どんよりネガティブな気分からはじめるのもよし
では、つかんで動かす表現はどう考えればいいのか。「誰に」「何を」言うかを決めて、それからどうするの?という話だが、よく使われるのが2通りのアプローチだ。私は<ネガティブ・アプローチ>と<ポジティブ・アプローチ>と呼んでいる。
<ネガティブ・アプローチ>は、その商品がないことで被る不便や不快などのデメリットを強調する考え方。<ポジティブ・アプローチ>は、その商品があることで享受できるメリットを強調する考え方だ。
例で挙げた「ヒップアップして脚長に見せる」を使ってみよう。このフレーズは<この下着をはくと脚長に見えます>というメリットを示した<ポジティブ・アプローチ>の表現だ。これを<ネガティブ・アプローチ>に反転してみよう。すると次のような表現が考えられる。
-
ポジティブ:ヒップアップして脚長に見せる
↓ - ネガティブ:ミニはきたいけど、脚長くないし……
ネガティブ例は、商品を使っていないことで被る悩みをユーザーのぼやき風に表現したもの。顕在的あるいは潜在的なニーズを浮き上がらせる<問題提示>タイプの表現だ。キャッチフレーズを読んで共感した人は、その悩みの解決策を知りたいと思うから、次のアクションを起こす可能性が高い。
このキャッチで問題を示して、次の段階(リード&ボディコピー、ランディングページ)で解決策を示すシナリオは、マイナス状態からプラス状態にするタイプの商品に多く使われる。健康食品や化粧品の通販広告や通販CMでおなじみのパターンだ。新聞には毎日のように通販広告が掲載されているので、スクラップしてネタ帳を作っておくといい。
とことんポジティブな気分にさせるのもよし
<ポジティブ・アプローチ>は、メリットをくっきりさせることがポイントとなる。例のフレーズでは<脚長に見える>ことがメリットだが、キャッチフレーズを考える時は、もっとその先のイメージまで想像して欲しい。
たとえば<脚長に見える>なら、<ミニスカートやミニワンピースが似合う>とか<パンツ姿がカッコイイと言われた>とか商品を使って満足しているシーンまでイメージを広げてみる。そうすると、さまざまな表現アイデアが浮かんでくるはずだ。それはキャッチフレーズで使ってもいいし、ビジュアルに使ってもいい。
メリットを享受しているイメージをくっきり示されると、人は「!」となって注目し、興味を持つもの。あいまいでぼんやりしているメッセージにはうんともすんともしない。普段、私たちはうわの空で自分の欲求に気づいていないことが多い。
だから、キャッチフレーズには注意とイメージを喚起する表現が必要になる。「A」と「I」を刺激するコトバだ。それを分かりやすく簡潔な言い方でやれと言うのだから難しい。その意味で、少しでも楽にキャッチフレーズを考える方法として、ポジティブとネガティブ、この2つの切り口から考えるとひらめきやすくなると思う。その次は効果的な表現に落とし込んでいくわけだが、その話は次回ということで。

●ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則(ジョン・ケープルズ/ダイヤモンド社)
コピーライティングのバイブルと言われる本です。効果的なキャッチフレーズをはじめコピーの書き方と事例がこれでもかと言わんばかりに盛り込まれています。しかも、全部実証テスト済みなので信頼できます。レスポンス重視のダイレクトマーケティング系ツールやネット広告のコピーにたいへん役に立ちます。でも、重いので足に落とすと痛いのでご注意を。
Webの記事を読むのもいいけれど、リアル有田憲史さんに会って直接講義を受けませんか?
「コピーの中で最も重要なキャッチフレーズの作り方」「説得力アップのためのフレームワークとレトリックの紹介」の2点に重点を置き、動かす、読まれるWebコピーの発想と作り方を伝授します。キャッチコピー、ボディコピーを実際に書いていただき、その場で講師が添削するワークショップの時間を設けています。