「戦艦とジェットスキーくらい違う」カタログ通販とECの違い
「仕入」「掲載」「受注」「配送」といった同様の仕組みを持つため、一見、似ているように感じられるカタログ通販とECだが、特にフルフィルメントに関しては、梶原氏が「戦艦大和を動かすのと、ジェットスキーを運転するぐらい」と表現するように大きな違いがある。フルフィルメントソリューションの提供事業も手掛ける千趣会であっても、この両者を並行して走らせることは、大変な作業であったという。下の表は、カタログ通販とECにおける違いの一例だ。同社が体験したポイントを順を追ってみて行こう。
似て非なる物流の違い
カタログ通販の場合、大量に注文が入ることを想定し、時間を掛けて選りすぐりの商品を大ロットで用意する。また、注文期間もカタログ掲載後半年など、一定期間に限られる。一方、ECサイトは週単位という短い周期で、小ロットの商品を回転させていくビジネスとなる。
例えば千趣会の場合、以前の物流システムでは、カタログ通販の一日数万件という大量出荷に対応するため、掲載カタログや商品の大きさ・形状といった分類で、全国各地の商品センターにそれぞれ出荷拠点を分散。倉庫内の商品も一定期間で入れ替えるため、商品ピッキング等の各作業フローやルールもそれに最適化していた。
しかし、ECサイトではカタログに関係なく各商品を軸にした注文となるため、カタログ単位で見れば別物として分類される商品も同時に発送するケースがでてくる。それゆえ、ECサイトからの注文に対してさまざまな拠点から商品を集めなくてはならないなどの問題も生じる。さらに、小ロット生産で売り切れとなった商品はすぐに新しい商品に入れ替える必要があり、在庫管理の方法なども大きく異なる。
「分散していた出荷ローケ―ションでロスが出ていた部分は1か所に拠点を集約するなど、ここ数年、変動費の削減を進めてきました。また、運賃の面でも、日本の中央に近い出荷拠点に寄せて送料を下げるなど、コストを見直して運用方法の最適化を進め、費用削減につなげています」(岡田氏)
体制変更でコールセンターを最適化
顧客からの問い合わせ対応を行うコールセンターにおいても、ECに向けた最適化を進めている。
千趣会では、商品情報・発送対応といったように、問い合わせの種類別に応対する専門部署をそれぞれ分けていた。あくまでカタログ事業の補完的立ち位置だったECサイトへの問い合わせは、当初そうした専門ジャンルと横並びの1部署として、ECサイト専門のスタッフが全て対応していた。
ところが、ECの売上が伸び、問い合わせの数や質問内容が深くなってきたことで、ECサイト専門のスタッフだけでは裁ききれなくなってきた。状況に対応すべく、専門知識とECサイトに対するリテラシーを持ったスタッフを商品情報や発送対応といった各専門部署に分散。ECサイト向けコールセンター体制の最適化を図ってきたという。

「カタログの場合、誌面のスペースが限られるため、商品内容に対する問い合わせも多く、一度掲載したら情報を変更できません。ですので、カタログで問い合わせがあった情報はサイト上で追記・修正など行います。問い合わせ数の削減や情報の補完を行う場としてもWebサイトを活用しています。問い合わせ状況のデータを吸い上げて、Webの運営チームに渡していくというサイクルが、ようやくできてきたところです」(岡田氏)

