融合していくマーケティングとカスタマーサポート
ソーシャルメディア上で行うマーケティングとカスタマーサポート。管轄部門が違うからといって「まったく違う話」と分けて考えることができなくなってきていると塚本氏は語る。
「アメリカでよく例に挙げられるのが、航空会社の取り組みです。嵐が来て、空港中が混雑。カウンターに行っても誰も対応してくれないし、電話も通じない。『困った困った』とTweetしていたら、航空会社のカスタマーサポートがパッとTwitterで『座席を変更しましょうか?』と。みんなの目に見えるところでやるわけですよね。これは何億円も掛けてCMを流すよりも、リアル感があってすばらしい。これまでマーケティングとカスタマーサポートは別の世界でしたが、領域が融合してきている感じがしますね」
ソーシャルでの顧客の声は、企業側が主体的に拾い上げていくことで、企業への不満に変わる前に解消することもできる。そんなアクティブなサポートは顧客を感動させ、顧客満足度を向上させることだろう。
TwitterやFacebookでは、従来のメディアでは考えられない勢いで口コミが伝搬する。たとえTwitterでサポートした人数が100人でも、それぞれにフォロワーが100人居れば、全員がRTしてくれると1万人にサポートの内容が伝わっていくのだ。
ソーシャルでのやり取りは、電話やメールでのサポートと違って内容がオープンに残る。感動した顧客がRTすることで優れたマーケティング施策へと変わる可能性があるわけだ。反面、炎上して企業ブランドを著しく損なうリスクもあり、それを懸念する日本企業が多いのだと塚本氏は指摘している。
ソーシャル対策の適任者は「企業をよく知り能力のあるベテラン」
従って、「カスタマーサポートの部署が業務の何%かを使ってソーシャルメディアに対応する」「PR部門に専任のスタッフを置く」「事業部の中でソーシャルメディアに詳しい人が担当する」といった始まり方をしたソーシャル対策を、どこかの段階で部門横断に切り替える企業が日本でも現れ始めている。そのような企業では “ソーシャルリーダー”が任命され、その人物を中心に運用ルールを決めるなど、ソーシャル対策を進めているという。
意外かもしれないが、ソーシャルリーダーになるのはカスタマーサポートを務めていたベテラン社員というケースが多い。「FacebookやTwitterが大好き!」という若手が任命されるケースは少ないのだとか。
「ソーシャルリーダーに求められる資質は、会社のことをよく分かっていて、その上でお客様のことを誰よりも考えられる人。ソーシャルでのコミュニケーションで企業の中はどんどん裸にされていきますから、企業のフロントに立つ人は、本当に企業のことをよく知っていないといけません。かなりのコミュニケーション能力・胆力も必要になります」(塚本氏)
