競合他社と同様のモニタ募集団を形成。「安かろう悪かろう」ではない
このように「調査に掛かる費用を“コスト”ではなく“投資”に変える」可能性を生み出しつつあるFastask。だが、「安いのは分かったが、モニタの質は大丈夫なのか。『安かろう悪かろう』では困る」という懸念の声を聞くことが多いという。
Fastaskは、ほかの調査会社と同様の手段でモニタの母集団を集めている。ほかの調査会社の実情を見ると、各社独自に抱えているモニタの数は決して多くない。かなりのモニタが複数の調査会社に登録、アンケートに答えている状況。「どんな人がモニタとして登録しているのか」という観点から見ると、ほかの調査会社と遜色ないところまで来ていると石川氏は見ている。
ただ、“モニタの質”が評価されている調査会社は、モニタの人数が多いのではなく、同じモニタであっても他社に比べてどれだけそのモニタのことを把握しているかにこそ、大きな差があるようだ。その点、Fastaskについてはどうであろうか。
例えば、セルフであるがゆえ、Fastaskではクリーニングを行うことができない。クリーニングとは、矛盾する回答をしているサンプルや、テキスト入力欄にふざけた内容が記載されているサンプルを、調査会社側で除外すること。Fastaskは運営社側の人手を極力介さないセルフ式というモデル上、どうしてもクリーニングを行うことはできなくなっている。
そこで、逆転の発想でそもそも不良サンプルが集まらないようにするための仕組みを導入。「クリーニングすることでキレイにするのではなく、そもそも余計なものが混ざらないようにしよう」と考えた。
「月に数回、われわれもモニタを評価するため、自主的に調査を行っています。何も考えずに一番左の設問に印を付けていく不良サンプルもありますから、『この設問では一番右の回答を選択してください』という設問を設けたり、アンケートの所要時間が想定時間よりも短すぎないかとチェックしたりしています。その結果を基にして、モニタにスコアを付けて管理し、スコアの低いモニタに対してはアンケートの配信を停止するなど、徹底してモニタのことを把握しようとしています」(石川氏)
ジャストシステムがネットリサーチ事業を始めたのは“日本語”があったから
Fastaskの今後について、石川氏は「ツールとして徹底的に磨き、調査主の余分な労力を省けるものにしていく」と約束。まだ土台を固めるところにリソースを取られているが、ジャストシステムがATOKなどで培ってきた日本語に関するノウハウを活かしていきたいと展望を語っている。
「ジャストシステムがセルフ型アンケートサービスを始めた要因の1つは、『日本語』という共通項があったからです。当社は日本語を扱う技術については自信を持っています。アンケートも調査票の内容は言葉で作成されています。そしてモニタから得られた回答の中には自由回答欄もあり、そこには日本語が書かれています。調査票を設計するところでは、日本語を分析していくことで、将来的に画面の問いに従って選択肢を選んでいくウィザード式で設問を作成できるようになるかもしれません。
あるいは自由回答をテキストマイニング技術で分析し、数値化して調査主にレポートするところまで自動化できるかもしれません。まずは土台を固める必要がありますが、まだアピールできていない “日本語”の技術をFastaskで今後提供していきたいと考えています」(石川氏)