森永製菓×フリークアウト×ナビタイムジャパンが描く“データドリブンなOOH”
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、森永製菓が実施したOOH(Out of Home)施策についてうかがいます。はじめに、取り組みにおける皆さんの役割をご紹介ください。
太田:森永製菓でゼリー飲料商品「inゼリー」の宣伝業務を行っています。テレビ・雑誌・デジタルなど広告領域全般において、コミュニケーション設計と実行を一気通貫で担っています。
今回の取り組みでは、訪日旅行者をメインターゲットとしたOOH施策を展開しました。私は施策目的やKPIをフリークアウトさん、ナビタイムジャパンさんとすり合わせながら、広告主の立場として全体の意思決定を担当しています。当社にとってフリークアウトさんは、デジタル領域で長年ご一緒してきたパートナー。運用力に加えデータの活用力や施策の設計力が強みだと感じています。
中村:様々なマーケティングソリューションを提供するフリークアウトで、OOH領域を担当しています。位置情報プラットフォーム「ASE」やデジタル広告の知見を掛け合わせ、データに基づくプランニングや効果検証ができるOOH施策を目指し、日々施策提案やソリューション開発に取り組んでいます。今回の取り組みでも、施策設計から効果検証までの一連を伴走しました。
田村:ナビタイムジャパンのインバウンド観光客向けナビゲーションサービス「Japan Travel by NAVITIME」で取得した人流データを分析し、混雑分散などへの活用や旅行者との接点設計を支援しています。今回の取り組みでは、出稿したスクリーン周辺にどのような旅行者がいるのかを捉え、接触面をどう設計するかのプランニングや効果検証も含め、支援する役割を担いました。
壁となる「プランニング」「属人化」「検証」
MZ:まず、「inゼリー」ブランドにおいてインバウンド施策を行うに至った背景をお聞かせください。
太田:訪日旅行者が年々増えており、外国人に人気のリテール店舗でも当社製品の売上が伸びていたことが大きな理由です。「inゼリー」のインバウンド施策はこれまで店頭を中心に行っていたため、OOHにトライしてみようと考えました。
MZ:ブランド広告主として、OOHという手法にどのような課題やハードルを感じられていましたか。
太田:大きく3つの課題がありました。1つ目は、計測の難しさです。オフライン媒体の広告は購買や態度変容への寄与を捉えにくく、デジタルほど精緻に追えない点に課題を感じていました。
2つ目は、媒体選定が属人的になりやすい点です。これは出稿するエリアやスクリーンを、定量データではなく経験則で選びがちだったことに起因しています。
そして3つ目は、運用の柔軟性。出稿エリアの指定や時間帯ごとの投資配分が設計しづらいことがハードルでした。特に今回は、まだインバウンド施策のノウハウの蓄積が十分でない背景もあり、プランニングの限界を感じていました。
MZ:今回支援を行ったフリークアウトは、デジタル広告支援のイメージが強い読者も多いと思います。なぜ今、OOH支援に注力されているのでしょうか。
中村:マーケティングはデジタルだけで完結するものではなく、オフラインとの掛け合わせが欠かせないと考えているためです。市場全体でデジタル広告は出稿金額が上がる一方、飽和によって成果を出しづらい局面も出てきています。
中村:その点、OOHは効果的に設計できればより一層の成果が期待できます。ただ、媒体選定から運用、検証までのプロセスが複雑で、特にデジタル中心の担当者にとってはハードルが高くなってしまいます。だからこそ経験則や「なんとなく」ではなく、客観的なデータに基づいて「どこに・いつ出すか」を設計し、納得感を持って出稿できる状態を作る必要があるのです。
特にOOH施策の中でも最大の壁となるのが「計測」ですが、当社がデジタル領域で培ってきた知見を活かせる余地が大きいという思いがあります。
「勘や経験に頼らない」OOHプランニングをどう実現したのか?
MZ:今回実施した取り組みについて、どのようなプランニングを行ったか教えてください。
中村:元々、森永製菓さんが「inゼリー」以外のブランドでインバウンド向け施策に取り組まれていることをふまえ、訪日旅行者の人流データという強いアセットを持つナビタイムジャパンさんと組む形で、今回の協業体制を提案いたしました。
プランニングでは、当社の持つ位置情報データに加え、ナビタイムジャパンさんから提供いただいた訪日旅行者の人流データを活用。旅行者が多いエリアや時間帯を分析した上で、適切な出稿エリアとスクリーンを検討しました。
田村:人流データの提供に活用した「Japan Travel by NAVITIME」は、訪日旅行者のうち同意をいただいたユーザーのGPSデータを2分間隔で取得し、アンケートで国籍や訪日回数も取っているため、エリアごとに「どの国籍の旅行者が多いか」「新規かリピーターか」まで把握できます。
今回の施策では、125メートルのメッシュで区切り、フリークアウトさんから事前にいただいた出稿候補地の周辺人流をまず調べました。月間・年間の推定旅行者人数を算出しつつ、30分ごとに滞在状況を判定。時間帯別の多寡を、1時間単位のグラフで可視化しました。
中村:具体的には、渋谷と浅草にエリアを絞り込みつつ、ナビタイムジャパンさんとさらに詳細なデータ分析を行ったうえで出稿スクリーンを選定。予算配分も、データを踏まえつつ時間帯によって配信量を変えながら設計しました。
デジタル施策同様に、ロジカルな効果検証を
MZ:プランニング以外に、計測も大きな課題だったとお話がありましたが、どのように進められたのでしょうか。
中村:効果の計測には、該当エリアにある店舗のPOSデータを用いています。ステップとしては、まず対象店舗を距離ごとにラベル分けしました。具体的には、「配信地点に最も近い店舗群」「少し離れた店舗群」さらに効果把握のための「遠距離店舗群」などに分類しています。
「配信地点に近い店舗ほど、広告接触後に行動変容=購入が起きやすい」という仮説を立て、ラベルごとの差分を見る形で検証しました。
MZ:プランニングから計測までの一連について、森永製菓としてはどうお考えですか。
太田:今回の取り組みの目的は、データに基づく広告配信で「inゼリー」の訪日旅行者からの購入を促し、売上増加につなげることでした。その実現に向けて魅力的だったのが、施策の実施前にデータを根拠に「どの面で、どの時間帯に出すか」を設計できた点です。
人流が多い場所に予算を絞り、効果が出やすい時間帯に厚く配信する。デジタル広告では当たり前に行ってきた考え方を、オフライン施策であるDOOH(Digital Out of Home)でも実現できるのは大きかったですね。
加えて、施策後の効果検証までセットで設計できたことも実施の決め手でした。配信後のレビューで、想定していたシミュレーション通りの動きが確認できたときは、正直感動しましたね。ここまでロジックに沿ってOOH施策の振り返りができたことに意義を感じましたし、検証を行うことで次の施策に向けた改善点を発見できます。
広告投資をする以上、私たちブランド担当者は社内への説明責任があります。その点で考えても、データを元にしたプランニングから効果の可視化まで、社内説明も行いやすい施策設計だと感じました。
プラン通りの配信と、配信エリアの売上伸長を達成!
MZ:今回の取り組みでは、どのような成果がありましたか。
中村:データに基づく最適な配信設計の結果、人流データのグラフで山になっている時間、すなわち人流が多い時間帯に合わせた配信推移を実現できました。
中村:また配信後の成果も、当初の想定通りです。配信場所に近いラベルを付けた店舗ほどPOSデータの伸び率が高く、配信が売上につながっている傾向が見受けられました。一方で「本当にOOHを見た人が買ったのか」という因果の部分は、より精緻な検証が必要なため、今後進めていきたい領域です。
田村:今回の施策を通じて、OOHの中でも時間別に配信できるDOOHの強みを体感できました。ただ、媒体の特性だけでなく、精緻なプランニングが非常に重要なのだと改めて実感できました。ナビタイムジャパンとしては、その戦略設計に応えられるデータがある強みを活かし、情報発信も含めて今後さらに強化していきたいと考えています。
太田:今回はPOSデータが伸びるかどうかを指標にしていたので、プランニング通りの結果となり良かったです。
また、最近はOOH成果の指標として「SNSでどれだけ話題になったか」を用いることが多いです。しかしその場合、話題につながるようなクリエイティブが必要ですから、時間も費用もかかりますし、実際に話題化できるとは限りません。今回はそうしたアプローチではない、データによるロジカルな配信実現と成果創出という事例を作れたため、トライした意義があったと感じますね。
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MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
太田:データを活用したマーケティング施策は、デジタル領域では主流になっていますが、OOHにおいてはまだそこまで進んでいないと感じます。そのため、今回のように施策に応じて適切なデータでプランニングから検証まで行う取り組みは、森永製菓として今後も続けていきたいです。
社内でも今回の結果を共有しており、他ブランドにも横展開する形で取り組みの知見を活用できそうだという手応えがあります。
田村:データという切り口でインバウンド向けのOOH施策に関われて良かったと思うとともに、改めて森永製菓さんの取り組みは先進的だと感じました。
訪日旅行者は消費単価が高いといったメリットもある分、精緻なプランニングと効率的な配信がより重要になります。今後もデータ分析に注力しながら、ナビタイムジャパンとして提供可能なご支援を増やしていきたいです。
中村:今回、当社の「ASE」とナビタイムジャパンさんの「Japan Travel by NAVITIME」を活用し時間帯やエリアを細分化した結果、成果につなげるプランニングと計測による価値あるOOH施策を実現できたと感じます。今回は当社のDSPを介して広告を配信しましたが、今後はプログラマティックOOHの配信基盤自体も拡張していきたいですね。
また、あらゆるOOH施策に活用できるよう、「ASE」の改善・アップデートはもちろん、効果検証手法の開発にも積極的に取り組んでいきます。デジタル領域で培ってきた当社の知見をオフラインにも適用しながら、引き続き広告主・媒体双方に貢献できるマーケティング支援を行ってまいります。


