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オープンソース動画プラットフォームKalturaで
国内動画市場を開拓するDAC

前回の記事では、動画をビジネスモデルのコアに据えた様々なベンチャー企業を紹介した。今回はその中でもオープンソースで動画プラットフォームを開発している米国 Kaltura Inc. (以下Kaltura)に注目してみよう。

オープンソース動画プラットフォームKaltura(カルトゥーラ)

 前回の記事 [ http://markezine.jp/article/detail/9529 ]では、動画をビジネスモデルのコアに据えた様々なベンチャー企業を紹介した。今回はその中でもオープンソースで動画プラットフォームを開発している米国 Kaltura Inc. (以下Kaltura)に注目してみよう。

 Kalturaはその動画プラットフォームをASPとして提供する他、ダウンロード可能なKaltura CE(Community Edition)[ http://www.kaltura.org/project/community_edition_video_platform ]をGNU GPLv3ライセンス下にて提供している。それらの動画プラットフォームは、欧米では既にWikipedia、Universal Studios、PBS、The Coca-Cola Company, PepsiCo, Inc, TV Guide Magazine, Best Buyなど約7万社近い大手企業に利用されており、Kalturaは他のオンライン動画プラットフォーマーを圧倒するスピードで成長している。

Kalturaコミュニティーサイト上のKaltura Community Edition のプロジェクトページ
Kalturaコミュニティーサイト上のKaltura Community Edition のプロジェクトページ

 Kalturaが特徴的なのは、他のプラットフォームが動画をコアとしたビジネスに注力しているのに対し、オープンソースモデルによって自社の動画プラットフォームを標準的なプラットフォームとして普及させようとしているところだ。UNIXライクOSのLinux、ウェブサーバのApache、リレーショナルデータベースのMySQL、ブログパブリッシングプラットフォームのWordPress、そしてウェブブラウザのFirefoxと、オープンソースソフトウェアの活用はサーバサイド、クライアントサイドともに今では必要不可欠なものとなりつつある。Kalturaはコンテンツ配信プラットフォームとして、その布陣に自らを加えようとしている。

 ASPやクラウドとしてサービスを提供する場合、競合他社の同様の製品との差別化や機能の模倣が問題になったり、価格が高止まりしてしまったりする可能性がある。これは利用者にとっても不利益である。Kalturaはそこに「Flexibility(柔軟性)」というスローガンを持ち込み、まずソースコードをオープンソースライセンス下で公開することで、ソースコードを閲覧することができるようにした。これにより、開発者が自分の開発したソフトウェアや他のオープンソースソフトウェアにKalturaの機能が自由に組み込めるようになった。また、無料であることで、他の動画配信プラットフォームに対する圧倒的な価格破壊をもたらし、さらにKaltura.org[http://www.kaltura.org/]にコミュニティサイトを設け、開発者や利用者同士がセルフサポートを行えるフォーラム機能を提供しコミュニティ主導の情報交換や機能の開発をすすめられるような体制をKaltura自らが整備した。ソースコード及びプロダクトのダウンロードのためのホスティング環境もあわせて提供した。

Kalturaに見る「オープンソースソフトウェア」の本気

 オープンソースプロダクトに対してはかつて、有償のプロプライエタリな商品に比べて「品質が低い」「サポートが不安」「不安定」といったことを心配された時代があった。しかし、先に挙げたような代表的なオープンソースプロダクトは様々なプラットフォームに移植されながらその品質を高め、コミュニティによる強力なサポートを得て、より安定的なプラットフォームへと完成度を高めてきた。

 Kalturaもソースコードをダウンロードすれば、誰でも動画配信を手軽にコンテンツ管理機能を備えた独自サイトを構築することができるが、特筆すべきはその管理画面の品質の高さである。フルFlashで構築されたKalturaのダッシュボードはKMC(Kaltura Management Console)と呼ばれ、高度な機能が整然と整備された管理画面になっている。

 KMCでは動画・音声・画像のアップロードをはじめ、プレイヤーのカスタマイズやプレイリストの作成、動画によるアクセス統計や配信経路の決定などができ、さらにはブラウザ上でのビデオ編集も可能になる。さらにKalturaはRESTベースのAPIを提供しているため、それらを通じてプレイヤーや管理画面上のパラメータにアクセスする外部プログラムも作成可能であるなど非常に自由度の高いソリューションとなっている。

KMC(Kaltura Management Console)のスクリーンショット
KMC(Kaltura Management Console)のスクリーンショット

オンライン動画編集ツール

 動画やイメージのリミックス、サウンドトラックの追加、トランジッションと追加、動画装飾、エフェクトやテキスト挿入が可能。

 

レポート&トラッキング

 運用業務に必要なレポートを閲覧可能。様々な角度からの集計をリアルタイムに実施。

 

 さらに、Kalturaは主要なオープンソースプロダクトとの連携にも積極的である。下記は、Kalturaがプラグインという形で他の製品との連携を示した図だが、これらプラグインの開発もオープンソースコミュニティの手によってすすめられている。またプロダクトベースでなくとも、PHP、Ruby、.Net、Javaなどプログラム言語とのインターフェースも用意されているため、開発者があらたなプラグインの開発を開始したり、自前のサイトとの連携をとるためのプログラミングを行ったりすることも可能になっている。このように、オープンソースのもたらす多様性を活用することでKalturaは劇的な進化を遂げている。

各種オープンソースとの連携

 WordPress用プラグインを用いる事により、WordPressブログに簡単に動画を挿入する事が可能。また、CMS「Drupal」や「Moodle」とも連携可能。

 

各種プロダクトとの連携対応表

製品カテゴリ 製品名 機能
ブログパブリッシング WordPress ブログに動画を挿入できる
Wiki MediaWiki, MindTouch Wiki記事に動画を挿入
CMS Drupal, Joomla ウェブコンテンツに動画挿入
学習支援CMS Moodle 授業の資料に動画を挿入可能に
SNSプラットフォーム ELGG SNSを動画対応に
Kalturaプラグインの対応プラットフォームと機能

 

 2010年に入って、これらの拡張機能がまとめられ、スマートフォンで言えばアプリケーションストアのような統合ポータルKaltura Exchange [ http://exchange.kaltura.com/ ]も設けられた。Kalturaプラットフォームの利用者はここから任意の拡張機能をダウンロードしたり、購入したりすることができる。オープンソースモデルに下支えされたアプリケーションマーケットが登場することで、Kalturaが動画を軸にしてまさにビジネスプラットフォームとして躍動しはじめているのである。

Kaltura Exchange のスクリーンショット
Kaltura Exchange のスクリーンショット

 またKalturaは、プロジェクト全体の活発さにも目を見張る部分がある。Akamai(CDN: Contents Delivery Network - 動画のような大容量のコンテンツを配信する際に欠かせないインフラ)、Adobe(プレイヤーやストリーミング技術)などの大手企業・財団の動画参入を受け、Participatory Culture Foundation、Wikipedia, the Mozilla Foundation、Yale大学とパートナーを結び、Open Video Alliance [http://www.OpenVideoAlliance.org]というコミュニティを共同企画した。この団体は40社を募り、牽引するという興味深い取り組みも実施している。2009年6月には、第一回目のOpen Video Conference [http://www.openvideoconference.org/]をニューヨーク市で開催し、900人以上の出席者が参加したことで注目も集めた。2010年10月にも、第二回目のOpen Video Conference が開催され、動画マーケットのリーダーカンパニーが一同に介して、動画市場に関するセミナーやディスカッションが行われる事が予定されている。

Open Video Conferenceプロジェクトページ
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この記事の著者

神部 竜二(カンベ リュウジ)

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)、e-ビジネス本部 テクノロジー戦略部に所属。現在新しいビジネス開発ミッションの一つとして、オープンソース動画配信プラットフォーム「Kaltura」の普及・啓蒙につとめている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2010/09/08 10:00 https://markezine.jp/article/detail/9640

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