強いインサイトを発掘する4つのアプローチ
南雲氏は、強いインサイトを発掘するための具体的な方法として、4つのアプローチを紹介した。
- N1の深掘り——すでにブランドに深くはまっている顧客(週7回来店する、高頻度・高単価の顧客、特定の商品のファンなど)を掘り下げる。
- 生活者の声——新商品発売前の1on1インタビューやフォーカスグループインタビュー、CLT調査、試食調査などを通じて、消費者の表情や言葉から感じ取る。「モデレーターや聞き手自身が、対象者の表情や言葉から何を感じ取り、気付けるか。ここで優劣が出るので、感性を磨いたほうがいい」と南雲氏。
- 思い込み(先入観)を外す——「なぜファミリーマートを使わないのだろう」「なぜ競合店舗に行くのだろう」と日々問いを立て、そこにあるバリアや先入観を探る。
- 人間観察——自社・競合の店舗ではもちろんのこと、日常の中でも常にアンテナを張り、行動や表情、会話を意識して観察し続ける。
南雲氏自身が特に日常的に意識しているのは【3:思い込みを外す】と【4:人間観察】の2つ。強いインサイトは「さぁ、インサイトを発掘しよう!」とN1インタビューをして、サクッと見つかるようなものではない。常にアンテナを張り【3】と【4】を考え続け、浮かんできた仮説や気づきを【1】【2】で検証していく——これが南雲氏のインサイト探索だ。

さらに南雲氏は、この4つに加えて自分自身がターゲットに含まれる場合は、自分自身を深掘りしてインサイトの手がかりにすることも有効だと語る。「自分だったら欲しいのか」「自分に刺さるのか」を突き詰め、自分の中にある“動かす鍵”を信じ抜く姿勢も、南雲氏のインサイト発掘における重要な引き出しの1つになっている。
「反対されてから勝負」——丸亀製麺とFAMIMA PARK AZABUDAI
南雲氏はここまでの方法論を、2つの実例を交えて振り返った。
丸亀製麺のリブランディング(2019年)
丸亀製麺は2017年から2018年にかけて16ヵ月連続で客数が前年割れするという状況にあった。この現状を変えるべく、2019年1月からリブランディングを実施。当時、外食でうどんを食べる人は市場全体のわずか10%で、「うどんはどこで食べても変わりはない。外で食べるうどんも、家で食べるうどんも大差はない」という先入観が消費者の間に根強くあった。
そこで捉えられたインサイトが、「本当においしいうどんの基準が、消費者自身にもわからない。だからこそ外食でわざわざうどんを食べようとは思わない」というものだ。このインサイトに、「すべての店で粉からうどんをつくっている丸亀製麺だけが、打ち立て・生のうどんを提供している」という丸亀製麺ならではのPODを掛け合わせ、「ここのうどんは、生きている。」というブランドコミュニケーションで、うどんの新鮮さ・美味しさの価値を再定義した。結果として、約1年弱で業績はV字回復した。
ファミリーマート旗艦店「FAMIMA PARK AZABUDAI」(2026年)
もう1つの事例が、2026年7月にオープンしたファミリーマートの旗艦店「FAMIMA PARK AZABUDAI」だ。「コンビニなんてどこも変わらない」「コンビニにセンスの良いアパレルやフードなどあるはずがない」という消費者の先入観に対し、NIGO氏(クリエイティブディレクター)、落合氏(コンビニエンスウェアデザイナー)、片山氏(インテリアデザイナー)との共創により、これまでのコンビニにはないセンスの良さと気分が上がる・ワクワク感を両立させた店舗を実現した。
南雲氏の入社前から進んでいたプロジェクトであるため、南雲氏自身は「横から見ていた立場で、深掘りはできていない」と留保しつつも、連日多くの来店があり、ファミリーマート史上最大規模の売上・客数を記録していると明かした。
この2つの事例に共通するのが、社内で反対の声や疑念が多い施策ほど、結果的に強く刺さるという逆説である。新しいことは結果が読めず、先も見えないため、社内で否定的な意見が挙がりがちだ。しかし、南雲氏の実感では、社内で反対されたときほどうまくいくとのこと。反対されてからが勝負──これも南雲氏の真骨頂だ。
講演で紹介された、成果を出すための思考法とインサイト探索法をまとめると、以下の通り。最後に南雲氏は「日々アンテナを張ってインサイトを探し、感性を磨く。これは僕もずっとやってきましたし、これからもやっていきます。皆さんもぜひ取り組まれるといいと思います。今日のお話がビジネスのお役に立てれば嬉しいです」と話した。

