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MarkeZine Day 2026 Online

MarkeZine Day 2026 Spring(AD)

SNSを事業貢献につなげるには?エリエールに学ぶ、“売れる認知”とファンをつくるための戦略

 SNS担当者が日々の運用のなかで直面する課題は様々だが「投稿を頑張っているのに数値が伸びない」「SNSの成果が事業にどう貢献しているか説明が難しい」という悩みは共通するものだろう。同じ課題に直面していた大王製紙の衛生用紙ブランド「エリエール」は、SNS戦略設計に強いNAVICUSとともに、課題解決に取り組んだ。MarkeZine Day 2026 Springでは、大王製紙の小林豊氏、NAVICUSの富田明日菜氏が登壇。取り組みをもとに、企業SNSを起点にした“売れる認知”の創出に向けたSNS戦略を解説した。

避けるべきは「とりあえず商品紹介」

 SNS運用担当者の頭を悩ませるのが「何を投稿したら良いのかわからない」「ネタ(企画)がない」という問題だ。そこで「とりあえず商品告知をしておこう」と、目的なく商品のことだけをつぶやいて急場をしのぐ。これはSNS担当者の“あるある”かもしれない。

 これに警鐘を鳴らすのは、大王製紙でエリエールのファン育成をリードする小林豊氏だ。

大王製紙株式会社 ホーム&パーソナルケア部門 グローバルマーケティング本部 デジタル推進部 デジタルコンテンツクリエーショングループ 課長 小林 豊氏
大王製紙株式会社 ホーム&パーソナルケア部門 グローバルマーケティング本部 デジタル推進部 デジタルコンテンツクリエーショングループ 課長 小林 豊氏

 同社も当初は炎上などを避けたい気持ちや、企業アカウントだから商品告知さえしておけば大丈夫という考えから、SNSでは企業側が伝えたい商品説明の投稿ばかりしていたという。

 「結果、せっかく多くのフォロワーがいたにも関わらず、何の反応も得られなかったばかりか、リーチ数が右肩下がりに落ちていきました」(小林氏)

 多岐にわたる業界・業種の企業公式アカウント運用を支援してきたNAVICUSの富田明日菜氏も「この現象は同社に限った話ではない」と指摘する。

 では、そんな「無難な商品告知」投稿から脱却するにはどうすれば良いのか?大王製紙は、NAVICUSの協力を得て、500件超にわたる過去の全投稿を洗い直し、状況打破のヒントを見出すことからスタートした。

生活者のWantと企業のMustを掛け合わせる

 分析の結果、単なる商品情報の告知ではなく、日常の困りごとを解決する「ライフハック軸を起点とした投稿」であれば受け入れてもらいやすいことが見えてきた。

 「生活者にとって有益な情報を提供して“役立つSNSアカウント”として信頼を得つつ、同時にエリエールブランドを生活者の記憶に残し、想起されやすい状況を作ることが、SNS運用の大事な軸になると考えました」(富田氏)

株式会社NAVICUS コンサルティングDiv. コミュニティマネージャー/Instagramメディアマスター 富田 明日菜氏
株式会社NAVICUS コンサルティングDiv. コミュニティマネージャー/Instagramメディアマスター 富田 明日菜氏

 ポイントは、生活者が求めている「Want」を満たしつつ、企業の「Must」である商品情報の提供を両軸で運用していくことだ。Want一筋で投稿を作るのではなく、併せて企業目線での情報発信も進めていく。

 「商品を主役にするのではなく、ユーザーが抱えている生活の課題に寄り添いながら、投稿の中で自然に商品紹介が紛れ込む投稿を作っていく方向性が定まりました」(富田氏)

 この方針により、エリエールのアカウントでは現在、ライフハック企画と純粋な商品紹介を1:1の割合で投稿している。

投稿の割合

まず、ありたい姿を定めることが重要

 そもそも、何のためにSNSを展開しているのか。この問いについて、小林氏はエリエールのファンづくり全体設計の図を示して次のように説明する。

エリエールのファンづくり全体設計

 「当社の最終的なゴールは『購買』、ないしは『ファン化』です。ゴール地点までの道のりとして、会員組織である『クラブエリエール』からスタートし、ブランドサイト、SNS、広報・PRが提供する情報があります」(小林氏)

 ゴール=購買といっても、SNSが直接購買を誘発するわけではない。SNSの運用によって目指しているのは、「なんとなく」「特売していたから」ではなく、品質とブランドを信頼し「エリエールだから使っていきたい」と思うファンを増やすことだ。

 この目的が明確になると、SNSアカウントの運用方針が決まってくる。「高い品質の商品で日々の困りごとを解決し、信頼されるブランドのアカウント」という旗印が立ち、具体的な投稿の施策が立てやすくなる。

 富田氏も、「自分たちのブランドは、SNSアカウントはどのような姿を目指していきたいのかを整理することが、SNS運用において大切です」と補足する。

Web記事を「読まれるSNS投稿」に翻訳する4つのポイント

 では生活者ニーズにもとづくSNS投稿をどのように作っていけば良いのだろうか。

 大王製紙のニーズ理解に大きく貢献しているのが、会員組織であるクラブエリエールだ。会員に「どんな投稿が見たいか」とアンケートを取り、その声を分析することで、ニーズに寄り添ったコンテンツ企画を立てる。

 ただ、ここで出た企画ネタをそのままSNSで投稿することはない。企画を練り上げ、良質なコンテンツを提供するために、ブランドサイトに掲載する記事コンテンツに仕上げていく。たとえば防災に関心が高まる3月・9月であれば、「防災に役立つ備蓄術」という企画で、在宅避難に関する情報と、デッドストックにならない備蓄法を指南。備蓄に適したエリエール商品も紹介する。

 記事ボリュームは3,000〜4,000字と読み応えがあるもので、情報量も十分だ。質の高い情報であるばかりでなく、SEO・AIO最適化を行うことで、必要な人にしっかり情報が届くように設計しているという。

 こうして丹念に制作した記事コンテンツだが、そのままでは文字量が多すぎてSNSでは読まれにくい。そこでSNSに最適な形で“翻訳”し、投稿を作っていく必要がある。富田氏は「Web記事と異なり、SNS投稿は一瞬で内容を理解できる見せ方が重要です」と説明し、4つのポイントを示す。

 第1に、記事すべてを紹介するのではなく「最も重要なポイントを切り取る」こと。第2に、「箇条書きに分解」すること。第3に、イラストなど「視覚表現を加えて図解する」こと。そして第4に、「理解しやすい順番に内容を再構成する」ことだ。

読まれるSNS4つのポイント

 この“翻訳”を工夫することで、ユーザーの関心を惹き、ブランドサイトへの誘導を促す。ブランドサイトにはさらに詳しい良質な情報があり、ユーザーの心にはブランドに対する信頼感が生まれるわけだ。

人気動画は「いつでも見返せる情報」としてストック

 もちろん、SNS投稿は記事情報だけに限らない。多くの共感を呼ぶちょっとした困りごとの解決策を説明するには動画のほうが適している場合もある。

 誰もがすぐに試せるライフハック動画は、TikTokやInstagramのリール動画と非常に相性が良い。エリエールでは、動画を新規接触の機会と捉え、視聴した人がやってみたくなるようなライフハックを提供している。

 反響があったのが、「5個入りティッシュペーパーのビニール包装を、手で簡単に破く方法」だ。ビニールの感触を確かめていくと継ぎ目があるので、そこを破くときれいに開封できる。この様子を撮影した動画が話題となった。他にも、砂糖が固まった時に湿らせたキッチンペーパーを挟んで元に戻す動画なども公開している。

 こうしたお役立ち動画で、エリエールの商品を見せていけば自然とユーザーの目は商品に留まり、印象にも残りやすい。実際、商品紹介の動画とライフハック動画の再生回数を比較したところ、ライフハック動画の視聴のほうが2倍以上も多かったという。

商品紹介の動画とライフハック動画の再生回数の比較

 さらに、こうしたライフハック動画を一度投稿して終わりにせず、時間を置いてInstagramのフィードに投稿し、コンテンツとして蓄積していくことも大切だ。

 「動画が伸びたということは、皆さんがより興味を持ってくれた内容といえます。そんな価値のある情報をフィードとして蓄積しておくことで、ユーザーの方がアカウントを再訪したり、何度も見返したりするきっかけになることを期待しています」(富田氏)

広報・PR部門との連携でメディア露出を向上

 大王製紙では、SNS投稿をさらに広げていくために、広報・PR部門との部署連携にも取り組んでいる。SNSで反響のあった投稿を時節やトレンドに合わせて整理し、メディアに紹介するリリースを配布しているのだ。これにより、SNSのBtoC接点と、メディアのBtoBtoC接点という両輪で露出を最大化させている。

 結果、2025年度はWeb・メディア掲載総数が312件、テレビ取材獲得が5件という成果が生まれ、エリエールブランドの認知拡大につながった。

売上から逆算し、SNSの事業貢献を明示する方法

 SNSを運用していると、インプレッションやリーチなどのSNSプラットフォームの指標をそのまま成果と見なしてしまう傾向がある。これに対し、小林氏は「SNSが売上にどのように貢献しているかを言語化し、明示していく必要があります」と強調する。

 しかし、売上とSNSの相関関係は見いだしにくい。その解決として、小林氏は売上に至るまでのプロセスに基づいてKPIツリーを作成し、SNSが果たす役割を明確化している。

売上のプロセスを構造化
売上のプロセスを構造化
KPIツリーと指標
KPIツリーと指標

 売上を構成するのは「新規売上」と「リピート売上」だ。この2つの売上に寄与しているものが「ブランドの想起」であり、想起を生むのは「ブランド好感度」となる。

 ブランド好感度は複数の要素で構成される。「製品」の品質や、「ブランドに対するイメージ」などだ。この、ブランドに対するイメージを深堀りすると、認知であったり、知覚品質であったり、連想やロイヤリティという指標に行き着く。すると、SNSは、「第一想起率」を向上させるため、「ブランド好意度=使用意向率」の上昇につながるような「投稿」を作っていく役割があることが見えてくる。

 「インプレッション数やエンゲージメントが、ブランド好意度の上昇につながっていることを示すとともに、広報・PRとの連携によってメディア露出を促進することで、露出件数やリーチ人数、広告換算価値といった指標が生まれ、総合的にSNSの成果を把握できます」(小林氏)

 こうした売上貢献の結果として、エリエールブランドは23年連続で家庭用紙製品国内シェアNo.1という地位を確立している。

明日からできるSNS起点の話題の作り方

 ここまで紹介した取り組みは、決して「大きいブランドだからできた」わけではない。富田氏は、明日からできるSNSの取り組みとして次の3つを挙げる。

 第1に「既存フォロワーやファンの生の声を拾う」こと。大王製紙では自社のファンコミュニティにアンケートを実施したが、既存のSNSアカウントのフォロワーの投稿からニーズを汲み取るという方法もある。SNSのアンケート機能を活用してもいいだろう。こうして日々感じているユーザーの生の悩みや課題を見つけていく。

 第2に、その結果をもとに「ライフハックの視点でコンテンツを1つ作ってみる」こと。コンテンツの制作は大変ではあるが、まず1つ投稿して反応を見るのが第一歩につながる。

 第3に「SNSだけで完結させずに、メディアへのアプローチを行う」こと。ライフハック投稿が増えてきたら、反応の良かった投稿や人気の投稿をリスト化し、メディアに送ってみよう。

 小林氏と富田氏は「この3点は今日からできる取り組みです。まずは1つ、ライフハック投稿を作ってみてください」と会場を激励し、講演を終えた。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社NAVICUS

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/21 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50538