目標は10倍
あるWebマーケティング提案のためのオリエンテーションを受けたとき、こんな話があった。
新人研修や管理者研修を行うC社では、今回のWebリニューアルに伴いWebからの問合せを月2件から月20件にしたいというRFP(提案要望書)が出てきた。もともとの数値が少ないとはいえ、成果を10倍にするという大仕事だ。
当然、10倍という目標に向けて大掛かりな手を打たなければならない。現状、PV数は5,000PV/月程度しかなく、コンバージョン率は約0.4%。サイトのリニューアルだけでは、サイト内の構造にしか影響を与えることができないので、極端に言えば、コンバージョン率を10倍の4%程度に上げなければならない。
しかし、サイトトップページの出来栄えは良く、直帰率も40%以下と低い。コンテンツ面でも事例コンテンツや問合せ窓口の設計もある程度なされており、コンバージョン率だけを10倍にするのは、いかにも難しそうだった。
集客面でも、狙っている検索キーワードでは検索エンジンの3位以内に入っており、すでに自然検索からも全体の3割を占めそこそこの誘導ができている。サイトリニューアルに合わせてサイト内のSEO対策を行っても、集客を10倍に増やすのはなかなか難しそうだった。
どうしてもサイトリニューアルだけでは目標10倍への数値が厳しい。そこで、そもそもなぜ10倍に設定したのかを先方の担当者に聞いてみた。
すると、こんな説明が返ってきた。今まで行ってきた展示会は以前に比べ効果が落ち、リスト情報自体は200件程度あつまるものの、商談になりそうなリストは25件あればよいほうだという。月に換算すると約2件分だ。展示会自体も少なく、ここに上積みは期待できない。
加えてメルマガからの効果も落ち、配信数は5,000件はあるもののクリック率は2%程度。毎月配信しているが、問合せになるのは月1件程度しかない。電話での問合せもコンスタントに月2件はあるので、すべて合わせても月5件程度しかない。
一方で、会社から与えられた目標は月25件の問合せ獲得。そのくらいの目標を達成できなければ予算が達成しないとのことだ。今までの経験上、展示会・メルマガ・電話問合せから月5件は見えているのだが、伸びしろがない。そこで、残りの月20件を伸びしろのあるWebサイトに期待せざるを得なかったというのだ。
しかも、3年間リニューアルしていなかったWebサイトにようやく予算がつき、今回リニューアルできることになった。リニューアルという名目で予算をとっているものだから、リニューアルの目標として問合せを月20件にアップと添えたのだ。
「期待を込めた」といえばよく聞こえるが、数値の予測がしにくかったWebサイトへ目標のしわ寄せがしてきまった格好だ。これでは、せっかく数値目標が明確になっているのに、論理的だとは言いがたいだろう。
このケースには2つの疑問点がある。BtoBのプランニングにおいて、起こりがちなケースであるのでおさらいをしておこう。