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ネットワーク型か独自完結型か。イオンが進めるリテールメディアの「両輪戦略」

安光 あずみ[著] / 関口 達朗[写] / MarkeZine編集部[編]

 国内のリテールメディア市場は、複数の小売を横断する「ネットワーク型」と、自前で完結させる「独自完結型」の二極化が進みつつある。1億人以上のWAON POINT会員とアプリの資産を持つイオングループは、自社の会員基盤や購買データを軸に据えつつ、なぜ外部ネットワーク型のアドプラットフォーム「ARUTANA」の本格導入へ踏み切ったのか。その戦略的な判断の背景と、昨年の取材からの1年間の進展、そして今後の展望を、リテールメディアアドプラットフォーム「ARUTANA」を提供するDearOne社を交えて伺った。

この1年で大きく動いた国内リテールメディア市場、その概況は?

MarkeZine編集部(以下MZ):前回の取材から1年、国内のリテールメディア市場は大きく動きました。この1年の潮流を、DearOneはどう見ていますか。

川村:規模を問わず、小売企業のリテールメディア参入は続いています。本格参入する大手企業が増加しているからか、これまで様子を見ていた中小企業にも「まずはやってみよう」という空気感が広がっており、店頭サイネージ、データ活用、自社アプリ開発など着手する切り口はさまざまですが、裾野は着実に広がっている印象です。

 同時に、「小売各社が自前で構築する独自完結型」と「複数の小売を束ねるネットワーク型」という2つの方向性で、市場の分化も始まっています。

株式会社DearOne 執行役員 ビジネス推進部 ゼネラルマネジャー 川村兼一郎氏
株式会社DearOne 執行役員 ビジネス推進部 ゼネラルマネジャー 川村兼一郎氏
撮影場所:WeWork 東京スクエアガーデン(以下、同様)

MZ:出稿する広告主や広告代理店には、どのような動きが見られますか?

川村:テレビに特定の番組を指定してスポンサーになるタイムCM(縦)と、番組を指定せずに時間帯や予算に合わせて放映するスポットCM(横)があるように、リテールメディアにおいても、「1社単体メディア出稿(縦)」と「ネットワーク配信(横)」の両方を組み合わせる出稿スタイルが増えてきています。

 また、代理店各社にも専門組織ができ、本格的に力を入れ始めたことがうかがえます。2026年1月に新設された、電通の「リテールマーケティング局」が象徴的でしょう。リテールメディアはすでに、一部の先進的な小売企業だけの取り組みではなくなってきています。

自社でイニシアチブを取りつつ、ネットワークでビジネスをスケールさせる。イオンの両輪戦略

MZ:「小売各社が自前で構築する独自完結型」と「複数の小売を束ねるネットワーク型」で二極化が進む中、イオンはどのような戦略でリテールメディア事業を進めていますか?

赤坂:イオングループの強みは豊富な会員基盤や購買データにありますが、自前での開発にこだわりすぎてしまうと、スピード感を出しにくく、事業規模もスケールしていきません。日に日に変化する広告主のニーズを満たすためにも、アドテク領域に強い外部パートナーと組む選択肢をとりました。

 具体的には、店頭での配荷と連動する「マネージド(手売り)」型の提案に加え、全自動の「セルフサーブ」型を有効活用する、この両輪でリテールメディア事業の戦略を描いています。

赤坂さん
赤坂徳聖氏:イオンマーケティング株式会社 メディア企画本部 副本部長 兼 イオン株式会社 リテールメディア推進全体の統括を担う

川村:ネットワーク型のリテールメディアであれば、「どの店舗で施策を打つか」ではなく、「誰に届けるか」で施策を打つことができます。前者なら「販促費」になりがちですが、後者だと「広告宣伝費」の区分になるため、より大きな予算を確保しやすいというメリットがあるのです。

赤坂:一方で、外部パートナーにすべて丸投げしてしまうと、蓋を開けたら自社に何も残っていないという事態になりかねません。ですから、ビジネスのイニシアチブは自社でしっかり保持することが重要だと考えています。

 当社のリテールメディア事業で核となるのは、「会員・アプリなどの顧客接点」「購買・行動データ」「全国の店舗網」の3つです。店舗は北海道から沖縄県まで全国47都道府県を網羅しており、それぞれの店頭にて、お客さまが最終的に商品を購入する瞬間の接点を持っていることが最大の強み。ここを最大限に活かすために、自社だけでは足りない部分を外部パートナーとの連携で補う、という考え方です。

グループ内のアセット統合で大きく進化、イオンのリテールメディアの「現在地」

MZ:前回取材時、イオンのリテールメディアは、グループ事業会社との調整を進め、統合・標準化の基盤を整えている段階でした。あれから1年、現状はどこまで進んでいますか?

赤坂:主要事業会社の多くと協業契約の締結が完了し、各社が保有するデータやメディア、チャネルといったアセットを横断的に活用できる基盤が整いました。これにより、従来の単なる「広告枠の販売」から「本格的なマーケティング提案」へと、提案の質が大きく進化しています。

 たとえば、以前は「このアプリや媒体を使えば、これくらいリーチできますよ」といった、メディア側(売り手)起点の提案が中心でした。それが活用可能な購買データが広がったことで、「こういう新商品に対して、関心を持ちそうなお客さまがこれだけいる。その対象にどうアプローチするか」というように、「お客さま(顧客)」を主語にした最適な施策を考えられるようになってきています。ターゲット層のボリューム感や購買文脈を踏まえて提案できるため、メーカーの広告宣伝部の方にも深く納得していただけるようになり、前向きにご検討いただけるケースが格段に増えましたね。

イオンが「ARUTANA」を正式採択した3つの理由と、SSP「fluct」連携の利点

MZ:もう一点、1年前はPoCで「ARUTANA」を試験導入している段階でしたが、本格導入されたそうですね。決め手は何だったのでしょうか?

ARUTANA(アルタナ)とは

MAU約5,000万人、50以上のリテール公式アプリに横断で広告配信可能なアドプラットフォーム

赤坂:シミュレーションを上回る収益実績が出たことはもちろんですが、1年間運用してみて感じた大きな理由が3つあります。

 1つ目は、運用コストの大幅な削減です。イオングループには多数の事業会社アプリが存在し、個別に保守運用や調整を行うと膨大な工数がかかります。複数のアプリを束ねて横断配信できる「ARUTANA」のようなネットワーク型なら、一括管理が可能です。

 2つ目は、システム連携の容易さです。「ARUTANA」はグループ内の主要アプリですでに導入実績があり、広いカバー率(カバレッジ)を誇ります。そのため、別のシステムを1から構築・導入するよりも、初期開発や連携が圧倒的にスムーズでした。

 3つ目は、ガバナンスの一元化です。これまではアプリごとに掲載ルールを策定・変更し、その内容をお客さまへ周知する必要があり、運用面でも大きな負担がありました。これをグループ横断で統合管理することで、ルールの統一や変更対応を効率化できる点も、大きなメリットだと考えています。

MZ:「ARUTANA」は、ドコモグループのSSP「fluct」との連携も進むと聞きます。どのような効果を期待されていますか?

赤坂:広告枠のさらなる稼働率向上と収益最大化に期待しています。豊富な広告主ネットワークを持つ「fluct」と連携することで、自動的に空き枠を埋める「セルフサーブ(全自動)」配信が可能になります。これまで通り、店頭の棚割りや配荷と連動する高度な「マネージド(手売り)」提案で価値を高めつつ、残りの枠は「セルフサーブ(全自動)」で有効活用する。このハイブリッドな運用で事業成長のアクセルを踏んでいきたいですね。現在はイオン・DearOne・fluctの3社で協議を重ね、最適な形を追求している最中です。

「ノンエンデミック」の出稿も拡大。変化する広告主と評価軸

MZ:広告を出す企業の顔ぶれも、この1年で変わってきたのではないでしょうか?

赤坂:はい、ずいぶん変わったと感じています。特に増えているのが、店頭で商品を取り扱っていない、いわゆる「ノンエンデミック」領域の出稿です。保険、住宅、自動車、行政、公共領域まで、多様なジャンルの企業様からご相談いただいていますね。

MZ:たとえば、どんな企業がどんな使い方をしていますか? 印象に残っている事例を教えてください。

赤坂:直近の象徴的な事例は、DAZN様との「FIFAワールドカップ2026」タイアップ企画です。全国各地でイオンシネマなど100以上の会場を活用し、日本代表戦を盛り上げるライブビューイング企画を実施しました。会場はJリーグクラブにゆかりの深い場所や、日本代表選手の出身地などを選定。DAZN様にとってはサービスの認知や新規会員獲得につながり、イオンにとってはイベントを目的に来店したお客さまとの接点や購買を生む、Win-Winな取り組みとなりました。

ライブビューイングの様子
ライブビューイングの様子

MZ:裾野は確実に広がっているのですね。提案や運用を伴走するDearOneから見て、広告主側の「出稿の向き合い方」にはどんな変化を感じますか?

川村:広告主企業の中で、従来の「販促」か「広告宣伝」かという二元論ではなく、「リテールメディア部」といった専門部署が設立され、独自の予算が割り当てられるケースが増えてきました。特に化粧品や食品、日用品、製薬といったメーカー様でその傾向が顕著です。

MZ:予算のつき方が本格化しているのですね。そうした中で、出稿後に求められる「効果検証(評価軸)」にも変化は出てきていますか?

川村:評価軸は高度化・複雑化しています。単純に「何人に広告を見せたか(認知)」でも、「どれだけすぐ売れたか(単発の販促)」でもありません。「狙ったターゲット層に届き、その人たちが最終的に店舗やアプリでどれくらい購買に至ったか」までを統合的に見たい、というニーズが強まっています。

 しかし通常、複数のアプリやメディアを横断して「広告接触から実際の購買まで」を正確に追いかけるのは技術的に容易ではありません。だからこそ、ネットワークを一括で束ねて購買効果まで可視化できる「ARUTANA」の提供価値が、今まさに高まっていると感じています。

イオンのマーケティング高度化と、ドコモグループの総合力で創る「リテールメディアの未来」

MZ:イオンがリテールメディア事業で次に掲げる目標は何でしょうか?

赤坂:リテールメディア収益をいかに拡大するかという目先の数字に議論が終始してしまいがちですが、本来は「お客さまの生活や暮らしを豊かにするための情報ツール」であるべきもの。お得な情報や価値ある商品と出合うことでお客さまのニーズが満たされ、最終的に店舗の売上拡大につながる――広告はその「橋渡し」でしかありません。

 だからこそ、単なる広告売上の追求だけに走るのではなく、AIも有効活用しながらデータの標準化や分析を進め、お客さまを起点としたマーケティングの高度化と生産性向上に注力していきたいです。

MZ:動きの大きいリテールメディア市場ですが、DearOneはどのような展望を描いていますか?

川村:引き続き「リテールメディアの市場を作る」というゴールに向けて邁進していきます。「ARUTANA」は、50以上のアプリに配信可能で開発中を含めれば60を超えています。アプリのMAUは5,000〜6,000万の規模。大手リテールの多くが参画するプラットフォームに成長しました(2026年9月時点)。引き続き多くのリテールに参画していただく活動を進めてまいりますが、ここからはさらにアプリ内広告だけに閉じず、店内サイネージや店内放送までを一括購入・配信できる統合型リテールメディアプラットフォームへ進化していきたいと考えています。

 さらにこれはDearOne単体ではなく、ドコモグループ全体の総合力として推進していきます。グループ会社であるLIVE BOARD(屋外・店内サイネージ)との連携に加え、CARTA HOLDINGSとのシナジーにより、YouTubeをはじめとするWeb・SNSなどの店舗外メディアへも一気通貫で広告を配信できる体制を整えていきます。

 加えて、ドコモが保有する契約データを活用することで、「どのような属性のお客さまが広告に触れ、どう店舗で購買に至ったか」といった情報を、高度な分析結果として、メーカー様や小売企業様へ還元できるようになります。国内リテールメディアの課題であった検証についてもドコモグループで一丸となり、アプリ、サイネージ、店内放送、そして外部Web広告を掛け合わせた際の相乗効果まで可視化していく方針です。

 「ARUTANA」は、小売各社の独自性を尊重しながら裏側で共通のシステムをつなぎ、配信量に応じて収益とデータを各社に還元する「土管(インフラ)」の役割を目指しています。テレビのスポットCMのようなネットワーク型の仕組みをリテールメディアでも実現し、市場全体を支えるインフラになっていきたいです。

販促施策にも認知施策にも最適なリテールメディア

複数のリテール公式アプリに一斉に広告配信ができ、購買タイミングに届く×購買データで効果検証が可能です。出稿効果はID-POS連携でレポーティングもできます(購買数・ROAS)。本記事で興味を持たれた方は、ぜひARUTANA公式サイトよりご相談ください。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社DearOne

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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