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「消費財広告主がネット広告費拡大を牽引する」
世界最大のリサーチ会社Nielsen CEOが2010年のオンライン市場を予測

インターネット利用はテレビのシェアを必ずしも喰うわけではない

 Nielsenの調査によると、インターネット利用率は世界レベルで活性化しており、一部地域では人口の推移と同じ曲線を描きながら緩やかになっているものの、まだまだ全体は右肩上がりの傾向にあるという。また大陸別に利用傾向を見た場合、アジア地域は中国を含むためユーザー規模で言えば7億3800万人と巨大であるにも関わらず、インターネット利用率は他の地域と比べて低い。そのため、今後大きな伸びを期待でき、ビジネスチャンスがあると言える。

大陸別のインターネットユーザー数と利用率の比較
大陸別のインターネットユーザー数と、利用率の比較

 アジア諸国で言えば、台湾ではインターネットが「メディアごとの一日あたりの接触時間」において、第2位のメディアにまで成長している。特徴的なのは、テレビへの影響はなく、その分新聞・雑誌の接触時間が減っている点だ。テレビ視聴は増加傾向にあるという。こうした台湾の状況はアメリカと非常に近く、今後全世界的に広がっていくトレンドだという。

台湾でのメディアシェア
台湾でのメディアシェア

 こうした状況を踏まえ、バーバンク氏「生活者にリーチするのであれば、最早インターネットに投資するのは避けて通れない。そして、今後数年間でインターネット企業が大きく成長するだろう」という見解を示した。

国内ソーシャルメディアの伸びシロはまだ十分にある

 次に、近年注目を集める「ソーシャルメディア」に関するトレンドが紹介された。ソーシャルメディアの利用人口は全世界で年々拡大傾向にあり、日本ではインターネットユーザーの約75%がSNSを利用している。

 アジア地域において特徴的なのは、Facebookなどグローバルに展開するメディアではなく、日本ではmixi、韓国ではcyworldと、ローカルなメディアの人気が圧倒的に高い点にある。しかし、日本国内でトップクラスのリーチを誇るmixiですらその数値は15%程度。米国やオーストラリアにおけるFacebookのリーチは60%を超える。バックウォルター氏はこの点に関して「日本におけるSNSは、まだまだ伸びシロがある。mixiのようなローカルサイトが伸びるか、あるいはグローバルサイトが台頭するかは、今後1年注視すべきポイントになる」と指摘した。

他国SNSとmixiとのリーチ比較
他国SNSとmixiとのリーチ比較

消費財の広告主がインターネット広告費を拡大する

 Nielsenが重要なトレンドとして、紹介したのが消費財メーカーのネット広告への本格進出だ。従来、出稿規模の大きな消費財広告主だが、インターネット広告への進出の遅く、インターネット広告費全体におけるシェアは小さなものだった。

 しかし近年、その出稿額は増加傾向にあり、アメリカのほか、アジアでもシンガポールや香港など順調にオンラインキャンペーン数が増えて言っているという。まだインターネット広告費全体の3~4%に過ぎないが、今後大きく伸びることが予測されており、消費財広告主の動向次第で、国内インターネット広告の状況は大きく変わるとバックウォルター氏は示唆する。

アメリカでのインターネット広告費全体における消費財広告主のシェア
現状3%程度だが、2008年から急速な伸びを見せている
アメリカでのインターネット広告費全体における消費財広告主のシェア。現状3%程度だが、2008年から急速な伸びを見せている
シンガポールにおける消費財広告主のオンラインキャンペーン数の推移
波はあるものの、順調に増加している
シンガポールにおける消費財広告主のオンラインキャンペーン数の推移。波はあるものの、順調に伸びている

利用率に比べ、低いインターネット広告費

 前述のとおりユーザーの利用率は急速に伸長している。しかしその一方で、未だに他メディアよりも広告費自体は低いままとなっている。例えば香港では、一日あたりのインターネット接触時間がTV、雑誌に続き21%という状況にも関わらず、メディアごとの広告費のシェアではわずか1%に過ぎない。

オレンジ色がインターネットの値
接触時間の割に広告費のシェアが小さい
オレンジ色がインターネットの値。接触時間の割に広告費のシェアが小さい

 消費者から多く利用されているメディアであるにも関わらず広告費が少ない理由を、バーバンク氏は「適切ではない指標をベースに広告の売買が行われているからだ」と指摘する。

 インターネット広告においては、クリックやインプレッションなど配信された端末数が広告売買の指標となる。一方、テレビなどの他メディアでは、従来「どういった人が見たのか?」という属性や「その商品に対しての印象がどう変わったか?」「広告を見たことで購入頻度が変わったか?」といったメッセージ理解、ブランド好意度、購入意向といった指標が利用されてきた。こうした指標がインターネット広告には適用されておらず、そのため利用者数に正比例して広告費が増えていない状況が生まれている。

 しかし当然ながら、「インターネットは別物」という考えではなく、各メディアは統合してプロモーションを行う必要がある。バックウォルター氏は「トップレベルのマーケターは、単なるインプレッションなどの数値ではなく、より統合的なデータを必要とし始めている」と指摘し、今後はインターネット広告の効果をテレビ広告やモバイル、新聞・雑誌広告と同じ指標で計測するようになると予測した。

 最後に、バックウォルター氏は今後の予測として次の4点を提言した。

  1. 日本は成熟したオンライン市場の兆候が随所に見られ、接触時間はさらに増加する可能性がある。今後、広告メディア会社は、視聴者をより一層惹きつけられるオンライン・エクスペリエンスを提供する方法を考えなければならない。
  2. ソーシャルメディアは数年後に廃れるという懐疑的な見方もされがちだが、顧客とコミュニケーションをする上でもっとも費用対効果の高いメディアとなる。
  3. 消費財広告主は、遅ればせながらデジタル・マーケティングの重要性に気づいてきた。今後のインターネット広告費増加に大きく貢献するだろう。
  4. 他メディアを含め一貫した指標を利用することにより、クロスメディアにおけるインターネット広告の役割は後押しされる。他のメディアとの間に存在するギャップを切り崩すことが重要になってくる。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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MarkeZine(マーケジン)
2010/01/19 21:07 https://markezine.jp/article/detail/9385

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