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あの先進企業に密着!第1回「Google」

「コンピューター中心」から「ヒト中心」の世界へ
― Facebookとの比較から見るGoogleが迎えた新たな局面

変貌を遂げつつあるWebの世界 - 岐路に立たされるGoogle

 未来と言えば、GoogleおよびCIAが出資している企業にRecorded Futureという会社がある。概要はこちらの動画をご覧頂きたい。

 この会社は、世界中で蓄積されるニュースなどの情報をテキストマイニングして蓄積することで、「What」「Who/Where」「When」という3つを組み合わせた未来を予測することを可能にしている。

例えば
  • What:「+1」サービスを
  • Who/Where:Googleが中国で
  • When:いつサービスインするのか

 こうした情報検索を、あらゆるニュースソースなどを分析することで、実現している。

 CIAが出資しているのは、テロリスト行為の予測に活用することに他ならない。極めて先進的なサービスではあるものの、あくまで「これまでに蓄積された過去の情報」に基づき、未来を予測する手法であり、Googleの世界(コンピューター中心の世界)の代物である。

 コンピューター中心の世界がなくなり、Facebookに代表されるヒト中心の世界がコンピューター中心の世界に取って代わられるということは、あり得ない。今後もGoogleが得意とするコンピューター中心の世界の重要性は続くだろう。

 ただ、これまでコンピューター中心の世界がWebビジネスの多くを占めていたのに対し、相対的にヒト中心の世界が拡大していくことは疑いようがない。なぜなら、携帯電話の急速な普及と移動体通信網の高速化によって、どこにいても個々人がWebにアクセスできる環境が整ったからである。それゆえに、各人は個人プロファイルを明らかにし、人と人との繋がりを活用するFacebookの利用を拡大させているのである。この大きな潮流をGoogleも理解しているがゆえに、携帯電話、「+1」およびプロファイル機能の注力に動いているのである。

Webビジネス今後の二大トレンド

 これからのWebビジネスの大きなトレンドは2つ存在する。(1)Webからリアルへの誘導(2)リアルタイム化である。

 この1年で急速に利用が拡大してきた「Google Latitude」や「foursqure」などの位置連動型のサービスは(1)の代表例と言える。また、「TwiPla」などTwitterを活用したイベント出欠管理や、ARを活用した頓知ドットの「DOMO」(※2011年4月末現在、サービス停止中)も(1)の類型である。

 (2)のサービスとして最近注目を集めているのは、iPhoneアプリの「Color」である。このアプリは登録・ログイン不要で、アプリを立ち上げるだけでスタートする。そして、リアル空間において地理的に近距離にいるアプリ起動者同士が、アプリを通して撮影した全ての写真を全員で共有するのである。

 例えば、結婚式の2次会をイメージして頂けると分かりやすい。2次会参加者のうち10人がこのアプリを立ち上げる。その10人が、思い思いに写真を撮る。すると、瞬時にアプリを立ち上げている人の間で、その全ての写真が共有されるのである。ある1つのイベントを、自分の目線だけではなく、その他の参加者の目線からも一気に楽しめるのである。共有された写真が永遠に各自の端末に残るわけではない。永らく地理的に近い場所に居合わせない場合、お互いが共有した写真が消えて行くこともあるという。

 リアルタイムで起こることを随時蓄積し、それをWebを通してリアルで共有する。まさに最先端の潮流を的確に捉えているアプリと言える。

 Googleも最近は、「リアルタイム検索」という機能を強化している。しかし、リアルタイム検索とは言っても、その用途の多くはTwitterのタイムラインの検索である。タイムライン上の新しい情報を検索した結果を表示するわけで、厳密には、少し過去の情報を検索していると言える。

 これからのWebビジネスのトレンドは、コンピューター中心の世界からヒト中心の世界へと変革していく。コンピューター中心の世界がなくなるわけではないが、ヒト中心の世界が相対的に拡大していくこととなる。その時、ヒトの繋がりの重要性が増すことから、Webビジネスは、“Webからリアル化”の流れが加速し、過去蓄積された情報の中から最適なものを見つけだすことよりも、“今、目の前で起こっていること”をリアルタイムで吸い上げ、そのリアルとWebとを繋げていくサービスが求められていくこととなる。

 Googleがコンピューター中心の世界のまま邁進したとしても、年率10%を優に超える成長は当面続くだろう。しかし、その次のパラダイムであるヒト中心の世界への対応を怠れば、成長が鈍化する可能性が高くなる。Googleは情報の流れを制御する企業から、情報の出し手である個人の、プロファイル情報にまで踏み込む企業へと変貌するのか。今、岐路に立たされている。

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この記事の著者

小林 慎和(コバヤシ ノリタカ)

(株)野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタント
ビジネス・ブレークスルー大学准教授、NPO法人ガイア・イニシアティブ
経営コンサルタントとして、IT業界、エレクトロニクス業界を中心とする企業に対して、新規事業立上、海外展開、M&A、営業改革、組織改革など...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2011/05/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/13710

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