PCの代替品から、ケータイの乗り換え先として認識が変化
急速に浸透しつつあるスマートフォン。5年後には市場は7倍以上にもなると予測され、その勢いはとどまるところを知らない。小畑氏は「現在、モバイル業界は過渡期にあり、いま何を行なうかが今後の勝敗を決める」と語る。
その強力なトレンドは様々な場面で見受けられる。たとえば、キャリアやメーカー側では、スマードフォンについて生産ラインの強化や既存のケータイサービスの移行などを行なっており、「モバイルはスマートフォン1台でOK」という時代に向けて市場普及を加速化している。また、ユーザーについても、近年の調査でケータイへの購買意欲が下がり、その分スマートフォンへの関心が高まっている。ノートPCに対する需要は横ばいであることを鑑みると、これまでノートパソコンの代替品という認識が強かったスマートフォンが、ケータイに代わるものとして期待されはじめていると考えられる。
しかし、小畑氏は「今現在の利用者を見て、今後のスマートフォン戦略を決定するのは危険」と指摘する。キャズム理論を紹介し、スマートフォンの現状がキャズム(「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」の間に横たわる溝)の手前であり、そこを乗り越えるためにはマジョリティを意識した事業を構築していかなければならないという。
しかし、サービス提供者の多くは、まだまだ市場は小さく、リソース投入を含めた大きな投資を行なうのはリスキーと考えている。とはいえ、その一方で普及してからの対応では事業成功は難しいとも感じているはずだ。つまり、爆発的な普及の前に、マジョリティを意識した事業について、コストをかけずに的確な「種まき」を行なう必要があるというわけである。
現在のスマートフォン対応に求められるのは「迅速性」「低コスト」「ユーザーコンシャス」「運用性」
市場が成熟する前の投資を“不確かな賭け”にしないためにはどうしたらいいのか。小畑氏はスマートフォンに期待されるもの本質を見定め、マジョリティが求めるサービスをとことん突き詰めること、そして一気に勝負をかける時機を間違えないことなどを語る。エムティーアイでは、かつてmusic.jpのサービス展開において、「着メロ」から「着うた」「着うたフル」への移行期に同様の経験をしている。「着うた」が再生可能な第三世代携帯電話機の普及曲線を追い、いよいよキャズムを越えたと思った瞬間に集中的に「着うた」のプロモーションを行なったところ、市場でのアドバンテージをとることができたという。
小さいコストで参入し、刈り取り時期を目指してサービス提供を充実させていく。それが成功のシナリオだとすると、そのために不可欠なものは、キャズムを乗り越えるまでの間の地道なマーケティング活動だ。エムティーアイでは、ユーザーの意識調査をあらゆる側面から行ない、サイトの使い勝手に満足していないこと、ケータイと同様かそれ以上のサービスに対するニーズなどを浮き彫りにすることによって、スマートフォン事業の戦略決定に役立てているという。また、同様にキャリアの動向も見定め、いち早く対応していくことも重要だという。
以上をまとめ、小畑氏は夜明け前の市場だからこそ、効率的かつ、効果的な対応が急務として、4つのポイントとして次のように語る。1つめは事業スピードを意識し、スマートフォン対策を今すぐはじめること。2つめには、急成長中とはいえ未成熟な市場であることから、できるだけ運用負荷がかからないこと。そして3つめに、使い勝手を重視するエンドユーザーのスマートフォンへの期待度をしっかりと把握すること。そして、最後の4つめとして、常に身の丈にあったコスト投資を意識することをあげた。
ケータイサイトからスマートフォン対応サイトを低価格&ハイスピードで自動変換 「MOBILE CONVERT for スマートフォン」
コストを意識しつつも、「やらなければならない」状況が到来しつつあるスマートフォン対策。既にECサイトなどではスマートフォン対応の遅れによるPV、コンバージョン率の低下などが起きつつあり、対応は一刻を争うものとなっている。しかし、スマートフォン対応を自身で行なうには体力もコストも時間も必要であり、まして目の肥えたユーザーにどう対応すべきか悩ましいものがある。そこで、小畑氏はスマートフォンへのノウハウを結集したエムティーアイの「MOBILE CONVERT for スマートフォン」を役立ててほしいと語る。
「MOBILE CONVERT for スマートフォン」は、企業が既に運営するケータイサイトを、スマートフォン向けに変換するサービスだ。見た目はもちろん、スマートフォン特有のタッチパネルの操作性まで考慮されており、ASPでの提供のため、導入に時間もコストも最小限に抑えることができる。また、ケータイサイトの運用とほぼ同期がとれていることもあり、導入だけでなく運用リソースは現状から増えることはない。まずケータイサイトから自動変換してすぐ開設し、その後はユーザーの動向を見ながらデザインのディテールを変更していく。そうすることで、スピーディかつ効率的なスマートフォンサイト構築が実現するというわけだ。
小畑氏は「月額5万円から、大規模サイトでも15万程度に抑えることができる。機会損失を恐れるなら今すぐ開始するべきだ。ぜひ『MOBILE CONVERT for スマートフォン』を現実的な解として検討してほしい」と訴え、セッションを結んだ。なお、大和証券およびドクターシーラボなどの、スマートフォンサイトが先行事例として紹介されていたので、関心のある方は閲覧してみるとよいだろう。