(5)プレイサイクル
(1)~(4)で説明したような要素を統合的に捉えるのがプレイサイクルです。各要素が単独で存在していても、それぞれが有機的に機能するようにはなりません。利用者がどのような順序でどのような行動を取るのか、途中で離脱しないようにするためにはどのようなデザインである必要があるのか、そうしたことを考えるためにプレイサイクルという概念を設定しています。
特にソーシャルゲームにおいては、熟達度で言えば初級者の段階にいる利用者が、途中でいかに飽きたり面倒になったりせずにゲームを使い続けてくれるか、という点が全体の成功に大きな影響を与えています。よく見られるのは「チュートリアル」と呼ばれる利用者をナビゲーションする仕組みで、プレイ開始初期段階での躓きをできる限り減らそうとしています。
ゲーミフィケーションにおいてもチュートリアルは有効です。ゲーム以外のWebサービスにおいては、その性質によっては利用者がオンライン上での交流に不慣れな場合も多々あります。そのような利用者が多くを占める場合、ソーシャルアクションにどのように慣れていってもらうかということは非常に重要になります。心理的な敷居の低いソーシャルアクションを取るところから始め、順に交流の度合いの濃い方に移っていってもらうというようなプレイサイクルを工夫することが必要です。

また、訪問頻度に応じて達成感を得られる間隔を調整するのも、プレイサイクルにおける重要な事項の1つです。第2回の「フロー理論」で説明したように、自身のスキルと課題のバランスが高い水準で釣り合っている時に利用者は最もやる気が出ます。そのため、最初は簡単な課題を提示し、徐々に課題の難易度を上げていくことになります。ゲームであれば「ゲームバランスの調整」と呼ばれますが、ゲーミフィケーションにおいても同様のバランス調整を行います。
(6)適用後の改善・運用
(1)~(5)で説明してきたゲーミフィケーション・フレームワークの構成要素は、どのようにゲーミフィケーションを適用するかを考えるための要素でした。しかし、一度これらを検討し、リリースに至ればそれで終了というわけにはいきません。本当に機能しているかどうかは実際の利用者の動きを見て初めて判断できます。
実際問題として、利用者がこちらが思ったように動いてくれることは、ほとんどの場合ないでしょう。そのため、データを見ながらチューニングをかけていく作業を通じて、徐々に利用者の動向とサービス提供者側の意図をすり合わせていきます。こうした利用者の動向を把握するためにどのような数値を追いかけなければいけないのか、KPIを決めて定点観測することは必須です。
また、利用者の活性化を促すために定期的にキャンペーン・イベントを実施することも、よく行われる施策です。
さて、今回はゲーミフィケーションを分かりやすく捉えるための枠組みとして「ゲーミフィケーション・フレームワーク」を紹介しました。このフレームワークは筆者も実践において利用しており、今後事例が重なれば、さらにアップデートすることができるでしょう。その機会には、筆者の運営する「gamification.jp」にて皆さんにお知らせしたいと思います。また、文章量の都合上説明を随分省略していますが、もし詳細に興味があれば、筆者の書籍『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』をご覧ください。
[2011年11月4日13:52追記]
先日アメリカで行われた「Gamificationサミット」の主催者の一人、Gabe Zichermann氏が11月25日に緊急来日することが決まり、当社でセミナーを開催することになりました。ご興味のある方は、こちらからお申込みください。