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“相似形”で考えよう!マーケティング脳を鍛える10のレッスン

「努力すれば結果が出る」はウソ 決め手は戦略-レッスン6 ~マーケティング・プランニングのイロハ~

 例えば、Webサイトでペットの服を売る洋服屋さんの場合で考えてみましょう。このペット洋服屋は、「目的」として今年度の売上を3,000万円、すなわち年商3,000万円のビジネスを掲げていたとします。この場合の「戦略方程式」は、どのように組み立てることができるでしょうか?

 ターゲットとして、今までに利用したことのない客を設定したとします。その時は、このターゲットに対して意図する行動は、Web店舗に訪れることというように掲げることができます。そして、来店という行動をTAKEするために、「お得で賢い買い物ができる期待感」をGIVEするというように「戦略方程式」を組み立てることができます。この戦略の骨格づくりを通して、具体的な施策イメージが広がります。例えば、新規来店者へのお試しキャンペーンを展開して、Web店舗上で割引クーポンを発行するという具合です。

 一方、「過去3ヶ月間利用のない既存顧客」をターゲットとして、「店舗で1万円以上の買い物をする」という行動を「戦略方程式」として組み立てることもできます。この行動をターゲットにとってもらうことは、新規来店者の獲得と比べて、高い障壁を抱えているように見受けられます。皆さんだったら、どう考えるでしょうか? ペットへの愛情に着目するとどうでしょう? 多くのペット・オーナーは、自分のペットをわが子のように可愛がっています。その気持ちに狙いを定めて、GIVE & TAKEを考えるのです。例えば、最近買い物をしていない顧客に、買い物してもらうという「意図する行動」を引き出すために、「最愛のペットのために、良い買い物をした満足感」をGIVEすると考えることができます。

 その場合は、刺繍ネーミングのプレゼント・キャンペーンをメールで告知し、お買い上げのペット洋服にこの世にひとつしかない特別感を演出することで、しばらく利用のない顧客の注目を集め、購買へとつなげるという施策がイメージできます。いかがでしょうか? 「戦略方程式」の使い方をおわかりいただけたでしょうか?

「目的」と「意図する行動」の入れ子構造

「戦略方程式」をつくっていると、ある想いにとらわれることがあります。それは、本当に自分の設定した目的はこれで適切であったのだろうかという疑念です。例えば、先ほどのペット洋服のWeb店舗では、今年度の売上額を目的として設定しましたが、ターゲット意図する行動の検討を進めるうちに、本来ならば「新規顧客1,000名に買い物してもらうことが目的ではなかったのだろうか?」というように考え始めてしまいます。

 もっと考えているうちに、新規顧客を獲得するために、「Web店舗に5,000名が来店してもらうことを目的にするべきではないか?」という考えも思い浮かんできます。売上を上げるためには、新規顧客を獲得する必要があるわけですし、新規顧客を獲得するためには、まず来店客数を増やしていかなくてはなりません。このように、発想がどんどんブレイクダウンされていくのは、戦略がより深まっている証拠ですから、良い傾向と言えます。

 もう、お気づきだと思いますが、目的意図する行動は、まさに、目的と手段の連鎖関係にあります。目的達成のために、意図する行動は手段となっていますが、改めてそれを目的と掲げ直すことで、より新しい意図する行動を見つける作業へと移行していくことになります。このように深堀しながら、ある種、自分のプランニングに鞭を打ち、厳しい態度で臨むことで、戦略はよりリアルに、より実効力を持つものになっていくのです。

 以前に、「戦略は目的達成のためにあるのだから、目的を明確に設定せよ」と主張していたことと、一見矛盾があるように思われるかもしれませんが、そうではありません。私たちが、戦略をつくる目的は、目的をきれいに文章化して記述することではありません。まさに、企業活動において勝ち抜くことが、戦略をつくる究極のゴールで、目先の一勝をあげることが目的なのです。

 多少、戦略方程式における目的(左辺)の文章が荒削りの表現になろうとも、より良い戦略方程式の右辺へと展開することができ、自らが納得のいく施策のアイディアが思いつけば、それは良い戦略づくりのプロセスであると言えるのです。それは、アタマの体操に近い作業かもしれません。そして、当初社掲げた目的は、いずれにせよ、その戦略における目的であることに変わりはないのですから。

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戦略方程式づくりにおける「イタコの術」

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この記事の著者

東急エージェンシー 神通 靖彦(ジンヅウヤスヒコ)

理系出身のマーケティング・プランナーを目指し、総合広告会社(株)東急エージェンシー入社。マーケティング局、デジタルマーケティング局などを経て、現在、ナレッジセンター所属。
広告主と一緒にマーケティング、戦略、ブランド議論などを効果的に行う新しいカタチを開発・提供中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/07/03 08:00 https://markezine.jp/article/detail/1369

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