クチコミ/アンケート調査分析の内製に取り組む江崎グリコ
ブログやTwitterにSNS。今や、Webのさまざまな場所で企業の製品・サービスをめぐって消費者の言説が飛び交い、時にはそうしたクチコミから大きなムーブメントが生まれることがある。
クチコミを分析して自社のマーケティング活動に活かせないか――。そう考える企業も増えてきているだろうが、問題はブログ・Twitter・SNSなどの膨大なテキスト情報の海の中から、有用な情報を抽出してくる手段。アンケート調査の分析もそうだが、クチコミの量も膨大になってくると、自力で分析をしようと考えるのは現実的な選択肢ではなくなってくる。かと言って、リサーチ会社やコンサルティング会社などに依頼すると費用や工数が、かかってしまい、自分たちの視点で声を把握しにくい。
そうした中で、「ポッキー」「プリッツ」「アイスの実」など多数のヒット商品を抱える江崎グリコ株式会社は、テキストマイニングツール「見える化エンジン」を導入することで、自社内で分析に取り組んでいるという。11月11日の「ポッキー&プリッツの日」には、わずか1日だけで約6万件のクチコミがWeb上で発生しているという同社は、見える化エンジンをどのように活用しているのだろうか。テキストマイニング先進企業の事例を探っていこう。
ヒット商品はごく一握り ― 成功率を上げるため生活者の声を正確に捉える
江崎グリコがフィールドとする菓子・食品のマーケットは、ヒット商品を生み出すのが非常に難しくなっている市場。1年間で千や万という単位で新商品が登場する中、ヒット商品となるのはごく一握りに過ぎない。
勝算の低い世界で、どうすれば新商品のヒット率を上げられるのか。そのためには、生活者の声やライフスタイルの変化を正確に捉えていくことが重要となる。そこで同社は生活者調査室という部署を設け、アンケート調査・インタビュー調査・クチコミ分析など、さまざまなリサーチ業務を積極的に進めている。生活者調査室マネージャー 古澤 幸彦氏は、日々の業務に当たる中で、次のような課題を抱えていたと明かす。
「ヒット商品を生む成功確率を上げるため、新しい調査手法で有効なものがあるのなら、自社で取り入れていかないといけないと感じています。
また、ネット上ではブログやSNSで生活者によるたくさんの自発的な声が発信されています。そんなネット上で語られている声をどうやって捉えるか。それも課題になっていました。
さらに、ここ数年叫ばれているのが、広告効果の測定をどう進めるか。大きな費用を掛けているテレビCMなどマスメディアを使ったキャンペーンの効果測定は、どうやって計測していけばいいのか、試行錯誤しているところです」(古澤氏)
自由回答のテキストマイニング結果から、次の取組施策のアイデアに活かす
先に古澤氏の語った3つの課題、
- リサーチの精度をどうやって上げていくのか
- ネット上の自発的な声をどう捉えていくのか
- どのようなやり方で広告効果測定を進めていくのか
こうした課題を抱えるなか、同社は見える化エンジンの導入することで、次の4つのような改善を実現したという。
- アンケート調査における自由回答欄から生活者の隠れた声を発見
- テキストマイニングで得られた知見を次年度のキャンペーンに活用
- スタッフ全員がツールを活用することで部門全体のスキルが向上
- クチコミ分析の内製化により、短期間かつ広範囲の調査が可能に
各ポイントについて、具体的に見ていこう。
生活者調査室では、アンケート調査・インタビュー調査などを定期的に実施してきた。従来、アンケート調査は選択式を中心に実施。自由回答欄も設けていたがあくまでオマケ。担当者が目を通して、使える情報が出てくれば“もうけ物”程度に考え、大きな期待はしていなかった。
それが見える化エンジン導入以降、自由回答欄が意味を持つようになった。江崎グリコでは見える化エンジンの単語ランキング、係り受け、マッピングなどの機能を使い、自由回答欄から得られたテキストデータを分析している。
「質問の組み立て方次第ですが、自由回答を使うことで、想定していない生活者の声を見つけるのに役立っています。見える化エンジンだと、回答を1つ1つ追わなくても、『こういうことが語られているんだな』と視覚的に即座に分かります。それが大きいんです」と古澤氏。これまでは選択式で何とか有意な情報を得ようとしていたが、今では自由回答欄を積極的に使い、生活者の隠れた声を引き出そうと試みているという。
実際、テキストマイニングで得られた知見を活かし、次年度のキャンペーンに活かした実績も出てきている。例えば、ある商品を使ったレシピを試してもらう、というキャンペーンを企画した際のことだ。この種のキャンペーンでは、「作ってみたい」と思わせるレシピをそろえられるかで成否が左右されるところもある。そこで、見える化エンジンでアンケート調査の自由回答を分析。「こんなやり方をしている/工夫している」といった生活者の思わぬ傾向を見つけることに成功。生活者に「作りたい」と共感してもらえそうなコミュニケーションのアイデアにつなげたという。
費用面から対象が限られていたネットのクチコミ分析が、ツール導入で調査対象拡大
2つ目の課題「ネット上の自発的な声をどう捉えていくのか」という点でも、見える化エンジンは活用されている。そもそも見える化エンジン導入前は、江崎グリコではネットのクチコミ分析は外部の調査会社に依頼していた。どうしても費用が掛かってしまうため、対象ブランド・広告キャンペーンを絞り込まないといけない状況だった。
それが導入後は、調べたいブランド・広告キャンペーンについて、気軽に調べられるようになった。しかも、見える化エンジンは「見やすくて分かりやすい。マニュアルを読まなくても感覚的に操作できる」と生活者調査室のメンバーに好評。SaaS型サービスという同製品の特徴を活かし、全員が使いこなせるようになっている。
「以前、インストール型のテキストマイニングツールを入れていたのですが、インストールしているパソコンでしか使えない。そこに座っている人しか使わなくなるわけです。
見える化エンジンの場合、ネットワークにつながっているパソコンから誰でも使用できる。個々人が互いのレポートを見ながら、レベルアップしていけます。1人だけ専門家を作るつもりはありません。部門としてみんなができるようになると、部門全体のスキルアップにつながるのではないでしょうか」(古澤氏)
ネットのクチコミ分析を内製化することで、外注していたころよりも、短期間で対応できるようになり、調査対象も広がった。「このキャンペーンの現在の評判を調べてほしい」といった、各部門からの急な要請にも対応できるようになったという。Twitterなどでは1つの発言でポジティブ/ネガティブの反応が切り替わったりすることもあるので、分析データを日々追えるようになったことは意義がありそうだ。また、各キャンペーン調査ごとに外部発注する手間や費用を考えると、初期費用20万円~/基本料金10万円~という見える化エンジンの料金体系は、比較的導入を検討しやすい価格帯だと言えるだろう。
テレビメディア検索機能でCM露出量とクチコミ数の因果関係もリサーチ可能に
最後の「広告効果測定をどんなやり方で進めていくのか」という課題については、まだ試行錯誤の段階。見える化エンジンにはテレビメディア検索の機能があり、テレビ番組やCMで商品情報が流れたタイミングでクチコミがどう変化したか、因果関係を調べることもできる。今後、CMの露出量とクチコミ数の変化を調べていくことで、CMの効果測定ができるようになりたい。古澤氏も見える化エンジンを使ったCM効果の計測には意欲的だ。
しかし、テキストマイニングを進める上で、ツールの機能も大切だが、ツールを使う側がノウハウを持っていることも大切だと古澤氏は指摘。ツールを使い込んでいくことで、自社独自のノウハウを貯めていきたいと話す。
「アンケートで自由回答欄を設けるにしても、漠然と質問していては有効な回答は得られません。質問の仕方にもノウハウがあるのです。こういう聞き方をすれば、こういう情報が集まる、というノウハウを貯めていかないといけません。ノウハウを貯めるには、まずはやらないと。その点、見える化エンジンは感覚的に操作できるので、わざわざサポートに聞かなくても使いこなせるのがいいですね。
生活者調査室だけに限って見れば、全員が使いこなせるようになっています。今後は社内のほかの部署にも広めていって、社内の仕組みとして取り入れていきたいです」(古澤氏)
リサーチ会社や専門のコンサルティング会社に依頼する、高価な専用ソフトを導入する、といった自力以外の選択肢の中で、アンケート調査・クチコミ分析をずっと容易にしてくれるのがSaaS(Software as a Service)型のテキストマイニングサービス。日本初のSaaS型ツール「見える化エンジン」は初期費用20万円~/基本料金10万円~と比較的検討しやすい料金で導入できる。
見える化エンジンの特徴は、次の3つ
- 直感的に把握できるアウトプット
- ワンクリックで簡単にレポート作成
- アンケートはもちろん、ブログ・Twitter・Facebookの声も収集・分析が可能