まさかそんなものがECサイトに
ECサイトで買えないものはもはやない。そう断言できるほど、ECサイトが提供する商品の裾野が広がってきた。
ECサイトの市場が萌芽し、その後急拡大するときに牽引していたのは、書籍、旅行、音楽CD、映画DVDなど、同一商品ならば、商品の価値が均一なものであった。CDは、同じアルバムタイトルであれば、どのCDを手に取ったとしても、コンテンツは同じである。まだECサイトを使い慣れていない人でも、そうした性質の商品ならば、ECサイトで購入しても良いと考える人が多い。
しかし、ここ1年程度、そしてこれからの5年間の市場拡大を支えるのは、想定外の商品かもしれない。例えば、野菜などの食品である。
ネットスーパーという業態が拡大しつつある。毎日の夕食をスーパーで購入する主婦からすると、198円のキャベツを購入するにも、つまれているなかからぎっしりつまったもの、見た目が新鮮そうなもの、など手触りと目で見た直感が意思決定に大きな影響を及ぼしている。
しかし、そうした同一商品でも価値が違うもの、についてもECサイトで購入する人が増えてきている。こうしたサービスは、働いている1人暮らしの消費者向けにもマッチする。例えば、会社を出て帰宅し始めると同時に携帯電話でサイトにアクセスし、今日、明日必要となる生鮮食品をモバイルサイト上で購入する。家につくのは約1時間後だ。そして、帰りの電車で注文した野菜は、帰宅後30分程度で家に届けられる。
現代人は、新鮮さにこだわりを持つ人が多い。そして、食べ残しなどないように、なるべく食べる量だけを購入し、料理をしたいタイミングでその食材を欲しい、というわがままな傾向がある。このネットスーパーという業態はそうした消費者ニーズを取り込もうとした事例といえる。
新鮮さという観点では、さらに面白い事例がある。「三陸とれたて市場」というサイトである。

このサイトでは、漁船の漁の現場を、船上のウェブカメラを用いてライブ中継している。地曳網などを引き上げていくと魚が船上に順次吊り上げられていく。その刹那を狙い、サイト上には購入ボタンが浮上し、それを押すことができる。
文字通り、取れたての魚を購入することができる。購入を決めれば、その場で冷凍パックなどの処置も施され、その様子の写真なども見ることができる。インターネットが遠い海空の下にいる漁師と、高いのパソコンの前にいる消費者を繋いだのである。
あらゆるものがECサイト上で購入できるようになる。日本の消費規模は約280兆円ほどの規模を誇る。そのすべてがEC化されることは想定しにくいが、長期的には1割がEC化されていくと考えても乱暴な議論ではないだろう。