Webサイトの設計手法の変遷
さて、Webサイトの設計手法はどのように変化してきたのでしょうか?
1995年~2008年頃までのWebサイトはユーザビリティという視点で「使いやすいサイト」を目指して、基本的には誰に対しても共通のコンテンツを配信するということが優先され、ターゲティングという視点は薄かったと思います。
しかし、2009年以降のWebサイトは「成果(売上や顧客獲得)が上がるサイト」を目指し、データベースを基点に個々人に適したコンテンツをリアルタイムに配信するといったサイトが増えてきました。例えば、次のような取り組みが挙げられます。
Webアクセスデータや購買情報を元にユーザを自動的にセグメントし、それらのセグメント毎に同じく自動的にコンテンツ配信を行うといった取り組みや、A/Bテストや多変量解析テストといったクリエイティブテストをWebサイトの各ページで行い、自動的に成果(売上や顧客獲得)に貢献度の高いクリエイティブを多く表示したり等、テクノロジーを活用してリアルタイムに自動最適化を行い、ユーザとのコミュニケーションを設計して事が主流になってきています。

それに伴い、Webサイトの設計手法も従来ユーザにとって使いやすいサイトを目指すユーザビリティに主眼をおいたサイト設計や、ユーザの経験価値を最大化するユーザエクスペリエンスに主眼をおいたサイト設計が一般的でした。
もちろんこれらの要素は引き続き重要ではありますが、よりデータ取得&最適化に主眼をおいたマーケティングオリエンテッドなサイト設計が重要になってきています。それは、Webサイトが企業にとって”単に創る”だけでいい時代から、いかに経営やマーケティングに”活用する”かが問われる時代になってきたことを表します。

D3(Data Driven Design)メソッド
IMJ / Marketing & Technology Labs(以下MTL)では、このようなWebサイト設計手法を「D3(Data Driven Design)メソッド」と呼んで体系化してきました。そして、この「D3メソッド」をWebサイトリニューアルの要件定義・設計段階で組み込んでいくことを推奨しています。
つまり、従来型のどういった目的でどういったサイトを構築するかといった制作要件定義・設計と並行して分析&最適化要件定義・計測設計(どういった分析を行い、どういったデータを基に何を判断して、どのようにPDCAサイクルを回していくか、そのために必要なデータを取得するために必要なことは何か? 等を定義する)を行ってから実際のWebサイト制作に入るといったイメージとなります。
この「D3メソッド」は単にWebサイト上でのインタラクションを最適化するだけでなく、集客や(例えばECサイトであれば)購買後にどうやってロイヤル顧客化していくかといったCRMの考え方も含まれます。故に、場合によっては組織横断的に進めていく事も必要だったり、予算の取り方についても調整が必要な場合もあります。
しかしながら、「D3メソッド」をWebサイトリニューアルに取り入れることで2つのベネフィットを享受できると考えています。1つは、リニューアル後すぐに「データを基にした継続的な高速PDCAサイクル」を回してマーケティングROI最大化を実現できること、もう1つは、リニューアル後、「見える化」の実現と最適化施策を実施するにあたり、システム的な制約やオペレーション負荷を軽減できることが挙げられます。
的確なPDCAサイクルを回すためには?
一般的にはPDCAサイクルを回してマーケティングROI最大化を実現していくのは、Webサイトリニューアル後だと思われがちですが、実は、リニューアル後に適確なPDCAサイクルを回せるか否かはリニューアル段階の要件定義・設計のプロセスにあるのです。そして、これらの要素がリニューアル段階で適確に盛り込まれているプロジェクトは意外と少ないことも事実です。
「成果(売上・顧客獲得)が上がるサイト」とは何か? 継続的に成果を上げ続けるにはどんなデータが必要なのか? どのような運用の手間が業務効率を悪くしているのか? どの部分を自動化すれば良いか? その場合、既存システムとどう連携すればよいか? など、サイト運用の中で改善できる部分とリニューアル段階でしかできない、もしくは、リニューアル段階で考えておかないと非効率になってしまう部分がきちんと整理されている必要があります。
「D3メソッド」による体系化は、デジタルマーケティングの継続的な成功を意識し、PDCAサイクルを高速回転させていくために必要な要素を整理して盛り込んだメソッドです。次回からは「D3メソッド」の中身について具体的に解説し、データを活用したサイトリニューアルの成功法則を順を追って紹介していきます。