既存顧客の購入総額UPを測り「パーソナライズ」を推進
楽天のユニーク購入者数は2009年10~12月で854万人。既に相当数の利用者を抱えていることになるため、1人当たりの購入総額を上げる施策も必要になる。その中でも、同社が重要なキーワードと見ているのが「パーソナライズ」だ。
楽天は、楽天市場、楽天トラベルなどのグループ全サービスの会員情報・購入履歴などのデータを「楽天スーパーDB」というデータベースに集約。ECとは多少離れた話になるが、2009年5月には商品購入履歴から判断できるライフスタイルや価値観、楽天ポイントへの反応具合、楽天グループの各サービス利用履歴を元にセグメンテーションできる「楽天スーパーDBターゲティング広告」の配信をインフォシークで開始するなど、グループ全体でパーソナライズ機能の強化に注力している。
「具体的な計画は申し上げられませんが、今後は閲覧や購買の履歴を基に、どんなコンテンツに興味を持ってくれるのか、パーソナライズの精度を高めて行く必要があります。究極的には1人1人の楽天市場。どんどん近づけていくつもりです」
Twitter、ランキングでリアルタイム情報を提供
パーソナライズに次ぐキーワードになりそうなのは「リアルタイム性」。Twitterを使ったマーケティングには既に着手しており、楽天トップページに掲載するタイムセール商品はTwitterで毎日つぶやいて告知している。
「『今はいちごの季節ですよ』というよりは、『8時~12時までこんな商品が安い』というメッセージの方が刺さりやすい。Twitterからの集客も徐々に増えてきています。かなり有効です」
また、リアルタイム性という点では、ランキングの更新頻度も反映を速くした。1日前のランキングでは品切れになってしまうこともあるため、現在は1時間程度でランキングを更新するようにした。ユーザーが品切れになる前に買えるようになり、機会損失の削減にもつながっているという。
冒頭で1人当りの購入頻度は増えてきていると取り上げたが、その背景には商品分野の広がりだけではなく、こうした楽天側のサービス改善の成果も貢献しているようだ。

ナレッジを蓄えていく楽天出店者
非PCユーザーの取り込み、1人当り購入総額の底上げの施策と、楽天が購入者をモールに連れてきてより多くの商品を買ってもらうための取り組みを紹介してきたが、来訪してくれた購入者を注文にまで落とし込む立場にある出店者側の現状はどうなっているのだろう。
出店者側にとって、楽天を利用するメリットの1つは自らの努力と工夫次第で集客力に差を生み出せること。トップページやカテゴリトップからの流入だけに頼るのではなく、商品検索に引っ掛かりやすいように商品情報を工夫する、楽天アフィリエイトからも集客する、過去の購入者や興味を持ってくれた登録者に独自のメールマガジンを配信する、といったように自分たちでプロモーションを企画・実行できる。メールマガジンにしても、クーポンを配る、注文時にメルマガで指定したキーワードを入力すると安くなるといった工夫で読者の関心を高めようとしている店舗もあるそうだ。
Google AdwordsやYahoo!リスティング広告に広告予算がシフトしてきたように、出店者もコンバージョン率の高い広告を使って、ピンポイントに商品を販売していく傾向が強くなっている。そのため、最近では特に楽天の検索結果欄の上下に表示される検索連動型広告の人気が高く、専門的な商材を扱う店舗ほど、効果的な広告枠になっているという。
動画を活用した“訳あり”商品の紹介
また、販促効果においては、動画の活用にも期待が高まっている。
例えば、“訳あり”商品の人気に火が付いているが、藤田氏は「理由も無く安いのは不安。“訳あり”は安い訳がないと売れない」と見ている。その点、ECは安い訳を店頭よりもじっくりと説明できるメリットがある。これまではテキストと画像だけだったが、動画も使うことができるようになり、商品説明という点でのECの優位性はさらに増すと見込んでいる(参考:楽天、出店店舗の動画をアフィリエイト素材として使える「商品動画リンク」)。
「例えば1万円のエレキギターがあったとします。僕らの若いころは5~6万円出さないと買えませんでした。それがECなら海外から安く仕入れて、そのまま売るから安く売れる。ただ、安い商品には不安が残るので、プロが『ここまで弾けるんだ』と動画で見せてやる。安いだけでなく使えるんだと見せてあげることで、コンバージョン率を非常に上げることができます」
さらに、訳があって安い“訳あり”とは逆に、訳があって高い“訳あり”も出てくるのではないかと予測する。どんな生産者が作っているのか、どんなこだわりの素材を使っているのか、どれだけ手間を掛けて作っているか、そうした情報を見せてやることで、訳があって高い“訳あり”も受け入れられるようになるのではないかというのだ。