【視点2】共通のものさしとして利用できるKPIを作る~欲張らず、簡潔に、見やすく。コンバージョンファネルによる見える化~
前述の内容を理解した上で、具体的なKPIの決定と、共通のものさし化について解説していきましょう。
目安として、KPIとして見る指標はどんなに多くとも200~300程度でなければ毎月の数字を追うことは困難です。しかし、200~300の指標をいきなり選んでしまっては、同じことの繰り返しです。これを回避する方法は非常にシンプルで、まず「基本KPI」を定義することです。
基本KPIに利用される数字は、「全訪問」「回遊」「購入プロセス」「成果」の4つのフローにおける数字です。
- 全訪問:全体、TOPページの訪問数。サイト全体の集客を見る。
- 回遊:ECサイトでは各商品カテゴリ、商品検索、商品詳細など、カートに入れる前に回遊するページの訪問数。リード系サイトでは、フォームへ誘導している主要なコンテンツやカテゴリの訪問数。
- 購入プロセス:フォーム、カート内の数字。入口数、完了数、完了率。
- 成果:Webサイトにおける最終的なゴール、コンバージョン。ECサイトの場合は単純にWebサイト経由での売上、リードサイトの場合は資料請求、予約数などのCV数。
この1~4の数字を用いて基本KPIを作成すれば、全体像が確実に掴めます。
これ以上の情報を入れると、前述の通り、どこを見ればいいのか判別がつきにくくなりますし、これ以下ではボトルネック抽出につながりません。当社では、この共通のものさしとして利用できる基本KPIを図示化したものを「コンバージョンファネル」と呼んでいます。まずは全体像を把握するために、毎月、もしくは必要な頻度で、必ずこのコンバージョンファネルから見ていきます。

このコンバージョンファネルだけで、どこに問題があるのか一目瞭然となります。例えば、コンバージョンレート(以下、CVR)の低下が課題となる場合、
問題1:全体の訪問数は伸びているが、回遊性が悪い
TOPページや、いわゆるゴールデンパスと呼ばれる、コンバージョンに至るまで通る必要があるページにおいて次ページ、カートやフォームへの進入が弱い。
ページの個別改善が必要な可能性が高い。主要ページの離脱や、目的のページへの進入率、ヒューリスティック評価などを行い、深堀分析をする。
問題2:カート投入率、フォーム進入率が減少?
魅力のある商品やサービスの露出が低い、魅力的なキャンペーンへの導線不足、フォームへの導線が弱い、などが考えられる。
サイトにおいて売れ筋となる商品のピックアップや、CVRが高いページへの誘導を行う。また、ページ内のカート・申込ボタンの露出拡大、レコメンド機能などで売れ筋商品の露出拡大を行う。余裕があれば、顧客分析や、ユーザの行動分析を行うことも効果的。
問題③カート、コンバージョンフォームの完了率が減少?
購入・申込フローが複雑、情報入力に問題がある可能性が高い。
各フローのフォールアウトを分析し、ボトルネックになっている個所を抽出。フローを減らせるのであれば簡略化したり、入力補助ツールで入力の簡略化を行ったりする。
このように、このコンバージョンファネルを少しだけ見ても、Webサイトのボトルネック個所を見つけるができます。何かしらの施策を行った際は、この4つの数字に必ず影響を与えているはずです。あえて再度記載しますが、必要な数字のみを、欲張らず、簡潔に、見やすく。これが「ものさし」の基本であり、全てです。

コンバージョンファネルから大まかな方針が見えたところで、毎月見るべき細かい数字を洗い出していきます。何もないところから漠然と指標を洗い出す作業から行うと、重要な指標が埋もれたり、抜け漏れが発生してしまったりしますが、コンバージョンファネル作成の作業を行ったあと、つまりコンバージョンファネルに使っている基本KPIから詳細KPIへブレークダウンする方法であれば、そういったミスを確実になくすことができます。

- 訪問の深堀…主要コンテンツ以外のコンテンツ(キャンペーンなど)ごとのVisits数
- 訪問の質の深堀…平均PV、平均滞在時間、直帰率、離脱率
- ユーティリティの深堀…サイト内検索の利用数、0件ヒットの数、クリッピングなどの機能などの利用率
- レコメンド機能の内容
- ターゲットごとの深堀…新規/リピーターごとの数字、利用頻度、ロイヤル顧客などごとの数字
- 媒体ごとの数字…メール、リスティング、アフィリエイト、パートナーサイト、SEOなど、それぞれの流入媒体からの流入/効果。
「広告のインプレッション数」「被リンク数」など、基本KPIに直接ひもづかない数字も重要ではありますが、「簡潔に」という大目的があるため、載せるべきではありません。
コンバージョンファネルから出された成果に直接つながる重要なボトルネックに対し、これらブレークダウンしたKPIを使ってあたりをつけ、あたりがついたら深堀分析をします。この手順を踏めば、無駄打ちがなくなり、的を射た分析が出やすくなります。