“クリスピー・クリーム・ドーナツのFacebook店”を出している気持ちで運営
Q. ソーシャルメディアの運用体制について教えてください
大和: 広報担当の私とマーケティング担当の原の2名で運用しています。アカウント開設当初は広報だけで行っていたのですが、原が加わってくれたことで、それぞれの個性やカラーが出るようになり、メリハリが生まれました。
原: 直接書き込みを行うのは私と大和の2名ですが、ソーシャルメディアの運用について話し合う「編集会議」には、社長も参加しています。「自分がファンの立場だったら…」という視点から、みなさんに喜んでもらえるようなコミュニケーションのあり方について、社長も一丸となって取り組んでいます。
Q. ソーシャルメディア活用はトップダウンで始まったのですか?
大和: いえ、そうではありません。アカウントを開設したのはずいぶん前でしたが、その後、博報堂の『こどもごころ製作所』所長 軽部氏との出会いがあり、たくさんの示唆を受けたことで、「経営課題として積極的に活用していこう」と社長が先導してくれるようになりました。
原: 私たちはリアルに店舗を構えて、日々お客様と接しています。お店は、オープンな環境でお客様と向き合うソーシャルメディアと通じるところが多く、非常に親和性が高いと思っています。一つ一つの投稿に対して、社長が細かな指示をすることはありませんが、応援してくれるだけでなく、一緒に悩んで前に進もうとしてもらえるので、心強いですね。
Q. コミュニケーションについてルールや気をつけている点はありますか?
大和: 「毎日ちゃんと書き込む」「お客様からいただいたコメントは絶対に放置しない」「おしかりをいただいた時は誠心誠意対応する」くらいで、まだまだ手探り状態です。しかし、いただいたご意見はすべて店舗開発や商品開発などの各担当者に伝え、制度自体の見直しも含め、真剣に検討しています。
原: 社内浸透の段階で言うと、今は店舗のスタッフも含め、まずは「みんなで見よう」という流れを作っているところです。その一環として生まれたのが、お店で起きたエピソードを伝える『店長発、うれしイイ話』の企画。実際、各店舗に取材をした内容を投稿しているので、店舗スタッフのソーシャルメディアに対する参加意識の向上につながっているようです。
店舗では毎日、様々なドラマが生まれています。これまでお店の外に出ることのなかったエピソードを発信し、それに対するお客様の反応を社内で共有することによって、皆でコミュニケーションの在り方を考えていっています。最初から厳しくルールを決めるのではなく、「自分だったらどんな情報が知りたいか」「どんな対応が嫌だと感じるか」といった“感覚”を共有しているうちに、コミュニケーションルールが自然とできあがっていくのが理想です。次の段階では、店舗のスタッフにもどんどん自発的に参加してもらい、コンテンツを豊かにしていきたいです。

Q. 日々の投稿で工夫している点を教えてください
原: 例えば、外国人に対して日本を紹介する時に、意外と自分たちのことを分かっていないんだと気付かされますよね。それは企業のソーシャルメディア活用も全く同じだと思っていて、自分たちの個性や良いところを見つめ直すところから始めました。自分たちにないものは言えないですからね。
さらに、お客様が何を知りたいか考えた時に、ドーナツ屋に求められているのは、やはりドーナツのことだろうと。“クリスピー・クリーム・ドーナツのFacebook店”を出しているような気持ちで、私たちしか知らないドーナツの秘密や作り手のことを伝えていくようにしています。
他にも、気をつけているのは“話題のバランス”。いくらおいしくても、毎日お肉を食べ続けると野菜が食べたくなるのと同じで、ドーナツの話題が続いた時には、「そろそろコーヒーの話題に変えてみようかな」というように、互いの動きを見ながらバランスをとるように心がけています。

大和: 私たちは2人で書き込みを行っているので、それぞれの個性はどうしても出てしまうんです。原はドーナツの「ド」や、ドーナツの形を模した「◎」を使って、「ドんにちは◎」なんて挨拶をしたりしていますが、私にはちょっと恥ずかしくて…(笑)。私は私、無理はせず、自然体でやろうと思うようになりました。
当社の一番ポピュラーな商品が「オリジナル・グレーズド」というドーナツです。そこから名前を借りて、原が「オリ・グレ彦」と名乗ってしまったので、私も思案した挙げ句、「グレーズ・ケリー」と決めたのですが、なんだか恐れ多くてデビューできずにいたので、今日この場で初公開させてもらいます(笑)。これからは個性の違う2人で掛け合いをしながら、楽しく運用していきたいですね。