5. Guided:意思決定まで導く
「意思決定までの過程を流れに沿ってガイドする(導く)必要がある」という意味だ。例として、テレコムネットワークの設備投資に関するツールが紹介された。意思決定まで導くステップは次の3つ。
(1)ビジネスニーズを絞って詳細化する
どの地域の設備を強化すべきか? 現在売れていて、今後も収益が見込める地域への設備投資の配分と優先順位が意思決定のキーとなる。
(2)意思決定を構造化する
関係するデータをすべて集めて分析し、設備の新規増設、既存の増強、通話品質の意図的な低下、など、収益性を最大化させるために必要なアクションを決定する。
(3)アクションをレコメンドする
各設備ごとに、レコメンドされたアクションが詳細なリストにまで落とし込まれる。担当部門まで明確になるため、アクションを実行しやすくなる。
日本でも「アクションにつながらない解析は無駄」とよく言われるが、担当者が明確なアクションアイテムにまで落とし込んだ解析は、あまり聞いたことが無い。「ここから先は該当部署の責任」と線を引かず、このレベルまで踏み込んで意思決定をサポートすることが重要なのだろう。小規模のアクセス解析でも、この考え方は応用できそうだ。
6. Embedded:プロセスに組み込む
業務プロセスの中で、どのようなアナリティクスが必要になるのか? 例えばSAPの注文管理プロセスでは、判断に必要な4種類のアナリティクス(図中の白い四角)をプロセスに組み込んだそうだ。

7. Institutionalized:関係性を仕組み化する
「アナリティクスは数字ではなく、人と人の関係性である。アナリストと他部門、ビジネスリーダー、意思決定者の間の関係を構造化する必要がある。そのために、アナリストチーム側が他部門に対するアドバイザー、リエゾン、部門別窓口などとしての役割を担う必要がある」(ダベンポート氏)

さらに同氏は「アドバイザーとして信頼されるためには、“価値を分かってもらえないのは相手のリテラシーの問題だ”などと考えてはいけない。正しい答えを出すことにも固執しないで、実際に役立つ答えを提供することが重要だ」と続けた。
まだまだイノベーションの余地がある
最後に、今後取り組むべきことのまとめとして、次の3点が紹介された。
1. 新しいサービスラインを開拓しよう
必要なのは、特定のカスタマー(社内の他部門を含む)に特化したサービスである。
2. アドホックな分析
繰り返す必要がない一度のみの分析からは、高い価値を出せることがある。
3. 実験用サンドボックス
イノベーションのために、いろいろな実験をできることが重要である。
ただし、普及に成功すると次のような期待も高まるだろう、と指摘して基調講演を締めくくった。
- 要求の量が増え、レベルも高まる
- ビジネスとの統合が必要になる
- マネジメントとの接点が増える
- 結果に対する説明責任が増える