広告もひとつの感覚情報にすぎない
ブランディングとしての広告はさておき、「検索」において広告を広告として考えているのは、それを発信している企業だけである。検索結果画面において自然検索結果と有料検索結果を区別しているユーザがどれだけいるだろうか。ランディングページを広告の飛び先ページとして認識し、それによりアクションを使い分けているユーザはどれだけいるだろうか。広告を見る側は、本も雑誌も写真集もDVDも映画もテレビもインターネットもファッションもインテリアも同じように見るだろう。あらゆる情報は等しく人々に入っていく。つまり視覚空間・聴覚空間などの感覚空間の中で、広告もひとつの感覚情報として認識されるのだ。
ならば、感覚的な広告文やランディングページを作れば良いのかというとそうではなく、広告するものの本質が感覚的にも伝わることが最も重要なのである。ユーザが必要としているのは、人を惹きつけるキャッチコピーでもなければ、目玉商品を紹介したランディングページでもない。いかに企業が感覚的な情報部分を持ち合わせているか。広告を意識する前に、企業は顔と皮膚を持った生きた存在でなくてはならない。

狭小な世界で最適化を競い合う時代は終わる
リスティング広告を運用する上で媒体選定、予算配分、またはキーワードの追加や細かなランディングページの設定などは、もはや誰もが成し得る最適化手法である。さらに、入札やランディングページ生成までツールで自動化できる便利な時代である。この勢いでますます情報のマッチングが加速していった時、人々は次に何を求め、何を良しとするだろうか。
検索結果画面やランディングページに想定していた情報そのものしかなかった時、ユーザは検索世界に飽きてしまうのではないだろうか。思い起こして欲しい、フィギュアスケートの世界に存在した機能的世界の先に広がる表現力の世界を。それは広告や検索という枠を超え、感覚に訴える情報であり、その深みであり広がりであり、情報の豊かさなのである。
幸い、リスティング広告においては数行の広告テキスト文だけでなく、ランディングページという表現力を発揮する場が確実に用意されている。あるはずの情報とともに、想定外の付加価値を持った情報をそこに用意しよう。ランディングページに留まらず、さらにWebマーケティング全体に視野を広げてみると、さまざまな情報の形を携えることで、より一層その価値は向上するとされている。具体的には、ブログ・SNS・ソーシャルRSSリーダー・ソーシャルブックマークなどのユーザによってつくられる情報、いわゆるソーシャルメディアによる情報世界の複雑化、相乗効果が期待できる。
このように、情報のマッチングを突き詰めるあまり、Yahoo!なりGoogleなりの世界観を中心に広告戦略が展開され、狭小な世界の中だけで最適化すべく競い合う時代は間もなく終わりを告げようとしている。本当の意味で世の中が豊かになった時、表現力の持つ無限の世界が認められ、そこに広がる豊かな情報が追求されていくに違いない。それは情報を受け取る側をも心豊かにし、双方向に価値を高め合っていく関係でなければならない。
