KPIは「商談数」へ回帰 創出の鍵は全社連携に
マーケティング部門のKPIにも、変化が表れている。シャノンの調査では、最重視されるKPIの1位は「商談創出数(および商談金額合計)」(約65〜70%)、2位が「MQL/SQL」(約55〜60%)となり、かつてトップだった「新規リード獲得数(件数)」は3位(約50%)に後退しつつある。
背景には、「AIが一般的な知識を瞬時に要約できるようになった」という構造的な変化がある。ネット上の情報をまとめただけの資料では、顧客はAIとの対話で満足してしまい、自社サイトへの流入や問い合わせには至らない。商談につながる深い検討を促すには、AIには生成できない「その企業にしかない体験(一次情報)」を届ける必要がある。
「この時代に、獲得数だけを追っていると、どこかで限界がくる。そして、一次情報はマーケターだけで取得できるものではありません」(浅野氏)
浅野氏は続けてこう問いかけた。「営業ときちんとコミュニケーションはとれていますか? 顧客とのパイプはありますか? 経営陣・広報との接点は足りていますか?」。
かつての「営業VSマーケ」の構図は終わり、一次情報を継続的に生み出すための全社体制こそが問われる時代になった。マーケティング部門を「リード獲得担当」として閉じた組織で運営している限り、AIO時代の競争には対応できない。浅野氏はそう断言した。
AIO対策の緊急度は業界で異なる? ITサービスは「待ったなし」
現時点ではAIO対応の必要性や難易度が、業界によって大きく異なると浅野氏は分析する。
ITサービス(SaaS等)においては、見込み顧客がAIでツール比較を完結させてしまうリスクがすでに現実になっており、直接的な影響が出ている。「おすすめのMAツールを教えて」とAIに問えば、競合も含めた比較が瞬時に提示される。Web上に情報が溢れている分、AIを「納得」させるための対策難易度も高い。
一方、製造業にとっては大きなチャンスだ。製造現場の深いノウハウや製品の仕様詳細は、まだネット上に少ない。スペック比較だけでは完結しない、BtoB特有の情報を、いち早くAIが読み取れるかたちで公開すれば、その分野における「唯一の正解」としてAIに学習され、指名買いに近い状態を作れる可能性があると浅野氏は指摘した。

では、AIに「選ばれる」ためには何が必要か。浅野氏が最初に勧める方法はシンプルだ。「まずAIに直接聞いてみる。なぜ自社が選ばれなかったのかを問いかける。回答は毎回変わるので定点観測が必要ですが、地道に続けることで改善できます」。
より体系的に取り組むなら、AIが評価する軸は「経験(Experience)×一次情報」「専門性×結論ファースト」「権威性×権威の裏付け」「信頼性×構造化・サイテーション」の4つだ。シャノンの調査では、AIO対策に早期から取り組んでいる企業の多くが最初に着手するのは「構造化データ(Schema.org)の設定」(全体の57.3%)だという。
一方で、真に差別化につながる「一次情報の資産化」はまだ多くの企業で手がついていない。「量産型コンテンツの時代から、現場にしか生み出せないカスタムな一次情報の時代へ。この変化に、まだ対応できていない企業が多いのが実態です」と浅野氏は語った。

