課題ときっかけ:指標が単純すぎる
アクセス解析では、ページビューや訪問者数、直帰率、コンバージョン率などが当たり前のように使われているが、この手の単純な指標だけでは、分析が単純になりがちだ。例えば、直帰したからといって必ずしも不満だったとは限らない。ページをスクロールして30分以上滞在してから次のページに移動した場合と、別タブで開いたにも関わらず閲覧することがなかった直帰では、大きく意味が異なる。
実は、単純な指標は、単体ではあまり意味を持たないのだ。
同じ位置付けや階層のページだけに限定して指標を比較すれば有意義な結果を得られる、という回避策もある。例えば、商品紹介ページだけを抜き出して直帰率を比べれば、LPOの効果を同じような条件で比較できる。だが、「単純な指標だから単純な条件で比較すれば良い」という消極的なアプローチに逃げることはしたくない。
逆に、指標をもっと増やして充実させ、要件に応じて複数の多様な指標を使い分けたり、組み合わせることができれば、データマイニングやBI(ビジネス・インテリジェンス)のように多変量の相関分析ができ、意外なパターンやセグメントを見つけることができるのではないか? ソーシャルメディアやマルチデバイスの普及により、分析で考慮すべき条件が複雑化した今こそ、深掘りを繰り返して宝を見つけるアグレッシブな攻めの解析スタイルを貫きたい。
前提の確認:多面的な分析のために指標を組み合わせたい
例えば、次のようなレポートでチャネルやリンク元、検索キーワード、広告、ランディングページを評価できたら、多面的な分析ができるのではないだろうか?
さらに指標を増やして、次のようなレポートをみてみたい。
指標を増やすための5つの方法
このレポートは、従来のアクセス解析と大きく異なる次のようなアプローチで、設計してみた。
1. セッションよりも長い期間で指標をアトリビュート(分配)する
前回紹介したように、長期にわたる効果や間接効果を見るため、訪問回数やコンバージョンなどの指標を1ヶ月や1年などの長い期間で蓄積し、流入チャネルや検索キーワード、ランディングページ、デモグラフィック属性などのディメンション(レポート左側に表示される区分)にアトリビュートする。
ライフタイム(初回訪問から最終訪問まで)の累計の訪問回数、閲覧ページ数、注文回数など
2. コンバージョンに至るまでの過程を重視する
コンバージョンだけでは、様々な関門を潜り抜けた一部の訪問者しか把握できないため、ある程度のサンプル数がないと絶対数が減りすぎて、統計的な信頼度が落ちてしまうことがある。また、結果だけを把握しても、その成功や失敗要因をブレークダウンするために十分な情報が得られない。施策の結果は定量的に評価できても、その次の一手が想像に基づく思い付きベースの施策になってしまうようでは、着実な改善サイクルが持続できない。そのため、コンバージョンに至る過程のサイト内回遊や、途中の離脱状況などを把握するための指標をいくつか追加する。
閲覧ユニーク商品数、FAQ/ヘルプの閲覧ページ数、サイト内検索回数、エラー画面閲覧ページ数、ソーシャル共有回数、コピペ回数、ページ分割ナビゲーションクリック回数
3. 限定する
ページを閲覧する度に常にカスタム変数に値をセットすると、いろいろな変動要素が混ざってしまう。“特集ページを閲覧した場合”“特定のチャネルから流入した場合”“再訪問した場合”“ログインした会員のみ”のように、値をセットする条件を限定すると、後から他の変数とクロス集計した時にギャップが浮き彫りになる。
有料広告経由訪問回数、特集ページ閲覧数、動画視聴回数
4. ユーザーの行動や心理状態や行動パターンを指標化する
コンバージョンのようなアクションの回数を表す指標に加えて、ユーザーの心理や行動パターンを表す指標を追加する。例えば、“iPhoneユーザーは煽るような釣りタイトルのリンクを頻繁にクリックする”と分かれば、サイドバーに掲載するような関連ページへのリンクをiPhoneからのアクセスの場合のみ自動的に差し替え、訪問あたりの閲覧ページ数やリピート訪問率を高める、といった最適化が可能になる。
ブランド忠誠度、オススメされやすさ、新着情報確認速度、釣りタイトル感度、Flash好き、動画好き、エンゲージメント
5. 計算する
上記の方法で取得した複数の指標を組み合わせて四則計算、重み付けなどを行うことによって、複合的な指標を算出する。
こうして指標を増やすことで、【図2】のようなレポートを出すことが可能になる。では、具体的にどのように実現していけばよいのか。今回は、「エンゲージメント」の計測を例にとって、設計と実装方法について考えていこう。