「角ハイボールの飲める店」ではなく「東京 居酒屋」「大阪 居酒屋」
ツールを入れ替えたことで組織にプラスの影響があったことは分かったが、室元氏の部署では具体的にどのような施策を打ってサイト運営を改善していったのだろうか。
例えば、角ハイボールの飲用体験者を増やすため、ハイボールタワーと呼ばれる専用ディスペンサーを設置した居酒屋へ、ハイボールを飲んだことのないユーザーを誘導しようとページを用意。角ハイボールの一杯無料試飲などのクーポンが利用できるようにした。
ところが実際に1週間程度施策を走らせてみたところ、サイト来訪者は増えてもクーポンページへはちっともアクセスが集まらない。ひょっとすると「角ハイボール」で検索する人は、角ハイボールの作り方やキャンペーンの情報を知りたい人なのではないだろうか。
室元氏のグループは1週間経過した段階でそのように推測。すぐに「角ハイボール」で対策していたものをもっと地域性の高いワードに切り替え、対象店舗の東京・大阪の地名で集客できるように特集ページを改定。従来の体制だったら、問題を把握できたころには特集期間が終わってしまっていたかもしれない。
この対策は見事に当たった。「東京 居酒屋」「大阪 居酒屋」「渋谷 居酒屋」などのキーワードからはいってきたユーザーは、無事にクーポンページまでたどり着いてくれた。対策も順調に進み、自然検索からの流入量も増えていったという。最終的には、広告追加投資などの無駄なコストを発生させることなく、予定以上の集客数を実現したわけだ。
アクセス解析ツールなどで分析していると、どうしても「途中のページで離脱しているんだったら、どうページを直そう」という思考に偏りがちだが、対策に時間もかかる上に、成果に結び付くか確証があるわけでもない。
それよりは、入口となった流入経路でユーザーがそもそもどんなニーズを抱えているのか、ユーザーの気持ちを考えて成果につながるようにフォローする、あるいは成果の出そうな経路を強化する。WebAntennaを導入したことで、そんな意識の変化もあったようだ。
意思決定を迅速に行える環境を作る
ユーザーがどんなニーズを持っていて、マーケティングの施策が成果にどう結び付いたのか。素早く正確に把握できるようになったことで、室元氏のグループの変化は、ほかの部署にも影響を及ぼしつつある。
一例を挙げると、流入元のキーワードを分析したことで、酒類名・ブランド名で検索する人の中にはドリンクメニューを増やそうと考える店主も居ることが分かった。そこでBtoC向けの商品説明ページからサントリー製品の取り扱い申し込み窓口にアクセスできるようにしたことで、店舗開拓につなげられるようになった。
成果指標としてはPVくらいしか見るものがなかった商品ページの担当者にも、売上に貢献できるようになったと、ひどく喜ばれたという。
あるいは最近では無視できない影響力を誇るようになったブロガーなどのCGMの効果を高めようと、テレビCM、PR、CGMをどのように有機的に結び付けていこうか、ほかの部署も巻き込みながら社内的な議論に発展しているのだとも。
まだ室元氏のグループに限った話かもしれないが、このようにサントリーでは、四半期程度のスパンだったプロモーションの意思決定が週次にまで短縮され、ビジネス上の成果にまでつながり始めている。施策と成果の関係を一目で分かるようにし、意思決定を迅速に行えるようにする。それはWeb担当者以上に、サービス・事業の責任者にとって重要なことなのかもしれない。
【参考情報】
先進的なマーケティングに取り組むサントリー酒類株式会社も採用した広告効果測定システム『WebAntenna』の詳細は、ビービット社サイトに掲載されています。興味のある方はぜひご覧ください。