自動入札管理ツールへの期待と需要
リスティング広告市場の急速な拡大とともに増加する広告の出稿キーワード数の拡大は、広告主や、広告主からの依頼により出稿を請け負う広告代理店のオペレーション体制に大きな負担をかけた。
オーバーチュアの「Panama」の導入も自動入札管理ツールへのニーズを後押しした。品質インデックスの導入により、決定広告出稿サイドが広告掲載順位を容易にコントロールできる状況ではなくなったのだ。
従って広告代理店各社は広告主からの広告掲載順位指定の依頼に応えるべく、その人的オペレーション管理体制を強化していった。中には3交代24時間体制でオペレーションを行う広告代理店も現れた。
このような状況において、広告代理店におけるリスティング広告の運用体制は、これ以上現状の人手によるものだけでは対応しきれない状況となっていった。
また、自社で開発を進めていた大手広告代理店は、媒体サイドで頻繁かつ継続的に行われるスペックの微調整に応じてツールの機能を合わせる必要が発生。メンテナンスの作業負担が大きくなり、自社開発ツールの機能的キャッチアップを断念せざるを得なくなる状況なる。結果、自社ツールの機能改良を中止する広告代理店も現れることになった。
海外ツールの日本市場への参入
このような日本市場の状況の中で、2006年頃より欧米のツールベンダーが自動入札管理ツールを日本向けにローカライズして日本市場に参入を開始した。
SEM専業広告代理店ルグランは、2006年7月にヨーロッパ各国で普及していた英国テクノロジーワークス社制の自動入札管理ツールBidBuddy(ビッドバディ)を日本に持ち込み、このツールを利用した検索連動型広告の運用をするサービス提供を開始した。
また、2006年10月には、三井物産ヴィクシアが、米国Efficient Frontier(エフィシェントフロンティア)社のEfficient Frontierを日本に導入した。この、Efficient Frontierは、日本ではじめての、キーワードポートフォリオ管理型ツールとして注目を集めたのは記憶に新しい。その後、Efficient Frontierは旅行事業者やECサイト運営事業者等、多数の広告キーワード出稿をする大手広告主数十社への導入を果たしている。
翌年2007年2月には、Web解析ツールSiteCatalystを提供する米国Omniture社の日本法人オムニチュアが、Omniture SearchCenterの提供を開始した。オムニチュアはこのサービスの提供にあたり、代理店流通を活用して販路を広げ、サービス提供の拡大を図った。
一方、早期よりテクノロジーツールへの投資を行ってきたトランスコスモスは、2007年9月に米国SearchForce(サーチフォース)社のSearchForceを自社でローカライズして、提供を開始。2008年4月には、SearchForce社との契約により日本における独占使用権を得る。
トランスコスモスが独自に開発した「メディア分析型リスティング運用サービス」により、リスティング広告の購入キーワードの抽出作業をはじめ、広告文の更新作業も含めた、リスティング広告運用業務全般の自動化と効率化を進めている。
