顧客からのフィードバック収集におけるListeningの意義
もう1つ、Listeningの意義として重要な点がある。それは、顧客の声の収集において、効果的・効率的な戦略となり得ることである。
一般的には、顧客のブランド体験におけるフィードバックを得るために、顧客満足度調査といった調査手法が用いられる。しかしながら、この顧客満足度調査についても、前述の消費者調査と同様、顧客の本音をベースとした回答がどの程度得られるかという点において、疑問の余地がある。そもそも、設問の数が多くて、回答率が下がってしまったり、プレゼントをアンケート回答へのインセンティブに付けると、回答がポジティブな方向に振れやすいといったバイアスがかかってしまうなど、調査手法に対する課題も多い。
一方で、インバウンドでコールセンターにかかってくる感想や問い合わせ、苦情などのコール内容は、本音をベースとしたフィードバックであるという意味では、分析する対象として信憑性が高い情報と言える。
しかしながら、わざわざコールセンターに自発的に電話をかけたり、ヘルプデスクにメールをしたりすることは、顧客にとっては非常にハードルが高い行為であり、基本的にはよほどのことがない限り行わない。顧客の立場に立って考えたとき、フィードバックの容易さという点では、自分のブログに不満を書き込んだり、Q&Aサイトに質問を投稿したりするほうが、心理的なハードルは低いだろう。感謝のコメントに関してでさえ、企業にわざわざ電話をしたり、葉書を投函したりして伝えるよりも、ネット上でレビューを書き込むことの方がハードルが低いと言えるかもしれない。
また、収集したコール情報の内容分析を行う企業は多いが、その主目的は、コールセンターの生産性もしくはコスト効率を高めるための業務改善的な意味合いが強く、Listeningのようにマーケティング活動全般に活かしていくというような考え方を実践に移している企業はまだ少ないのではないか。
このように、ソーシャルメディアマーケティングにおけるListeningは、顧客からのフィードバックを効率的に収集するという点においても、非常に有用な戦略であると言える。
今回は、ソーシャルメディアマーケティングにおけるListening戦略の本質について述べた。次回は、Listeningのメソドロジー(方法論)について詳説していきたいと思う。