装飾メールやキャッチーな宣伝文句には慣れてきている?
継続利用を売上に結び付ける上で、重要となるのがメールマガジンだ。先にも触れたが、モバイルコマースは一度ハードルを越えた利用者は継続購入に結び付きやすい傾向があることから、メールマガジンによるプロモーションは有効な手段となっている。特にキャンペーン企画などでメールマガジンを発行すると利用者が大きく動きやすいことから、モール側からも、各ショップに利用を働きかけているという。
携帯電話は画面が狭いことから、メールマガジンを用意する上でも工夫があるようだ。例えばキャンペーン企画を展開中の場合、キャンペーンサイトへのリンクを最上部に持ってくると、そこからWebサイトにアクセスしてしまい、それ以降に目玉商品などを紹介しても見てもらえないという。それゆえキャンペーンサイトへのリンクを目玉商品の後に持ってくるなど、レイアウトを考慮する必要があるとのこと。他にもタイトルを短く収め、かつタイトルを見ただけで内容が分かる形にするなど、独特の工夫が必要だという。
また一時は装飾メールが有効な手段として多く活用されてきたが、最近ではユーザーが慣れてしまっているため装飾メールであれば伸びるとは限らないという。通常はテキストのみのメールマガジンを発行し、ビジュアルによる訴求効果が強いものなど、“ここぞ”という時に装飾メールを使うなどした方が、印象を強くすることができるのではないか、とのことであった。
また同様に、かつてはインパクトのある宣伝文句を多く活用した方が、高い効果が得られるという傾向があった。だが現在ではユーザーも冷静な判断を持つようになっており、内容が伴わないとコンバージョン率が下がり、ユーザー離れを起こすなど、むしろマイナスの影響が出るという。行きすぎた表現にならないよう、注意する必要があるといえよう。


テキストによるメールと使い分けることが多いようだ
ショッピングモールならではのユーザー取り込み施策とは
では、メールマガジンやモバイルサイト以外では、どのようにしてユーザーを取り込む施策を考えているのだろうか。ディー・エヌ・エーが運営しているコマースサイトは基本的にモールであることから、ショッピングモールを運営する上でという話になってくるが、同社ではモールを意識させることなく、自然にモールのどこかの店舗に入ってくるよう、広い受け皿になることを重視しているとのことであった。気になる商品があって購入してみたら同社のモールの店舗だったという具合だ。
個別の店舗が独自で雑誌などに広告を出しているケースは多いようだが、モール自身がメディアで積極的にPRをしたり、価格訴求などを積極的にしたりしている訳ではないという。モール自身を前面に打ち出すのではなく、さまざまな経路からアクセスしてきたユーザーを広く受け止めることを重視しているとのことであった。
一方、意識せずにモールに入ってきたユーザーに対して、購入後キャンペーン施策を展開したり、ポイントを付与したり、メールマガジンなどで訴求することによってリピートにつなげることを重視しているという。入口を広くして、獲得したユーザーをいかにリピートにつなげられるかが勝負であり、そこに重点を置いているとのことであった。
また今後は、スマートフォン向けの展開も強化していくとのことであった。既にau one ショッピングモールのスマートフォン版の提供を発表しているが、現在のスマートフォンはデバイスや環境が異なるだけでなく、携帯電話とはユーザー層が大きく異なることから、サイトのデザインやユーザービリティから、動線やプロモーション手法なども大きく変わってくる可能性がある。そうした新しい動きに対して、フレキシブルに対応していきたいとしている。
モバイルコマースの動向はまだ、従来の動向と大きく変化していないといえるものの、現在モバイルの世界は、SNSなどの影響でモバイルサイトの利用が高年齢層にも広がりつつあるし、スマートフォンの出現で従来と異なるベクトルのユーザーを獲得できる可能性も浮上してきている。間もなく1兆円規模に到達しようとしているモバイルコマース市場だが、今後どのような形で変化していくか、その動向の変化は注視しておく必要があるだろう。