本書の概要
日本では本格的なソーシャルメディアに関連したデータ集が圧倒的に不足しており、プレゼンの現場では海外調査データや簡易的なウェブ調査などが多数引用されている状況です。そこで本書は、消費者や企業のソーシャルメディアの利用実態を多様なデータとともに明らかにしていきます。今後、ソーシャルコマース、ソーシャルCRM、ソーシャルリクルーティングなど、さらにソーシャルメディアが存在感を増していくなか、本当に使えるデータを網羅しています!
企業におけるソーシャルメディアの活用動向サマリー(本書より一部転載)
企業におけるソーシャルメディアの運用実態
企業によって最も活用されているソーシャルメディアはTwitter及びFacebookであり、上級活用企業(※)の80%以上が利用を開始していることがわかる。それに次いでYouTube、Blog、mixi、USTREAMも上級活用企業の30%以上に利用されている。
※ソーシャルメディア活用度を問う設問に対する回答結果を元に、上級活用企業・活用中期企業・活用初期企業の3つのレベルに分類した。
ソーシャルメディアの活用目的は多様化しており、近年では、広告・宣伝・販促を中核とした短期的な「プロモーション/キャンペーン」としての目的以外に、「広報」「ブランディング」「サイト流入強化」「潜在顧客の育成」といった中長期的な活用が増加していることがわかる。
すでにTwitter公式アカウントやFacebookページを開設している上級活用企業の活用意向は、ソーシャルアプリ展開やYouTubeブランドチャンネルの開設、USTREAM配信、チェックイン機能の活用等、多岐に渡っている。一方、活用中期・初期企業においては今後Facebookページの開設を検討している企業が約50%と多数存在する。
ソーシャルメディア運用の主管部署は広報部、マーケティング部の割合が20%強と高くなっているが、全体的には広告・宣伝部や経営企画部を含む多様な部署で運営されている。ソーシャルメディア運用担当者数を見ると、66.6%の企業が1~3名の兼任担当者でソーシャルメディアを運用している。一方で、4名以上の兼任担当者で運用している企業も10%程度存在し、多くの担当者が運用に関わっていることがわかる。
効果測定の実施状況
ソーシャルメディアマーケティングに取り組む企業のうち、効果測定を実施している割合を見ると、上級活用企業は54.3%と半数以上が効果測定を行なっているものの、全体ではわずか30%の企業しか効果測定を実施していないことがわかる。現状では多くの企業においてノウハウや人材が不足していることがうかがえる。
企業が実際に測定している効果測定指標を見ると、上級活用企業ほど多様な指標を測定していることがわかる。「いいね!、コメント、シェア、RT(リツイート)数」や「PV(ページビュー)・UU(ユニークユーザー)」などのKPIだけでなく、「ブランド好意度」「ブランド理解度」「純粋想起」などのKGIまで測定を行なっている。
リスクに対する認識と対策
ソーシャルメディアのリスク認識について見ると、いずれのリスク項目においても「非常にリスクを認識している」と「ややリスクを認識している」を合わせると半数以上の企業がリスクを認識していると回答している。特に社員の個人アカウントからの情報漏洩については80.7%の企業がリスクとして認識していることがわかる。前回も紹介したが、特に大企業においては従業員によるリスク行動について潜在的リスクを抱えており、企業もそのことを認識していることがうかがえる。
ソーシャルメディアのトラブルを経験している企業は全体の12.3%であるが、積極的にソーシャルメディアを活用している企業ほどトラブル経験率は高いことがわかる。上級活用企業では27.8%と、およそ4社に1社がソーシャルメディアのトラブルを経験している。
ソーシャルメディアのリスク対策については、ソーシャルメディア活用度の高さによって大きな差がみられる。上級活用企業では、公式アカウント運用者向け/一般社員向けガイドラインの策定、アカウント開設運用に関するルールの明確化など様々なリスク対策が講じられているのに対し、活用初期企業では7割近くが「今のところ対策は講じていない」と回答している。
一方で、上級活用企業の27.8%がソーシャルメディアのトラブルを経験しているのに対し、リスク対策の定着に必要なトレーニングを実施している企業の割合は25.0%、炎上発生時に備えた対策(体制の整備やリスク(炎上)対策マニュアル策定)を実施している企業はさらに低い割合にとどまっている。上級活用企業であってもリスク“予防”の先の段階にまでは手がつけられていないのが現状のようだ。