“あるかもしれない未来のひとつ”としてお披露目
「オトノリ」の企画はjeki 企画コンペティション2007の一次審査を通過し、二次審査では、審査委員のほか、400名以上の面前で公開プレゼンを行った。プレゼン時の様子について鈴木氏は「プレゼンは大絶賛で、終わったあとも『面白かったですね』と言われました。このコンテストは、優秀な企画3つは実施されることになっています。でも自分たちの企画は、自動改札機がからんでくるため、実行の可能性が低いと思い、最初は審査委員特別賞を狙うつもりでした」と考えていたという。しかし結果は最優秀賞で、ジェイアール東日本企画の担当者がJR側と調整して、モックアップの改札を使って実施された。
六反氏は「実際の改札を使うという話もあったのですが、JRが将来に提供するサービスだと誤認される可能性があるので、オモチャみたいなデザインにして、『JRが将来行うサービスではありません』といったパネルも立て、“あるかもしれない未来のひとつ”という意味での発表となりました。どういう形であれ、実行したので、『モバイル広告大賞』にも応募してみました。あの賞は実行していないと応募できないですから」という。鈴木氏は、あくまでもコンテストの発表の場として捉えていたため、モバイル広告大賞への応募については「あれで実行したことになるの?」と正直驚いたそうだ。
実用化するためには何を考えるべきか
将来的な可能性を買われて認められた「オトノリ」だが、実際のサービス化にはどのような用件が必要になるのだろうか。「オトノリ」をテーマに卒論を書いているという六反氏に聞いた。
「JRの改札が持つ役割は『いかに安全に早く』人を通過させるか、だと思います。人が通るたびに違う音が鳴ってうるさいという意見も当然あるので、そのあたりの最適化作業をどうすればよいのか、という点を中心に論文に書いています。改札をどれくらい通過した所で鳴るのがよいのか、音は何秒から何秒の長さが一番気持ちよいのか、音量はどの程度がよいのか、遅延が発生するのかといったことを、システムや人の流れなど、さまざまな面から考慮しなければなりません。
例えば、遅延が発生したとしても、利用者の満足度が上がるなら、混雑していないときにだけ鳴らすということも考えられます。また、タイミングよく人が通過すると、その音で曲になるような仕組みにすると、逆に人の流れがよくなるのではないか、といったことを評価実験しているところです。論文ができたら特許を申請して、鉄道会社に提案したいと思っています」




