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オープンソース動画プラットフォームKalturaで
国内動画市場を開拓するDAC

Kalturaのもつ動画プラットフォームとしての「競争力」

 そういった局面において、Kalturaの国内競争力はいかほどのものであるだろうか。まず、オープンソース版によるブレイクスルーは、その認知度が向上すれば大きく期待されることである。これまで動画配信のオペレーションの難しさや面倒くささに辟易していたコンテンツホルダーがKalturaのことを知った場合、そこには革新的な価格破壊が行われることだろう。

 また、サーバマシンやネットワーク回線を確保するのに時間がかかる場合、毎月10Gまで無料で利用できるASP版がアカウントが用意されているため、初期投資の費用を押えながらKalturaプラットフォームを利用することができる。他の動画プラットフォームがあくまで本契約までの「つなぎ」であるのに対し、ASP版Kalturaの場合は10Gを越えなければ継続して使い続ける事ができるため、Gmailのようにある種の無料インフラとして活用する事ができる。

 このように、利用を開始するにあたっての費用的なコストに関しては他のどの動画配信プラットフォームよりも優れているといえる。今後、それらのメリットが真価を発揮するためには、Kalturaの国内市場への存在感を高め、が小規模から大規模までさまざまな局面でのさまざまな導入実績が必要になってくるだろう。実績を重ねるうち、利用者の要望に対してオープンソースモデルによる多様性が広告主のニーズに応えたり、そのAPIのもつ柔軟性がこれまでの動画活用を越える動画コンテンツの制作に寄与したりすることができれば、動画市場そのものの底上げも実現される可能性が高いだろう。

Kaltura APIによって実現したインタラクティブキャンペーン
Kaltura APIによって実現したインタラクティブキャンペーン

 実際に、簡易なオンライン編集ツールを利用して、ユーザ自身に動画を編集させて投稿させるといったインタラクティブな動画キャンペーンがKaltura APIによって可能になっている。上記は実際に行われているMetacafeというメディア上で行われたテレビドラマシリーズ「Heros」のキャンペーンで、素材のアップロード、切り貼り、並び変え、音声編集などのインタラクティブな機能を最大限に活用した、ユーザ参加型のキャンペーンとなっている。

「スマートフォン向け対応」と「HTML5 Video」

 そして2010年前半は、動画を取り巻く環境にさらに大きな波がいくつもやってきた。動画がよりオープンに、そして身近なものになっていくというベクトルがどんどん広がり、様々な局面でこれまでの動画再生環境に当てはめられていた制限が取り外されてきた分、そうした変化にも対応していく必要が出てきている。

 いまや動画はテレビやパソコンだけのものではない。iPhoneやAndroid携帯のようなスマートフォンの普及台数増加により、それらパソコン以外のデバイスで動画を閲覧する機会も増えてきた。とくに日本の環境では、スマートフォンの普及以前から携帯電話での動画の視聴が可能になっていたため、それらとあわせさまざまなデバイスに対応する必要がある。そのために必要なのは大きく分けると、デバイス本体に付属する動画再生アプリケーションによる再生と、ウェブブラウザの中での動画再生との2つに分けられる。

Kalturaによるモバイル端末サポートのイメージ
Kalturaによるモバイル端末サポートのイメージ

 前者に至っては、対応はシンプルである。サーバ側で各デバイス向けの動画のコンバートを行ってさえおけば、なんとかしてモバイル端末に動画を再生するためのURLを伝えればよい。KalturaではMedia RSSを通じて動画のソースの所在を知らせることができるため、これをベースにPodcastを作成したり、端末側に直接動画のリソースを投げたりしてやれば、適切な動画形式の変換により端末は動画を再生することが出来る。

 一方で、後者はウェブブラウザの中で、コンテンツの一部分として動画が再生できる必要がある。携帯電話のウェブブラウザでは、そもそも性能的にそこまでのことを実施刷ることは出来ないため、この方法について心配する必要は無いが、問題はスマートフォンである。特に人気の高いiPhoneやiPadといったApple社製のデバイスは、そのブラウザのプラグインにAdobe社のFlashを採用していない。Kalturaをはじめ多くの動画配信プラットフォームでは、動画プレイヤーをFlashで構築しているため、これは大きな障害となる。さらに、動画エンコーダのライセンスの問題も絡んでくるため、動画の再生インターフェースについてはもう一度体制を整えなおす必要が出てきている。

 この問題を解決するのが、HTML5 Video プレイヤーである。HTML5プレイヤーはフロントエンドのプレイヤーの構築手段からFlashを排除し、新しいHTML5のvideoタグによりウェブブラウザ内部から呼び出されるJavaScriptベースのプレイヤーを採用している。また、動画のエンコーダにはよりオープンな仕様のものが再生され、さまざまな環境での再生をサポートすべく調整がつづいている。

 重要なのはこのような動きに置いてKaltura が先頭を切ってHTML5 Videoへの対応を呼びかけていることだ。Let's Get Video on Wikipedia[ http://videoonwikipedia.org/ ] というサイトでは、将来Wikipediaの全ての記事を映像化するにあたり先立って動画の投稿を受け付けるとともに、それらの動画の再生が Kaltura によって開発されたHTML5 video向けのJavaScript メディアライブラリによって支援されていることがサイト上でもうたわれている。

 HTML5の再生をサポートするJavaScriptライブラリはさまざまなベンダーがリリースしているが、Wikipediaのような全世界的なサイトとタイアップしてキャンペーンを行っていくことで、Kaltura のメディアライブラリがより広範に利用されるようになることも、キャンペーンの成果として想定していると予想される。いずれにしろ、モバイル向け/およびHTML5 Video向けのこうしたアプローチは、動画のエンコードや配信における、Kalturaの動画プラットフォームとしてのポテンシャルの高さを表しているといえるだろう。

Let's Get Video on Wikipedia
Let's Get Video on Wikipedia

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この記事の著者

神部 竜二(カンベ リュウジ)

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)、e-ビジネス本部 テクノロジー戦略部に所属。現在新しいビジネス開発ミッションの一つとして、オープンソース動画配信プラットフォーム「Kaltura」の普及・啓蒙につとめている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2010/09/08 10:00 https://markezine.jp/article/detail/9640

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