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MarkeZine Day 2026 Spring

MarkeZine Day 2026 Spring

季節を増やし、通帳を愛でる!? 味の素と三井住友カードが「社会文脈」を捉えて成果を生んだ逆転の戦略

紙通帳への心理をユーモアでほどく、三井住友カード「通帳の人」

 もう1つの事例として紹介されたのが、三井住友カードの個人向け総合金融サービス「Olive」のプロモーションだ。

 Oliveは、銀行口座のキャッシュカード機能に加えて、買い物で使えるデビット、クレジット、ポイント払いの4つの機能を1枚に集約した「フレキシブルペイ」で、2023年に提供を開始した。口座、決済、証券、保険等の金融サービスだけでなく、旅行やヘルスケアサービス等の金融の枠にとらわれないサービスまでシームレスに利用できる。また、振込手数料の無料化や高還元ポイントなど、従来よりも利便性の高い設計が特徴となっている。

 しかし、こうした利便性の高いサービスであるにもかかわらず、一部の利用者にとってOliveへの切り替えには一定のハードルがあった。三井住友カードの伊藤氏は、その理由について次のように語る。

 「アンケートを取ると、Oliveに切り替えない理由の1位が『紙通帳をなくすのが嫌だから』というものでした。さらに理由を聞くと、『通帳があると安心する』『記帳して管理している実感がある』といった情緒的な価値が大きいこともわかったのです」(伊藤氏)

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三井住友カード株式会社 執行役員 マーケティング本部長 伊藤 亮佑氏

 合理性で考えれば、デジタル通帳の方がリアルタイムで情報が見られたり、不正利用や送金にも気づきやすいなどセキュリティ面でも優れている。しかし、長年使われてきた通帳には心理的な価値があり、それがデジタル移行の壁になっていたのだ。

 一方で、既存の通帳利用者を否定するようなコミュニケーションはリスクもある。そのため三井住友カードでは、「通帳をやめるべき」とストレートに訴求することには慎重にならざるを得なかった。結果としてメッセージが伝わりにくく、切り替えが進まないという状況が続いていたという。

正論をユーモアへ。Olive 700万突破を支えた「通帳の人」

 そこで生まれたのが、「通帳の人」というキャラクターを中心に据えたコミュニケーションだった。キーパーソンとなる通帳の人には、お笑いコンビ「ダイアン」の津田篤宏氏を起用。紙通帳に強いこだわりを持つ人物として登場させ、通帳の魅力を熱弁する姿を描いた。対照的に、周囲の家族が冷静にツッコミを入れる構成にすることで、そのこだわりをユーモラスに表現している。

【Olive】通帳の人

 「特にポイントとなったのはキャスティングです。紙通帳の利用者を否定してしまうと、不快に感じる人もいます。そこで、すべてのツッコミを受け止めてくれる存在として“通帳の人”というキャラクターを設定しました。津田さんの愛されるキャラクターがあったからこそ、成立した企画だったと思います。そのキャスティングとギャップが出るよう映画クオリティのハイレベルな映像に仕上げました」(伊藤氏)

 さらに、この企画ではSNSや屋外広告とも連動した仕掛けも展開された。たとえば、「銀行やATMのみで使える限定仕様」「手数料を支払うというプレミアム体験」といったコピーで紙通帳の虚構を伝える“ドッキリ広告”を掲出。またSNSでは、津田氏本人の投稿と「通帳の人」というキャラクターが交錯するような内容を発信し、広告の世界観を拡張する仕掛けも行われた。誰もがツッコミたくなる設計が功を奏し、大きな反響を呼んだ。

 こうした取り組みの結果、Oliveのアカウント数は2026年1月時点で700万を突破。紙通帳からの移行も着実に進んでいる。広告業界でも高く評価され、ACC賞やギャラクシー賞最高賞といった数多くの広告賞も受賞するなど、話題性と成果の両面で存在感を示したキャンペーンとなった。

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社会文脈とインサイトの結びつけが成熟市場を動かす

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/04/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50547

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