意外にも低い参入障壁と統合的なプロモーション展開の可能性

iPhoneは広告配信先として魅力的なプラットフォーム。だが、意欲的な広告主は単純にWebサイトに誘導するだけではなく、ユーザーを集めたランディング先でiPhoneならではの面白い仕掛けを用意したいと考えている。にもかかわらず、それを実現できるクリエイティブやアプリケーションの企画・開発力を持つ会社が少なく、広告主の要望が満たされぬままでいるという。
新しい領域に挑戦するとなると心理的・技術的な障壁を感じてしまうかもしれないが、iPhoneのブラウザ表示はMacのデフォルトブラウザであるSafariがベース。同じHTMLレンダリングエンジンであるWebkitを搭載しているので、HTMLやJavaScriptなど既存の技術の応用でページの構築が可能だ。携帯電話用のサイト開発と比べて新たに習得が必要な技術も少なく、3キャリア対応や端末別の表示チェックも不要なため手間や費用もかからない。そのため、ちょっと凝ったPC用のキャンペーンページ作成と同じ感覚で、開発・制作を進められるのではないかとラーゲリン氏は考えている。
「あまり知られていませんが、割と簡単にできるんですね。例えば施設の空き状況を検索して、予約したいと思ったらボタンを押して電話をかける。PCで使っているのと同じシステムを使えば、そんなキャンペーンページが数万円程度から発注できてしまいます。これはWebサイトなどの制作会社にとっても、すごくビジネスチャンスだと思います。アプリケーションを作れる会社は何社かありますが、トータルでそういったチャンスを握り切っている会社はない。私が副業としてやりたいくらい(笑)」とラーゲリン氏も保証する。
「Webの若かったころと似ていると思いませんか? 『うちも企業ページをそろそろ作ろうか』と。ただ、Webが若かったころのように『ホームページを作りました』で終わりたくない企業が多いので、そこにJavaScriptなどを使って、ダイナミックなページを作れる会社が現れるとWebと同じようなチャンスがあると思います」
販売促進を目的とした企業アプリケーションの登場
また、企業が販売促進目的でiPhoneアプリケーションを作成するケースも徐々に増えて来ている。面白い仕掛けをしている企業の例としては、家具・雑貨の販売で有名なIKEAが挙げられる。同社のアプリケーションはカタログになっており、気に入った製品をタップするとその製品を拡大表示してカメラを起動。花瓶なら机の上に置いて違和感がないか、カーテンなら家の窓枠に合うかと、カメラ越しに自分の部屋に当てはめて確認できる。
「今までの携帯電話にもカメラは付いていましたし、Javaも使えました。でも、やっぱり最終的な作りこみと操作性のところで、どうしても違いが出てしまう。モバイルやPCでは機能面を求めてしまいますが、そこに楽しさなどのエモーショナルなものを入れられるのがiPhoneの良いところ。今のところiPhoneを使ったマネタイズは、アプリケーションを開発してユーザー課金を狙うのがメインですが、企画力を生かして、企業にアプリケーションを提案するといったビジネスも検討していくべきでしょう」

