「賢い選択」としてのデュープ品(代替品)
「価値意識」が高いことの象徴的な事象が「デュープ品(代替品)」の流行だ。デュープ品とは、本物と偽って販売される商品ではなく、似た体験を相対的に安価な価格で販売している商品を指す。かつて、有名ブランドのデュープ品を持つことは妥協であるとネガティブに捉えられることもあったが、現在の若年層にはポジティブに受け入れられている。
「The Z Suite Meets the CMO」の別の登壇者は、「高価な欲しいものがある場合、まずは安価な代替品がないかを確認する」と語った。彼らにとって、限られた予算でコスパ良く楽しむためにデュープ品を見つけることは、金融リテラシーの高さ(賢さ)を示すステータスにもなっているのだ。
「ターゲット」から「意思決定のパートナー」へ
自分自身に向き合い、フラットな情報を求める若年層は、企業が自分たちを単なるターゲットとして捉え、行動をコントロールしようとする意図を敏感に察知する。「今の若い人ってこれが好きでしょ?」と企業に外側から決めつけてアプローチされることを嫌うのだ。
NRF前日のリテールメディア関連の講演会では、登壇したZ世代の女性が「インフルエンサーの投稿でも#PRが付いているのを見ると、その情報を本物ではないと見なしたり、スキップしたりする」という発言もあった。
これからの時代、企業側に求められるのは、外側からの「ターゲット分析」によるコミュニケーションだけに頼るのではなく、若年層の価値観に正面から向き合い、隠し事のない誠実さで共感を得ることである。
実際に、NRFで示された成功企業の共通点は、若年層をターゲットとして捉えるのではなく、経営の意思決定パートナーとして迎え入れている点にあった。ここで2社の例を紹介したい。
COACHの「同行・対話型」アプローチ
セッション「Building bold global brands in 2026 - strategy, scale and staying power(2026年のグローバルブランド構築:戦略、スケール、そして持続力)」においてCOACHのブランド担当役員Yue氏は、CEOや経営陣が自ら世界中の消費者の自宅を訪問し、数時間かけて対話を重ねたエピソードを語った。
買い物体験だけでなく、彼らの夢や希望、人生の悩みを直接聞き回ったという。その過程で店舗に訪れた時に、自社ブランドのファンではない若年層が自然と手に取ったバッグ「Tabby」に着目。それを戦略の中心に据えるという経営判断を下した。結果として、新規顧客の約70%を若年層が占めるという驚異的な成果を上げている。
COACHが若年層の心を掴んだ理由は、バッグのデザインだけではない。企業側が「ターゲット」として若年層を分析するのではなく、一人の人間として「自宅を訪れ、夢や悩みに耳を傾ける」というプロセスを重視したことにある。それによって、若年層のリアルに寄り添ったコミュニケーションを可能にした。
Pacsunの意思決定の席を共にする共創関係
前述のPacsunはさらに一歩踏み込み、13〜24歳の若者を役員会のアドバイザーとして正式に採用している。CEOのOlson氏は以下のように断言した。
「ソーシャルリスニングだけでは不十分であり、実際に彼らに意思決定の席(Seat at the table)を用意する必要がある」
若年層は、ブランドから一方的にメッセージを受け取るだけでなく、ブランドと一緒に「共創(Co-creation)」することを求めているのである。
