BtoBにおける、AIとブランディングの関係とは?
AI検索の普及でSEOのトラフィックに影響がある他、検索広告のCPAが上がり、採算が合わなくなっている。これに対して、イベントや営業の強化などオフラインに重点を置いた施策や、認知やブランディングを強化し指名検索を狙った施策を行う企業が増えている。
オフラインとブランディング、2軸の施策がトレンド化する中で栗原氏が紹介したのは、一線を画している星野リゾートの取り組みだ。
「星野リゾートは、認知の獲得やブランディングが重要だったのは『人間の記憶の容量が決まっていたから』であり、現在はAIによって無限の記憶容量があると捉えました。これからはブランディングの優先順位は下がり、『AIに記憶してもらう』ために大規模投資していくと語っています」(栗原氏)
このようにAI時代には、BtoB企業のブランディングの視点にも変容が必要だと考えられる。アドビおよびfreeeではどのように考え、対策を講じているのか。
freeeの三浦氏は「当然、マス広告を打って短期的に認知度が向上したとしても、いずれ忘却される。継続的にやり続けないと、認知は維持できません」と語り、認知向上・維持だけを目的とした広告投資の限界を指摘。AI時代に本当に必要なのは、顧客の購買意思決定の軸そのものを作る「商品」そのものへの投資だと提示した。
「自社が市場に対してどのポジションで際立っているのかを考え、市場が驚く商品を届ける必要があります。そのうえでメディアにも発信していきます。インフルエンサー・イノベーター層に認められると、その人たちが推奨してくれます。こうした情報はマス層には直接届かないものの、AI側が学習していくので、結果的にどの顧客層がAIで検索した際にもおすすめされる可能性が高まります」(三浦氏)
すなわち、コンテンツやメディアだけではなく、市場や商品の開発が求められるという本質の重要性がより増していくのではないかと三浦氏は指摘し、鵜瀬氏も同意。「特に、商品の購買後に顧客エンゲージメントを向上・維持していくBtoB商材を扱っている場合は、よりAIOに取り組む価値がある」と提起した。
AIはメモリがほぼ無限とみなすことができ、既存顧客向けのコンテンツもすべて読み込んでくれる。アドビでは膨大なヘルプページを抱えており、ベストプラクティスや事例などのコンテンツも含まれるが、AIはそれらを購買前の検討顧客にも提示できる。購入後のジャーニーを強化することが、結果的に購入の入り口にもつながる、と鵜瀬氏。
両者とも、商品自体や商品を使う際の体験価値の向上が、結果的に価値あるマーケティング投資になるという意見で合致した。
加速するAIトレンド、今後の注力ポイントは
AIにまつわるトレンドは日々変化し、先が読めない点も難しい。最後に、2社が今後注力していく取り組みについて聞いた。
freeeでは経営レベルの戦略、特にリソースのアロケーションは重点的に意思を込めて取り組む。その中で「商品開発のプロセスから変えられないか」という提案もしていると三浦氏。プロダクトマネージャー中心の商品開発では、ユーザーのペインを解消する視点で開発が進む。そこにマーケティングのメンバーが入ることで、「顧客の購買意思決定になり得る軸、あるいはトレンド・話題になる軸を起点とした開発」にも取り組むなど、異なる視点を入れて開発のプロセスを少しずつ変化させているという。
また、価値の高いコンテンツを制作することにも力を入れていく。動画コンテンツの学習効率が高いことや、調査やインタビューといった、第三者の知見を入れたコンテンツの評価が高いことから、このような新しいコンテンツに対する投資を増やしている。
「多様なコンテンツを用意しておくとAIが学習できるので、コンテンツ作りは地道にやっています。加速度的な変化を起こすため、まとまったリソースを投資することも検討しています」(三浦氏)
一方、アドビの鵜瀬氏は「AI時代の新しいKPIがどうあるべきか考えることに意味がある時期」と語る。たとえばECサイトにおけるKPIは、クリックからコンバージョンになり、コンバージョンもセグメント別に細分化していった。同様に、AIの領域においてもKPIが細分化していくと考えられる。AIにどのような情報提供をすれば最も効果が高いのかを見極めつつ、マーケター自身が新しいKPIのあり方を考える必要が出てきたということだ。
「マーケターがKPIの意思決定者でなければ、上位層に意見をあげていく必要があります。ビジネス拡大の機会に対して投資家や経営者の理解を得るにはKPIの設定が第一となるので、注力していきたい」(鵜瀬氏)
三浦氏が前半で述べたように、AIを使いこなして情報を得る人は、現状においてはまだ一部にすぎない。一方で昨今の流れを鑑みると、AI向けの情報提供を行えるコンテンツを確立することも必要となっている。AI時代のSEOは、マーケターが取り組むべき領域が増えていることは間違いない。
