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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Online

BtoBマーケティングリサーチの基礎を学ぶ!

「成果を出しても評価されない」のはなぜ?リサーチ調査から見る経営層とマーケ現場のギャップ

予算を勝ち取る組織の共通点

豊かな指標が経営層の理解を得る鍵

 ここまで、経営層と現場の間にある壁や課題を見てきました。次に、マーケティング予算を拡大している組織とそうでない組織の比較をしてみます。

 KPI設計において、予算が増加したグループは「リード獲得数」「HPアクセス数」「CPA/ROI」「LTV」など、ファネルの各段階を測る指標を幅広く保有している一方、横ばいグループは「売上」こそ同水準ですが、「CPA/ROI」「LTV」といった中間・深層指標の保有率が大きく落ち込みます(図7)。

図7:KPI保有状況(予算増減別・複数回答)
図7:KPI保有状況(予算増減別・複数回答)

 さらに注目すべきは、「追っている指標の数」です。KPIの平均保有数は、予算増加グループが3.1個であるのに対し、横ばいグループは2.1個にとどまりました。

 予算増加グループは「売上」という結果だけでなく、リード数やCPA/ROI、LTVといったプロセスを多層的に計測しています。この「計測の豊かさ」が経営層への説明力を高め、予算拡大を後押ししていると考えられます。

 「売上(結果)へ至るプロセスが計測されていない」という構造が施策評価の曖昧さを生み、経営層との対話を困難にする根本原因と考えられます。

予算増加組はWeb広告に集中投資、展示会は「現状維持」

 また、予算増加グループとそうでないグループでは、投資するマーケティング施策も大きく異なります。「Web広告」を上位配分施策に選択した割合は、予算増加グループ(50%)と横ばいグループ(27%)で23ポイントもの差があります。一方、「展示会・イベント」は、横ばい・減少グループ(各39%)の方が増加グループよりも10ポイント高くなっています(図8)。

 展示会・イベントは認知やリード獲得に効果的ですが、予算が伸びている組織ほど比重を下げるトレンドが読み取れます。デジタル施策で効果測定を精緻化することが、後に予算規模の違いとなって現れるのかもしれません。

図8:予算配分が多い施策(予算増減別・複数回答)
図8:予算配分が多い施策(予算増減別・複数回答)

予算拡大には施策評価の明確さが必要

 「経営層から最も手応えが良いと感じる施策」の設問への回答にも、予算増減との相関が見られます。「評価されていると感じる施策はない」という回答は、予算増加グループ(4%)に対し、横ばいグループ(15%)と約4倍です。さらに「受注があれば手法は問われない」という回答も、横ばい(24%)が増加(11%)を13ポイント上回りました(図9)。

 予算が増えている組織は「Web広告」「AI・DX導入」など具体的な施策が評価されている一方、横ばいの組織は施策の選択基準が曖昧になっています。評価の明確さが投資拡大を生み、さらなる評価の明確化を呼ぶ――。この好循環に乗れるかどうかが分岐点です。

図9:経営から評価される施策(予算増減別・単一回答)
図9:経営から評価される施策(予算増減別・単一回答)

データを「共通言語」に変えるために

 今回の調査から見えてきた特に重要なことを3点に整理します。

1. 指標認識のズレは「構造的な問題」

 経営層と現場の指標認識のズレは、「現場 vs 経営」ではなく、組織内の各層が異なる情報や責任を持つことによる「構造的な問題」として捉え直す必要がある。

2. 「あうんの呼吸」が予算削減を招く(組織の盲点)

 予算を削られる組織は、削られる前から「成果を測る物差し」が曖昧なことが多い。特に経営層との距離が近い組織ほど、客観的なデータよりも「信頼関係」に頼ってしまいがちだが、その言語化の放棄こそが、予算削減の最大の要因となる。

3. 予算拡大の鍵は「プロセスの可視化」

 予算増加組織に共通するのは、KPI設計においてファネル全体を計測できていること。平均KPI数は、予算増加層が3.1個に対し予算横ばい層は2.1個にとどまる。売上(結果)だけでなく、プロセスを可視化できているかどうかが経営との対話を可能にし、予算拡大につながる。

 マーケティングリサーチが力を発揮するのは、こうした「組織内の認識のズレ」を数値で示す場面です。感情論や印象論ではなく、データを「共通言語」として、経営と現場が対話できる状態を作ること。それが今のBtoBマーケターに最も求められているスキルではないでしょうか。

 次回は、BtoBビジネスにおいて、決裁者を対象とした調査データから、発注企業の選定プロセスにおける実態を明らかにします。マーケティングの打ち手が効果を発揮するタイミング、3割の決裁者がスペックより重視する決定打の正体に迫ります。

【調査概要】

調査名:BtoBマーケター実態調査

調査主体:マクロミル

調査方法:インターネットリサーチ

調査対象: BtoB事業のマーケティング、経営企画、事業企画、営業企画部門に所属する方

有効回答数:744名

実施時期:2025年3月

『BtoBマーケティングリサーチの基礎を学ぶ!』予定表

第1回: BtoBマーケティングのリサーチはBtoCと何が違う?ハマりやすい2つの落とし穴 

第2回 :「成果を出しても評価されない」のはなぜ?リサーチ調査から見る経営層と現場のギャップ←今回

第3回 :BtoBマーケティングの打ち手、実際はいつ・どこで効いている?

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この記事の著者

伊賀 正志(いが まさゆき)

株式会社マクロミル BtoBマーケティングリサーチ事業責任者
アクセンチュアを経て2010年に株式会社マクロミルに入社。BtoBリサーチ事業にて「エキスパートインタビューサービス」や「UI/UXリサーチサービス」の立ち上げを主導。また、事業企画部門においては全社基幹システムの刷新やBIツール導入、生産性改善プロジェクトな...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/20 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50694

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