供給過多による価格下落 マーケターの知恵が試される
マーケティング構造に変化が強いられた主な要因は、1998年から起きた20歳~64歳というコアな労働人口の低下と、2000年~2002年からADSLが普及して、Webインフラが本格化したことにあります。結果的にいうと、利益が取りづらくなったわけです。
リアルの世界を考えると、消費に旺盛な世代人口は数%ずつ減っているのに、規制緩和のお陰で巨大なショッピングモールなどにより売り場面積は3倍近く増えているありさま。明らかに供給過多状態で、専門的には「オーバーストア」と呼ばれる状態です。
これに加えてe-コマースの登場も強烈なインパクトになりました。というのも、ネットショップには床面積も何もありませんから、モノの供給側である店舗だけはとめどなく増えていくわけです。今回の景気後退の影響で競争力の劣る企業は淘汰されていくでしょうが、それも仕方のないことでしょう。
こういった供給過多の状況では、低価格化が起こります。モノやサービスを売っても全体的に利益が出にくくなるわけですから、マーケターにとって、国内マーケットであれば、リアルであろうがWebであろうが、今後、環境が厳しくなるのは容易にわかること。これまで以上に知恵を絞り、マーケティング技術を飛躍的に向上させないことには、小売と同様、生き残れない時代が到来しようとしています。
Web市場に既得権益なし コミッション型ビジネスモデルは限界に
さらにWebマーケットは事業領域が広く、基本的にオープンで参入障壁が低いことから、さらなる収益性の悪化が予想されます。たとえば広告収入について、新聞やテレビといったオールドメディアを含めて、彼らはクリエイティブを右から左に流通させることでコミッション収益を得るという、手数料型のビジネスモデルを構築してきました。
ところがコミッションというのは、参入障壁が低ければ低くなるほど、必ず下がる宿命にあります。反対に価格を維持するには、一部の企業で既得権益を独占寡占するしかありません。それができたのが、かつての大手マスコミです。
たとえばテレビ局は、許認可事業で制度に守られていますから数が増えることもなく、高額な広告費をクライアントから徴収できました。限られた区域にしか、高層ビルを建ててはいけないという制約があるようなもので、ここ以外でモノを売ってはいけないとなれば、価格が高騰するのは明白です。さらに、広告主のマーケティングを担当する代理店には、15%のフィーという暗黙の了解まである。値崩れを起こさない、絶対領域が出来上がっていたわけです。
対して、Webの世界は最初からそうではありませんでした。参入しやすい分プレイヤーも多く、競争が激しくなることから、絶対に価格は下がる宿命にあるわけです。そうなると、間に入っているエージェンシーやメディアビジネスの手数料も下がる一方。
これは、商品の流通過程でコミッション収入をあげる、スーパーマーケットや家電量販店の飽和状態に似た状況です。つまり、コミッション型のビジネスモデルは利益低下の一途を辿っているということ。そういった意味からも、マーケターの花形業種である広告代理店にも、冬の時代が訪れようとしています。(次ページへ続く)