「創造性こそがまさに答え」
ウォルト・ディズニー在籍時代の成功談のひとつとして「ライオンキング」が映像と共に紹介された。アニメーション映画の記録をすべて塗り替え、ホームビデオ、コンシューマープロダクト、ブロードウェイ、ビデオゲーム、テーマパークのアトラクションなど、すべてで成功を収め、現在でも3Dメディアで復活を遂げている代表作だ。
「多くの人に刺さる魅力があった」ことが成功の秘訣だという。世界各国の言語に翻訳され、世界中で上映された。
このように、映画であろうが、マーケティングキャンペーンであろうが、的を得たコンテンツが適切に提供された時には、すばらしいビジネスインパクトがもたらされる。これを少し別の視点から見て、アイズナー氏は次のようにコメントしている。
「すばらしいコンテンツを作るための方程式があるわけではありません。新しいコンテンツを作る時に、初期の段階でどれくらいの投資をする必要があるのか、みなさん考えると思います。その投資をボックス(箱)に例えてみましょう。会社によって大きなボックスがあるかもしれません。中小企業では小さなボックスしかないかもしれません」
次に、そのボックスの中に何を入れるべきかを決定しなければならない。その際、どのようなプロジェクトであろうと、そこに「創造性」が必要になる。
「創造性こそがまさに答えです」とアイズナー氏は主張する。ボックスの中に創造性があってはじめて、そして情操作用を経て、新たなコンテンツが生まれる、という好循環が起こるという。
一方、「デジタルではこのボックスを小型化することができる」とアイズナー氏は語る。
たとえば映画の撮影で、従来は現場に行き、膨大な予算と時間をかけなければ実現しなかったものが、デジタル技術を使えば、家の中でも映像制作が可能になった。ボックスを縮めたり広げたりしながら、さまざまなボックスを作り出すことができることで、より多くの企業にチャンスと成功がもたらされる環境が整っているという。
アイズナー氏もこの法則を活用し、デジタル世界のイニシアティブをとってきた。ディズニーのアニメーションをCDに変えたり、アニメの中の乗り物を実際にディスニーランドで形にしたり、デジタル技術の活用を推進してきた。
そして、最近では3Dでアニメーションが見られるという新たなデジタル体験ができる環境が整いつつある。また、放送局も高解像度で画像が見られるハイディフィニション(ハイデフ/高精細度)に移行しつつある。このようなデジタル技術が到来したことで、新たなイノベーションの連鎖が起こっているという。
このような状況の中でも、アイズナー氏は「コンテンツが一番重要」と主張する。いくら鮮明な画像であっても、番組の内容がつまらなければ誰も見ない。逆に「コンテンツが良ければ、提供することによって、他の展開に広がります」(アイズナー氏)と続けた。
「失敗の陰に成功。成功の陰に失敗」
一方、こうした挑戦がすべて成功するとは限らない。アイズナー氏も過去に大きな失敗を経験してきた、と実話を明かした。しかし、「失敗は成功するために必要です。失敗は会社にとって死の宣言ではない。失敗しないにこしたことはないが、それがたとえ大損失を及ぼす失敗であったとしても、恥じることはない」とアイズナー氏は断言した。
「失敗を恐れず、何かをすることが大切」(アイズナー氏)なのだ。そして、この一言に、アイズナー氏の想いが込められている。「失敗の陰には成功がある。成功の陰には失敗がある。失敗から学ぶことが大切。失敗から学ぶことができれば、失敗は成功につながるわけです。失敗から成功例を生み出すことができるわけです」