「メディアバイイング」以外のデータ活用成熟度はすべて「低」
IABは、データ活用が有効な4つの用途について、メリット、成熟度、主な受益者、長期的なポテンシャルについて評価している。それをまとめたのが以下の表である。成熟度を見ると、「ターゲットメディアのバイイング」だけが「中」で、それ以外はすべて「低」となっており、かなり厳しい評価といえる。

各用途のメリットについては、「当たり前のことしか言ってないじゃないか」「米国も意外と遅れてるんだな」と思うひともいるかもしれない。しかし、これがデジタルマーケティングの先進国と目されている米国の現状であり、IABはこの基本的な施策の浸透によって業界全体の底上げを図ろうとしている。
では、IABがデータ活用を勧める4つの分野について、順に掘り下げていこう。
【用途1】 ターゲティング広告の基本「オーディエンス最適化」
まずは「オーディエンス最適化(Audience Optimization)」。自社あるいは第三者の保有する潤沢なデータソースを統合し、顧客/潜在顧客を特定し、クロスチャネルのマーケティング施策に役立てることである。適切なターゲット顧客を突き止め、ターゲット広告の基礎情報として活用するほか、ブランディング、エンゲージメント、ダイレクトレスポンスなどの分野でもパフォーマンス改善に貢献することになるかもしれない。
恩恵を受けるのは、ECサイトのマーケッター、デジタル関係の広告関係者、リードジェネレーションサイトの運営者。そしてメディア運営者にとっても、トラフィックを増やすのに使える。
オーディエンス最適化の事例として紹介されているのは、Catalina Marketingの取り組み。同社は米国の人口の8割をカバーする実店舗での購買データを収集・分析。オフラインとオンラインの売上データを統合することで、消費財メーカーの知見を高め、実店舗でのプロモーションをオーディエンス視点で組み立てていくことに役立てられるとしている。同社CIOのエリック・ウィリアムズ氏によれば、マス向けのクーポン利用率が0.5%のところ、このやり方を採用すればクーポン利用率は8~10%にまで高められるという。
現時点では大量のデータを扱う技術は確立されているものの、どんなやり方でデータを統合すれば最適になるのかが見えていない。特に従来のチャネルでのデータ(PII)と、デジタルチャネルのデータ(non-PII)との統合方法でコンセンサスが固まっておらず、成熟度は「低い」分野だとIABは分析している。
PII(Personally Identifiable Information)は、個人名、住所、電話番号、メールアドレスなど、個人を特定できる情報のこと。non-PII(non-Personally Identifiable Information)は、特定の個人に結び付かない、ワイヤレスネットワークのロケーション情報やモバイル端末でのウェブブラウジング関連のログファイルなどを指す。