数値化がヒントになる
対人営業では効くかもしれないコピーや資料、今までの考え方をベースにしていては、瞬間的に顧客を惹きつけるようなコピーにはなりにくい。そこで、G社の煮詰まった議論を打開するために「数値化」を検討することをお願いした。
コピーを考える上では、前回ご紹介したコンテクストを意識しながら数値化を行うのがもっとも基本的なやり方だ。数字を使うことによって、コンパクトで分かりやすいメッセージを伝えやすくなる。
例えば、「業界No.1」や「顧客満足度96%」といったメッセージが最たるものだ。ただ、これらのコピーは実際にナンバー1の企業や顧客満足度が高い企業でなければ使えないため、工夫が必要だ。そこで図1では、数値化ができるものの例を一覧にした。これらの中から、自社でもできそうなものがあれば数値化を試すと良い。

実際G社でも、過去の販売データやマーケティングデータ、顧客への調査や商品化の際のリサーチデータなど、あらゆる側面から数値化のネタとなる資料の掘り起こしを行った。
もちろん全部のデータが使えるわけではないが、たくさんのヒントとなりそうな数字がでてきた。その上で、再度ディスカッションを行った結果出てきたコピー案が、下記のようなものだ。
お客様にワンストップでトータルサービスを提供する…
→上流工程からの総合支援で500社の実績
お客様の満足度を第一番に考える…
→のべ8万人が毎日利用、利用者満足度90%超のERP
あらゆるご要望にすばやく応える…
→4000のパラメーターを駆使して納期1ヶ月以内を実現
など、より具体的なコピーの案が出るようになった。これらのコピーをさらに絞り込んで活用した結果、リスティング広告は他部門よりも良い結果が得られ、Webサイトの直帰率の分析において過去よりも改善することができた。
目隠しをすれば真実が見えてくる
コピーはリスティング広告だけでなく、Webサイトにおいても直帰率を低くしたり、回遊率を高めたりするために必須と言ってよい。トップページやミドルページには瞬間的に理解できるコピーがちりばめられているほうが望ましい。
しかし、そうとは分かっていながらも、なかなか自らのコピーを客観的に見直すことはなかなか難しい。目が慣れてしまって、顧客の視点で見つめ直すことができなくなりがちだ。そこで、参考になる方法が「サイトの目隠し」だ。
まずは、自社のWebサイトを印刷していただきたい。印刷されたWebサイトの社名や商品名などの固有名詞、企業ロゴや製品ロゴなど固有名詞が分かるものを黒く塗りつぶして欲しい。するとコピーや説明文といった文字情報が浮き上がってくる。その状態で、改めてWebサイトがどの企業のWebサイトなのか識別ができるだろうか?
もし、当たり障りのないコピーやコンテンツのWebサイトであれば、どの企業か分からないはずだ。企業を特定するためのヒントとなる情報がなく、のっぺらぼうなサイトになってしまっていることが分かるだろう。
もし、企業の個性が伝わるようなコピーであれば、断片的な情報からでも企業が特定できるだろう。得意な分野や地域が明記されていたり、実績の数や対象としている企業規模から、企業名が絞り込めるはずだ。
新規で訪問した顧客にとっては、社名や商品名は知らないケースも多い。そのとき、今言ったように、サイトの社名や商品名を目隠しした状態と同じように見えていると考えてよいだろう。未知の顧客に固有名詞だけでブランドを伝えることはできないのだ。
改めて自社が使っているコピーは優秀なものだろうか。そのコピーや企業として伝えたいコンテクストを的確に表現できているだろうか。数字をうまく使えているだろうか。良質なコピーを作るためには、他部門の協力を仰いだり、過去のデータを再度集計したりと努力が必要だ。しかし、その努力を惜しんではならない。ぜひコピーの観点からもWebマーケティングを見直すきっかけとしていただきたい。