定が求められます。正しく調査設計を行えば、ソーシャルデータを活用した意思決定は現実的な選択肢になり得ると考えています。そのためには、分析者自身が問いの質を高め、仮説検証の道筋・分析手法を構想する力を磨き続けることが鍵です。その活動こそが、ソーシャルデータの真の価値を引き出すために最も重要なことです」(近藤氏)
Meltwaterの田中氏は、ソーシャルデータ活用の意義について次のように語る。
「従来の調査と比べて、ソーシャルデータは“いま起きている変化”を捉えながら仮説検証を進められる点に価値があります。広範なデータソースとリアルタイム性、そして分析の柔軟性をかけ合わせることで、限られた時間と予算の中でも、意思決定に資するインサイトを導き出すことが可能になります」(田中氏)
ソーシャルデータの可能性は、調査設計の仕方次第で広がっていく。メソッドを理解した上で、活用が普及することを期待したい。
ネスレ日本のSNSデータ活用に関してさらに知りたい方は、MarkeZineの関連記事『「n=1分析の限界」をAIで突破。“工数半減・解像度倍増”を実現したネスレ日本のソーシャルリスニング』もあわせてご覧ください

