「ユーザーの満足度を上げる」ということ
次に、アンビエント・ファインダビリティについての説明をはじめた。
多くの専門家が指摘をしているように、Webサイトの訪問者は必ずしもTOPページからそのサイトを利用し始めるわけではない。特に、検索エンジン経由の訪問者であればTOPページ以外のページからサイトの閲覧を開始することも十分にありえる。その時にキーになるのが、アンビエント・ファインダビリティという概念である。
アンビエント・ファインダビリティは2つの単語から構成されており、それぞれ次のような意味を持つ。
- アンビエント(ambient)…周囲のもの、囲むように、包囲するようになどを意味する。
- ファインダビリティ(Findability)…情報配置やナビゲーションの質、ある目的物の発見しやすさ、ナビゲーションのしやすさの度合い、などを意味する
このキーワードを解説するために、Peter氏はNational Cancer Institute(アメリカ国立癌研究所)サイトのコンサルティング事例を紹介した。Peter氏は同サイトのコンサルタントとしてユーザー体験を向上させ、必要な情報に到達するためのクリック数を減少させることを目標に、プロジェクトに取り組んだ。
実際に、同研究所はしっかりとした調査や対策を行っており、利用者の多くが、がん患者本人またはその家族であること、そして、個別のがんについての情報を求めていることなどは分かっていたという。
Peter氏は、数値データから事実をしっかりと把握していることに感心しながらも、ユーザーがどのような経路を辿って同研究所のサイトにたどり着いているかを、聞いてみたとのこと。しかし、残念ながらその答えを同研究所サイトの運営担当者たちは知らなかったようだが、運営担当者たちは「我々のサイトは検索エンジンで“がん”と検索すれば大体1位表示されるので、問題ないですよ」という答えを返したという。
ところが、Peter氏が調べてみたところ、それだけで十分ではないことがわかった。なぜならば、「がん」という単語の検索数よりも、乳がん(Breast cancer)や白血病(Leukemia)【注】といった個別のがんの検索数を足した方が検索数が多いうえ、それらの単語で検索しても同サイトは1位表示されなかったのだ。
【注】一般的に白血病は「血液のがん」と呼ばれている。出典Wikipedia
Peter氏は、その事実をチームに伝え個別の病名でSEO施策を行うことを勧めた。その結果、ユーザーは必要な情報に検索エンジンから直接アクセスすることが可能になり、ユーザー満足度は向上。結果としてWebサイトのアカデミー賞とも呼ばれるWebby Awardsを受賞したという(詳細情報:9th Annual Webby Awards Nominees & Winners:)。
検索結果の表示画面でアクションを完結させる
最後に、Webサイト内の情報へのアクセス手段の1つである、サイト内検索についてPeter氏は見解を示した。詳細については新作『Search Patterns』で触れられているが、サイト内検索についていくつかの論点や考察を挙げながらサイト内検索において重要なポイントは次の3点であると述べた。
- 検索は、インタラクティブなプロセスである
- 検索結果はシンプルで早くなければならない
- 検索目的によって意味のある情報は変わる。それによってインターフェースも変わる
この3点の中から、3番目について補足説明をしよう。
例えば、リリアルタイム検索(Real Time Search)で検索をしている場合と、通常のWeb検索で検索している場合では、あなたの検索目的は異なるはずである。前者はいま、この瞬間に話題になっている事象について、人々の反応を知ることが目的だとすると、後者は何かの定義を知ることが目的なのかもしれない。そう考えると、優先的に表示ささせる情報や、検索画面の掲載順位などは異なるはずである。
これは、ECサイトにおいても同じことが言える。商品情報を調べることを目的とした検索であれば、近くのどの店で買えるかという情報よりも、製品のスペックなどの情報を優先して表示すべきではないだろうか。
こうした視点で検索に表示させる内容を考えると、検索結果画面上でユーザーにアクションを起こさせることも間違いではない。既にアメリカではその事例が出はじめているという。「アメリカのある図書館のサイトでは検索結果画面で本の取り置きの手続きをすることもできる」とし「検索ユーザーの目的に応じて検索結果画面がどういうページであるべきか変わってくるはずだ」と強調し、セッションを締めくくった。