「UNIQLOCK」は売上に貢献したのか?
「広告の費用対効果」が気になるのは、MarkeZine読者も同様である。「UNIQLOCK」は果たしてどのくらい売り上げに貢献したのか。
その質問に対して答える前に、勝部氏は「広告が刹那的であること」に対しての違和感と「自ら情報を発信できるインフラを作りたい」という想いを語り、「UNIQLOCK」開発を「費用」ではなくて「資産」として見なしていると説明した。つまり、世界中に「ユニクロ」を知らしめ、楽しく、親しんでもらう「窓口」として「UNIQLOCK」は誕生したわけだ。
勝部氏は「短期的な売上には、正直それほど貢献していないでしょう。しかし、もともと設計の時点から『ユニクロを世界に発信する』という中長期的な視点で取り組んでいました」と強調。目先の売上だけでなく、「UNIQLOCK」はもっと先を見据えて設計されていた。


「UNIQLOCK」の独特の魅力については、小越氏や河野氏も「軽い洗脳(笑)みたいな楽しさがある」と言及。媒体不要であることに衝撃を受けたという須田氏も「確信犯的だったんですね」と笑った。
押し付けがましい広告ではなく、「ジャパンクールな流れ」を汲むコンテンツとして確立していていることが、ユニクロのコンセプトとリンクしており、結果として購買につながる広告として、今後も発展していくのではないだろうか。
河野氏は、先の「広告費」について立ち戻り、作成費と媒体費の両面から、もっと予算配分について考えることで可能になるプロモーションがあることを示唆。さらに「UNIQLOCK」のような斬新なプロモーションが実現した背景について、勝部氏に質問した。
勝部氏は、「UNIQLOCK」の企画書がA4書類2枚だったことを紹介し、ビジュアライゼーションよりもむしろ概念やコンセプトを伝えていくことが重要と語り、決裁権を持つ人格にプレゼンし、「信頼」して任せてもらったことが大きかったと述べた。
それに対して、他の3人も「未知の部分が多いインターネットの可能性を引き出すには、細かくコミットするよりも『信じてもらう』ことが重要」と同調。そのために、クリエイターは情熱と想いを持ち続け、実績を積み上げることで信頼を得ていくことが重要だと語った。
多彩な経験を持つプロモーション/マーケティングの第一人者である4氏の真摯な姿勢に触れ、今後どのような表現や仕掛けが登場してくるか、誰もが大きな期待を抱いたことだろう。
既存の概念から離れ、マーケティングやプロモーションを包括的に捉え、ユーザーの立場に立った時、インターネットの可能性だけでなく、テレビや他の既存メディアについても、また新しい価値が生まれてくるのではないか。そんな予感を感じさせたパネルディスカッションだった。
