「ユーザー滞在時間」「トラフィック数」「ページビュー数」で比較する盲点
ソーシャルメディアと検索エンジンの利用シーンを比較してみよう。
TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、1つのウィンドウ・タブでログイン状態を維持しながら、同時に別のウィンドウ・タブで別の作業をすることが多いと考えられる。他方、検索エンジンを利用する際、検索エンジンのトップページや検索結果画面を開いたまま、別のウィンドウやタブで別の作業をすることは少ないのではないだろうか。すると、検索エンジンよりもソーシャルメディアの方がユーザー滞在時間が長くなるのは容易に想像できる。
また、最近のブラウザは、検索エンジンを選択してブラウザから直接検索できる機能も備わっている。そうなると、ますます検索エンジン内のユーザー滞在時間が短くなるのは必然である。
さらに、検索エンジンユーザーが望むのは、「求める情報に早くたどりつきたい」というものであり、検索エンジン側もそれを実現するために日々改善が進められている。その結果、実際に求める情報に早くたどり着けるようになったとすると、検索結果画面の2ページ目、3ページ目を見なくて済むようになるため、ページビュー数や滞在時間は短くなる。
また、的確な検索結果を返すようになると、ユーザーは検索結果画面からさまざまなサイトを覗きつつ、求める情報が掲載されているかどうかを確認しなくてもよくなる。そうすると、多くのサイトにとって検索エンジン経由でのトラフィック数が減少していくのは自明である。
つまり、検索エンジンの「ユーザー滞在時間」「トラフィック数」「ページビュー数」がそれぞれ減少するのは、裏を返せばユーザーが求める情報により早くたどり着けるようになった証拠でもある。これは検索エンジンにとって、むしろ“品質がよい”という証拠になるのだ。
中・長期的に見たソーシャルメディアと検索エンジンの関係
これまで述べてきたように、ソーシャルメディアは参入障壁が低い領域のため、次々と新しいサービスが生まれる。そして、各ソーシャルメディアは、情報が生成・蓄積される場であるため、検索エンジンの検索対象として回収(包摂)されることになる【注】。
そうなったとき、ある情報を調べる際に、それぞれのソーシャルメディアに逐一アクセスしてからサイト内検索で調べるよりも、検索エンジンの一般検索を利用し、複数のソーシャルメディア内の情報を横断的に一括で調べられる方が、ユーザーにとってはメリットが大きいのである。
従って、ソーシャルメディアと検索エンジンの関係について次のような展望を描くことができる。TwitterやFacebookなど、影響力の大きなソーシャルメディアが寡占状態のときには、一時的に検索エンジンの需要が低下することもあり得る。しかしながら、新たなソーシャルメディアが台頭し、増え続けるにつれ、再び検索エンジンの需要も高まることが考えられるのである。
【注】ただし、mixiのように検索エンジンにインデックスされない設定になっているものは別である。