衝撃的な新サービスが登場しにくい現状
ARPUだけでなく、端末出荷台数も前年同月比約マイナス50%となっている。新端末が減ることで新機能を享受できる端末の母数が増えていっておらず、新機能、新サービスの減少に繋がっている。結果、劇的な進化を短期間に遂げてきた携帯だったが、ワンセグ以降、新機能を搭載するスピードが鈍化している。近年の傾向としては、機能としての進化よりも、色や着せ替え、コラボなど多種多様なユーザーの要望に応える形での細分化が進んでいる。
公式コンテンツにおけるモバイル業界への規制、インターネット業界の事業者による携帯市場への参入、ビジネスモデルの変化などにより、順調に拡大してきたモバイルコンテンツの市場も、その成長に鈍化の兆しが見え始めた。
インターネット事業者の参入はコンテンツ面やプラットフォーム面において顕著だ。いまや、お気に入り登録している携帯電話サイトの上位を占めているのは、ヤフー、mixi、楽天などのインターネット事業者だ。
また、パソコンライクな発想で開発が可能なため、ミドルウェア、プラットフォームのレイヤーまでインターネット事業者が進出してきている。AppleのiPhoneやGoogleのAndroidなどの動きがその一部であることは言うまでもないだろう。
さらに、ユーザーのコンテンツ利用方法も変化している。今まではメニューリストからの利用がほとんどだったが、検索エンジン経由のアクセスが30%~40%になってきており、利用傾向の多様化、ビジネスモデルの多様化が進んでいる。
こうした状況を背景に、コンテンツ市場の競争は次第に激化しており、1サイトあたりの売り上げ、利益率は下がってきている。
レッドオーシャン化した携帯市場

こうした厳しさが増す情勢のなか、「携帯電話を選ぶ基準が機能から嗜好へと移っている。また、市場はレッドオーシャンだと考えて事業を進めていく必要がある」と松本氏は語る。
他業界はどのようにレッドオーシャンに対応していったかを分析すると、自動車業界は「グローバル化」により日本のパイだけでなく世界のパイをとりにいき、ゲーム業界は「UIのイノベーション」により、Wiiやタッチパネルを使ったゲーム端末で新たな価値を提案して市場を活性化し、食品業界は健康ブームや大食いブームに対応する「ユーザー志向」の試みでマーケットを維持している。
ソフトバンクは、この3つのアプローチをとることでレッドオーシャン市場に対応していくという。